ボテロ展、2022年日本を巡回中 ― カタログと映画もお忘れなく!

2022年、コロンビアの画家フェルナンド・ボテロ(1932-)の展覧会が
26年ぶりに日本にやってきました。
展覧会にあたっては、ボテロ本人が展示作品のほとんどを選び、
図録の監修も行ったそうです。

今年で90歳を迎えてなお現役のアーティストとして精力的に活動を続けているボテロは、
「存命中の作家の中でもっとも有名な作家」と言われているんだとか。
壮大すぎて「ちょっと大げさなのでは?」と疑いたくなりますが、
人体をはじめ、動物・静物・風景まで、全てをふくよかにしてしまう画風は、
確かに一度見たら忘れられない強烈な印象を残します。

フェルナンド・ボテロについて

1932年、コロンビアのメデジンに3人兄弟の次男として生まれたボテロは、
4歳の時に父を亡くし、お針子の母に育てられました。
地元の新聞にイラストを描いて学費を稼ぎながら高校を卒業。
舞台の背景を描いたり個展を開催したりと、アーティストとして活動を開始します。

1952年、コロンビア・サロンの2等賞を受賞した賞金で、
ヨーロッパに絵画修行の旅に出たことが、大きな転機となりました。
3年がかりでスペイン、フランス、イタリアに滞在して
巨匠たちの作品を模写し、さらに古典絵画のテクニックについても勉強しています。

全てをふくよかに膨らませて描く「ボテリズム」に目覚めたのは1956年頃,
自宅でマンドリンをスケッチしていた時だったといいますが、
描く対象のボリュームを強調する傾向は初期のころからあったようです。

そして1961年、世界一有名な肖像画《モナ・リザ》を翻案した
《12歳のモナ・リザ》(1959)をニューヨーク近代美術館(MoMA)が購入します。
さらに2年後の1963年、フランスからアメリカに貸し出された本家《モナ・リザ》が
メトロポリタン美術館で展示されたのと同時期に
MoMAでは《12歳のモナ・リザ》を展示。
これをきっかけに、ボテロの名は世界に広がって行きました。

日本では、1981年に初の個展が東京・大阪を巡回。
1986年、1996年にも複数の都市を回る企画展が開催され、
2004年には東京の恵比寿ガーデンプレイスで
大型彫刻20体を展示する野外彫刻展がおこなわれています。


ボテロ展 ふくよかな魔法(2022)― 図録は通販でも

2022年の展覧会は、東京・名古屋・京都の3都市で開催。
東京展は7月3日で終了しますが、
名古屋展は7月から~9月、京都展は10月から12月と、
まだまだ目が離せません。

ぽってりしたユニークな造形に目が行きがちなボテロ作品ですが、
実際に前に立つと、作品自体が非常に大きいことや
(果物の静物画でも、実際の大きさをはるかに超えるサイズで描かれます)
高い技術に圧倒されます。

引きで見ると顔の中にちょこんとついているようにしか見えない人物の目元が、
拡大したらびっくりするほど丁寧な塗りで写実的に表現されていた…など、意外な発見も。
自分的チェックポイントを探すのも楽しいかもしれません。

展覧会図録『ボテロ展 ふくよかな魔法』日本テレビ放送網,2022

価格:¥2,700 (税込)
サイズ:B5変型(252㎜×195㎜×20㎜)、192頁

出展作品(全70点)のカラー図版と解説、ボテロ本人のメッセージ、
キュレーターのリナ・ボテロ(ボテロの長女)による序文、
さらに論文、コラム、年表なども充実の図録は、
他のグッズともども展覧会の公式ウェブサイトからも購入できます。

手に持ってみると見た目よりも軽く、表紙も空気を含んだようなふっくらした手触り、
角を丸くしたページと、全面的に「ふくよか」を押し出したデザインにも注目です。


東京展

公式ウェブサイト

Bunkamura ザ・ギャラリー (東京都渋谷区道玄坂2-24-1 東急百貨店本店B1F)

2022年4月29日(金)~7月3日(日)
※5月17日休館

10時~18時 (毎週金・土曜日は21時まで)
※入場は閉館の30分前まで

一般 1,800円
大学・高校生 1,100円
中学・小学生 800円

名古屋展

公式ウェブサイト

名古屋市美術館 (名古屋市中区栄二丁目17番25号 芸術と科学の杜・白川公園内)

2022年7月16日(土)~9月25日(日)

毎週月曜日休館(7月18日・8月15日・9月19日は開館)
7月19日・9月20日休館

9時30分~17時 (9月23日以外の金曜日は20時まで)
※入場は閉館の30分前まで

一般 1,800円(1,600円)
大学・高校生 1,000(800円)
中学生以下 無料
※( )内は20名以上の団体および前売り料金
※前売券の購入は2022年5月7日~7月15日

京都展

公式ウェブサイト

京都市京セラ美術館 (京都市左京区岡崎円勝寺町124)
2022年10月8日(土)~12月11日(日)

月曜休館(祝日の場合は開館)

10時~18時
※入場は閉館の30分前まで

土日祝
一般・大学生 1,800円(1,600円)
中学・高校生 1,300円(1,100円)
小学生以下 無料

平日
一般・大学生 1,700円(1,600円)
中学・高校生 1,200円(1,100円)
小学生以下 無料

※( )内は20名以上の団体および前売り料金
※前売券の購入は2022年9月2日~10月7日


映画「フェルナンド・ボテロ ― 豊満な人生」

ボテロ展に合わせて、2018年に制作されたドキュメンタリー映画
「フェルナンド・ボテロ ― 豊満な人生」も、今年4月から全国で公開されています。

ボテロ本人や周囲の人々の証言をつなげて
誕生からアート界の寵児となるまでの半生をたどるこの映画では、
4歳の末息子ペドロの事故死(1974)、1995年に故郷メデジンで起きたテロ(1995)、
イラクのアブグレイブ刑務所で起きた囚人に対する暴力(2004)への怒りなど、
ボテロの人生を襲った悲劇や社会批判の姿勢、
そこから生まれた作品についても紹介しています。
展覧会とあわせて鑑賞することで、
ボテロの魅力をより深く感じられるのではないでしょうか。

上映終了の映画館も多いようですが、7月以降に上映するところも。
特に展覧会が巡回する名古屋と京都では近い時期の上映が予定されているようです。
詳しくは、各シアターのウェブサイトなどをご参照ください。

概要

監督:ドン・ミラー
脚本:ドン・ミラー/ハート・スナイダー
制作:ジョー・タッカー/エリック・ホーガン/ドン・ミラー
編集:ハート・スナイダー
撮影:ヨハン・レグレー/ジョー・タッカー

製作:2018年
制作国:カナダ
上映時間:82分
原題:Botero
日本語字幕:伊勢田京子
配給:アルバトロス・フィルム

公式ウェブサイトhttps://botero-movie.com/

7月以降の上映予定

神奈川 cinema amigo 7月3日(日)~7月16日(土)
長野 長野千石劇場 7月15日~?
長野 東座 7月2日(土)~7月15(金)
長野 上田映劇(トラゥム・ライゼ 旧でんき館) 上映中~7月8日(金)
静岡 シネマイーラ 7月8日(金)~7月14日(木)
愛知 名演小劇場 8月19日~9月1日()
三重 伊勢進富座 7月23日(土)~8月4日(木)
京都 京都シネマ 10月14日~?
佐賀 シアター・シエマ 上映中~7月14日(木)
(7月4日~12日は館内工事のため全館休館)
大分 別府ブルーバード劇場 上映中~~7月7日(木)