江國香織『日のあたる白い壁』集英社文庫,2007 (アート・美術館のおすすめ本)

白泉社から2001年に刊行された単行本の文庫版です。

江國香織の「絵の気分」

「いろんな国のいろんな街で、美術館にいきました」という江國香織さんが
行く先々で出会った絵画作品とそれを描いた画家について語るエッセイ集です。
ポール・ゴーギャン「オレンジのある静物」(1880)からジョージア・オキーフ「桃とコップ」(1927)まで
作品と向き合う23の絵画エッセイと、
「20世紀最高の幻想画家」バルテュスを訪ねたことを振り返る1篇。
(2000年にNHKで放送された「江國香織・バルテュスの光の世界へ」の撮影?)
すべてが独特の静かな語り口で綴られます。

本の中に、ある人から
「この美術館にあるなかで、どれでも好きな絵を一枚もらえるとしたら、どれがほしい?」
と尋ねられるエピソードが登場します。

ただし絶対飾らなきゃいけないんだ。売るとか、財産として所有するとか、そういうんじゃなくね。真っ白い壁の、広いきれいな家に住んだら、とかいうのも駄目で、いま住んでいる家に、必ず飾らなきゃいけない

38頁

好きな絵ならたくさんあるはずの江國さんですが、
この条件で探すと美術館の中に欲しいものはほとんどありません。
欲しくもない絵をどうして好きだと思ったり態々見にいったりするのかと考えて
「好きな絵を、私たちはたぶん、実際の所有とは別の形で所有してしまう。」
という結論にたどりつき、ドラクロワの「花の習作」(1848-49頃)に
「この絵の気分をポケットに入れて持ち歩きたい」という江國さん。
図版で見るとたしかに
思いついた時とりだして眺めたら楽しいだろうと思うような可愛らしいパステル画です。
(この絵に限らず、エッセイに取り上げられた作品はカラーで収録されています)

紹介される絵画の素晴らしさだけでなく、
江國さんが個人的に所有している「絵の気分」まで伝わってくるような一冊。
江國香織ファンはもちろん、絵が好きな人、
絵の評論やエッセイが好きな人にもおすすめです。