美術館で飲み物を飲んではいけない理由 ― 飲食禁止は何故?図書館との違いは?

美術館や博物館の重要なルールに「展示室内は飲食禁止」があります。
大抵は展示室の入り口に表示されているので(表示がなくても基本的にNGなのはいうまでもなく…)鉛筆の使用などと同じくらいよく知られたルールではありますが、なぜ禁止なのかはあまり知られていないようです。

「美術館で飲み物を飲んでも良いですか?」

美術館や博物館のホームページを見ると「よくある質問」のページに「飲み物を飲んでも良いですか?」という質問があることが多く、この問題への関心は高いようです。

結論を言えば、美術館・博物館の展示室内は飲食すべてNGが大原則です。
食べ物(飴やガムも含む)がいけないのはもちろん、水をはじめとする飲み物を飲むのもいけません。
ロビーなど展示室以外の場所は施設ごとに方針があるため、必要に応じて確認するのが良いでしょう。
(展示室と同じく飲食禁止・水分補給のみOK・食べ物もOKなど)


美術館が飲み物禁止(飲食禁止)の理由

美術館や博物館の展示室が飲食禁止なのは、展示されている作品を保護するためです。

展示室内は我々鑑賞者が出入りしているので、チリ・ホコリ・カビの胞子・小さい虫などが侵入するリスクはゼロになりません。
水分などが展示室に入るとそれがカビや虫を呼び寄せて、結果大事な作品が損なわれることに繋がりかねないため、展示室内に飲食物の持ち込みは望ましくないわけです。
(同じ理由で濡れた傘や生花など生ものの持ち込みも駄目です)

飲み物はロッカーに預けるか、水筒など密閉できる容器に入れて鞄から出さないように気をつけましょう。


美術館で飲み物が欲しくなった時は?

そうは言っても、展示室内で水分が欲しくなる可能性もまったくのゼロではありません。
ただ喉が渇いたなら我慢するところですが、湿度の低い展示室内で突然咳が出そうになったらどうするべきでしょう?
此方の記事でも触れたとおり、展示室の環境は人間にとって最適とは言えません。
美術館・博物館の空調が寒い!夏の対策は必須!

周囲の人に迷惑をかける前にこっそり水を…と考えてしまうかもしれませんが、これは絶対に駄目な行動です。

こんな時は、とにかく一度展示室から出ることが大事です。
(咳が止まらない時は口元を覆うなど「咳エチケット」をお忘れなく)
展示室から出てしまえば、飲食可能な場所で水分や喉飴を口に入れる、洗面所でうがいをするなど自分に合った対策を取ることもできます。

また、最初から咳が出ると予想できる場合(乾燥に弱いなど)は、展示室に入る前に喉飴を舐めておく(口に入れたまま入室しないよう注意!)、マスクをするなど十分な対策をしておきましょう。
それでも不安な場合は、受付や展示室内の係員さんにどうすれば良いか相談してみましょう。
持病などで突発的な服薬が必要になるかも…など緊急性が高い場合は特に、あらかじめの相談が大事です。


美術館と飲み物番外編 ― 図書館の飲み物ルール

図書館も水や汚れに弱い紙の本を所蔵する施設ですから、もともと飲食厳禁が当たり前でした。
ところが近年、気温の上昇に伴って熱中症リスクが高くなったことで、長時間の読書・勉強・調べ物などをおこなう閲覧席での水分補給が解禁される傾向があります。
(もちろん現在でも禁止や特定の飲食スペースのみなど、制限を設けている図書館はあります)
ペットボトルや水筒など「蓋が付いていて倒れてもこぼれない容器」に入っているものは持ち込み可能、としている図書館が多いようです。

図書館の本は基本的に読んで利用するためのものなので、利用者の安全を考えて規則を緩めることになりました。
図書館の側も苦渋の選択だったと思います。
わたしたち利用者も、持ち込んだ飲み物が本はもちろん座席や設備(検索機器やモニターなど)を汚さないように注意が必要ですね。

具体的には、本を読みながら飲み物を飲まない、飲みかけは必ず蓋を閉める、冷たい飲み物は水滴がつかないようにカバーをかける(ハンカチなどで包むのも有効です)など。
誰にとっても快適な利用を心がけたいですね。

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