タロとジロ ー 南極に行った犬たちの剥製は、札幌の北海道大学植物園と上野の国立科学博物館に

人間に置き去りにされ、1年間南極で生き延びた兄弟犬タロとジロの物語は、今でも多くの人に知られています。

このタロとジロが、現在は剥製の姿で東京と北海道の博物館に展示されているのをご存知でしょうか?

タロとジロ ー 南極に行った犬

犬たちと南極観測隊

1957年から58年にかけて、60カ国以上の世界の国々が南極に観測隊を送って化学観測を行う「国際地球観測年」が催されました。
日本もこれに合わせて第一次南極観測隊を組織します。
1956年11月に日本最初の南極観測船「宗谷」が日本を出航。
1957年1月に昭和基地の建設が始まり、この基地で1年を過ごす「越冬隊」の隊員11名を残して宗谷は日本に戻りました。

第一次越冬隊は南極で物資を運ぶために、犬ぞりを引く樺太犬を連れて行きました。
樺太犬(カラフト犬)は樺太・千島列島で生まれ、古くから猟犬や犬ぞりの犬として使役されていた犬種です。
(現在は生態系を乱さないよう、犬や猫を含む外来生物の連れ込みは禁止されています)

1957年11月、日本から第二次南極観測隊が派遣されました。
ところが氷に阻まれて宗谷が南極大陸に近づけず、越冬に必要な物資を届けられません。
(昭和基地が置かれたプリンス・ハラルド海岸周辺は、南極でも特に氷が厳しい地域だったそうです)
第二次南極観測隊は中止が決定しました。


タロ・ジロたちが置き去りになったわけ

第一次越冬隊員は宗谷に積んであった小型飛行機で撤退することができたのですが、次の隊に引き継がれるはずだったオスの樺太犬15頭が南極に取り残されてしまいます。

越冬隊に参加した動物は、この他にメスの犬と南極で生まれた子犬、そしてタケシというオスの三毛猫(非常に珍しいため航海安全のお守りとされていた)がいて、こちらは隊員と一緒に小型飛行機で宗谷に収容されて日本に帰国しました。

残された犬たちは南極の過酷な環境に耐えられず全滅したと思われていましたが、1959年1月14日に、第3次観測隊が生き残っていたタロ・ジロの兄弟犬を発見。
第一次南極観測隊が撤収した1958年2月から1年間を南極で生き延びた2頭は一躍有名になり、このエピソードを元にした映画『南極物語』(高倉健・渡瀬恒彦・夏目雅子主演)も作られました。
タロ・ジロが見つかった1月14日は「タロとジロの日」に指定されています。


タロジロのその後と剥製の所在 ー 札幌と上野で展示

タロとジロはその後も南極で越冬隊員たちと暮らしていましたが、第4次の越冬中にジロが病死し(1960年7月9日)、タロも第4次越冬隊の引き揚げに合わせて日本に帰ることになりました。
ジロは剥製になって東京の国立科学博物館に置かれることになりました。
一方タロは故郷の北海道に戻り、1970年8月11日に老衰で亡くなるまで札幌市の北海道大学植物園で飼われています。
(もともと越冬隊のソリ犬の招集と訓練は北大主導で行われていて、タロ・ジロの名付け親も犬飼哲夫北大教授でした)

札幌・北海道大学植物園(北大植物園)のタロ


タロも没後剥製にされて、晩年を過ごした北海道大学植物園の博物館に展示されています。

1882年竣工の博物館本館は、アメリカ人のチャールズ・J・ベートマンが原案設計した洋風建築です。
(実施設計は開拓使工業局営繕課)
2階建(各階1室)の小さな建物で、剥製などの標本は1階に展示されています。
タロは一番奥のケースで、ニヴフ(サハリンの先住民族)の犬ぞりや犬・狼の剥製と並んでいます。

(何故かタロだけちょっと遠い)

北海道大学植物園(博物館本館)

博物館を含むほとんどの施設(庭園・北方民族資料室・博物館・宮部金吾記念館)は、夏季(4月29日〜11月3日)のみ見学できます。
(冬季はガラス温室の老朽化のため公開休止中です)
タロに会いに行くなら、日付を間違えないようご注意ください。

北海道札幌市中央区北3条西8丁目

月曜休館(祝日は開園し、翌日休園)
冬季(11月4日〜4月28日)休館

4月29日~9月30日 9時~16時30分(入園は16:00まで)
10月1日〜11月3日 9時〜16時
*入園は閉園の30分前まで

16才(高校生)以上 420円
7~15才(小中学生) 300円
6才以下(未就学児) 無料

公式ホームページ


上野・国立科学博物館(科博)のジロ


ジロが展示されているのは、東京上野の国立科学博物館の常設展。
日本館2階の北側にある「日本人と自然」の展示室です。

ジロは「13 日本人が育んだ生き物たち」のコーナーで、甲斐黒号(甲斐犬)・渋谷のハチ公(秋田犬)と並んでいます。
胸と前足の白い毛がジロの特徴。
タロよりも毛並みがモフモフして見えるのは、死亡時の年齢が若いせいでしょうか。

国立科学博物館(常設展・日本館)

科博常設展は日本館と地球館に分かれていて、日本館は入り口に近い方です。
入口は地下1階にあり、ジロのいる階は2つ上になります。

東京都台東区上野公園 7-20

月曜休館 (祝日の場合は火曜日休館)
年末年始休館 (12月28日~1月1日)

9時〜17時 (入館は閉館の30分前まで)
*夏季は18時まで延長

一般・大学生 630円
高校生(高等専門学校生含む)以下 無料

公式ホームページ