都心のちょっと名の知れた美術館や博物館の特別展に行くと、
入館料だけで2,000円オーバーも珍しくない今日この頃です。
物価の値上がりが激しい社会情勢などもあって
値上げも仕方ないかなーとは思うのですが、
それでも出来ることなら安く入りたいのが人情というもの。(言い訳?)
入場料を安くする方法はあるのでしょうか?
美術館・博物館をお得に(無料・割引で)楽しむために
もちろん、無料や低価格のミュージアムにも素晴らしい展示があります。
地元の地味な美術館が実は素晴らしいコレクションを持っていた…
なんてこともよくありますよね?
しかし、何やらものすごい外国のコレクションをお迎えする「〇〇美術館展」、
超・有名アーティストの作品を国内外から集めた「〇〇回顧展」、
そんなスペシャルな展覧会だって見に行きたいではありませんか。
そして、こういった特別展は話題性に比例して値段もスペシャルなのが大半です。
(このあたりの愚痴と日本における海外コレクション展の歴史はこちらでも)
すごいものを呼ぶためにはそれに見合った予算が必要、
予算を作るためには大資本のスポンサーが必要、
大資本のスポンサーは(最近は美術館も)費用の回収を考える、
費用回収のための一番わかりやすい収益=(入場料×動員数)…
というわけで、入場料も程々に上げつつ動員数を増やしたい、
というのが運営側の気持ちではないかと思われます。
大規模な宣伝をすれば沢山の人が展覧会の存在を知り、
「これは面白そうだから見に行こう」と思います。
実際にすごいものが見られるのですが…
それで入場料が高くなるのは辛いなあ、というのが
ミュージアムファンの本音だったりします。
なにしろ我々は「予算と時間が許すかぎりにおいて」色々な展覧会に行きたいので、
入場料の高騰は行ける展覧会の数の減少につながるわけです。
そんなわけで、入場料をできるだけお得にする方法を考えてみましょう。
入館料は条件つきで無料・割引に ― 利用案内・料金表をチェックしよう
料金をお得にするために、
まず目的とする美術館や博物館の料金表を確認することをお勧めします。
なにを当たり前のことをと言われそうですが、
当たり前の確認を忘れて割引で良かったのに通常料金で…なんて事態もありえます。
(だいたいは窓口の方が確認してくれますが、注意するに越したことはありません)
割引率はそれほどお得ではありませんが、基本として押さえておきたいところです。
こういった情報はたいてい公式のホームページなどにまとめてありますので、
自分が当てはまる条件は是非チェックしておきましょう。
学生料金・~歳以下(以上)の無料・割引
窓口でもわかりやすく表示されるので見逃すことはまずないと思いますが、
割引の中で一番有名なのが学生料金(学割)です。
一定の年齢以上で無料・割引になるシルバー料金などが導入されている場合もあります。
学生証・年齢を確認できるものをお忘れなく。
前売り券と団体割引
事前の予約をすることで、入場料が割引になる場合もあります。
前売り券は開催前に買うことでチケットが安くなるサービスで
会期前でなければ入手できないために事前の情報収集が重要になります。
最近はネット予約のチケットと当日チケットで料金が変わることもありますね。
団体割引はまとまった人数(20人など)で割引になるサービスですが、
新型コロナウイルスの感染拡大以降は密を避けるために休止している施設も多いようです。
また東京国立博物館は利用する人が少ないという理由で
2020年の料金改定以降総合文化展の団体割引を廃止しています。
利用者がいないサービスは廃れていくことが証明されてしまいましたので、
利用できるサービスは遠慮なく利用するのが良いと思われます。
障害者手帳などの提示で介護者も無料に
多くの施設では、身体障害者福祉法にもとづき
都道府県知事・指定都市市長・中核市市長が発行する
「身体障害者手帳」を提示することで当人と介護者が無料になります。
(介護者の人数は施設により異なる)
また身体障害者手帳のほかにも
- 「愛の手帳」「療育手帳」
(知的障害であると診断された人に対して交付)、 - 「精神障害者保健福祉手帳」
(精神疾患・発達障害と診断された人に対して交付) - 「被爆者健康手帳」
(昭和20年8月に広島市と長崎市に投下された原子爆弾によって被害を受けた人に対して交付。直接被爆者のほか、入市者や胎児だった人なども含まれる)
なども同様のサービスを受けられることがあります。
地域の住民・学生、キャンパスメンバーズなど
住んでいる場所・通学している学校や大学の場所なども重要です。
たとえば市区町村の美術館や博物館は、
地域の住人や学校の生徒を対象とする無料・割引を設けている場合があります。
また、通っている大学・短期大学・高等専門学校などが
東京国立博物館キャンパスメンバーズ
国立科学博物館大学パートナーシップ
国立美術館キャンパスメンバーズ
などに加入しているのであれば、
大学の学生・職員は対象施設を無料・割引料金で利用することができます。
(学生証・職員証が必要)
大学生の方は、後述の年間パスポートを買った後になって
自分がキャンパスメンバーズを利用できることに気が付いた…
なんてことにならないよう、くれぐれも注意してください。
(入学式などで案内があるのかもしれません)
無料観覧日も要チェック
東京国立博物館(トーハク)は、2022年の開館150周年記念の一環で
7月20日から24日まで無料開館日(総合文化展のみ)を設けて話題になりました。
5日間連続の無料開館はかなりの太っ腹ですが、
探してみると単発の無料日を設けているミュージアムは他にも見つかります。
(特に国公立のミュージアム)
たとえば同じ上野公園にある国立西洋美術館は
毎年5月18日(国際博物館の日)と11月3日(文化の日)には
常設展が入場無料となっています。
もとは毎月第2・第4土曜日と毎週金曜日・土曜日の17時以降も
常設展が無料になっていたのですが、
こちらは新型コロナウイルス蔓延防止のために中止されています。
(2022年8月現在)
展覧会チケットを無料・割引で入手する
チケットショップ(金券ショップ)を利用する
金券やチケットの買取と販売をおこなうチケットショップでは、
ミュージアムの前売り券や招待券なども安く手に入れることができます。
話題性のある展覧会の場合は割引率が低いこともありますが、
元の値段よりは確実にお得。
使用期限が迫っているチケット(使用期限が会期よりも早い場合も)など、
さらに安くなることもあります。
ただしチケットショップの入荷は売る人がいないとゼロですから、
ほしいチケットが必ず手に入るとは限りません。
株主になる…?
東急の株主優待券(Bunkamuraと五島美術館の招待券)は
都内のチケットショップでよく見かけます。
こちらのチケットは東急の株500株の権利確定ごとに4枚送られてくるもので、
(他に東急の乗車証や系列の店舗で使える割引券などがセットになっているそうです)
探せば東急の他にもあるのかもしれませんが…
そもそも株が高いものですから、
株取引のおまけとして優待券をもらうならともかく、
優待券を目当てに株を買うのは現実的ではありませんよね。
(株には元本割れのリスクがあることもお忘れなく…)
年間パスポートやチケットセットを利用する
正直に言って一番おすすめしたいのが、
年間パスポートや「ぐるっとパス」などのチケットセットを利用することです。
これらは最初にまとまった金額を出すことになりますが、
フルに使えば確実に元がとれる仕組みになっているため
長い目で見ればかなりお得です。
年間パスポート(年パス)会員になる
年間パスの購入でミュージアムが入り放題になるサービスで、
大抵は購入時から1年間利用できます。
併設のショップやカフェの割引、
さらに提携している別のミュージアムが割引になることもあり、
通えば通うほど、施設を利用するほどお得になるサービスと言えるでしょう。
もっとも施設によっては「常設展のみ入り放題で特別展は割引」など
対象とサービス内容が細かく決まっている場合や、
購入時の年度を過ぎると使えなくなる場合(9月購入なら有効期限は約半年!)
などの例外もあるため、サービスの内容をしっかり確認することが大切です。
(大抵は窓口に入会案内がありますし、口頭でも説明してもらえるはずです)
年間パスポートが本当にお得かどうかは
期間内に何度その施設に通うかにかかっています。
幸いミュージアムの年間スケジュールは数年前から準備されており
1年前には公開されているのが普通ですから、
購入前に「このミュージアムに通うべきだろうか?」としっかり吟味しましょう。
提携チケットセット・共通券
わたしが常日頃からお世話になっている「ぐるっとパス」のように
複数の施設の無料券・割引券がセットになっているものは、
色々な施設に行ってみたい場合、非常にお得です。
問題は行きたい施設が加入しているとは限らないことや
あまり興味がない施設のチケットが付いてくる可能性があることくらい。
(もちろん、行ってみたら大当たりという可能性もあります)
購入は、参加している施設とチケットセットの金額を
秤にかけて決めるのが良いでしょう。
展覧会をお得にするために ― 満足度を高めよう
以上、思いつくままに美術館・博物館のチケットを
安く(無料で)手にいれる方法を並べてきましたが、
忘れてはいけないのは「安くあげる事そのものが目的ではない」ということです。
入場料が安くても感想が「つまらなかった」なら
いっそ行かない方が良かったということになりますし、
(交通費だってタダじゃありません。何よりあなたの時間は貴重な資源です!)
逆に通常の料金でも内容が満足なら「お得だった」と感じることもありえます。
特定の作品が見たいのか、
好きなアーティストの作品が見たいのか、
国宝や重要文化財などの「すごい物」が見たいのか、
話題の展覧会に興味があるのか、
好みは特にないけどアートに触れてみたいのか…
ただ「美術館や博物館の中にいるのが楽しい」なんてこともあるでしょう。
たとえばアーティストを追いかけるなら、
記念館や作品を所蔵する施設の年間パスポートを入手し、
作品を出展する展覧会や回顧展を調べてチケットを探す…など、
色々な作戦が考えられます。
闇雲に安いサービスを探すよりも、
目的にあわせてより満足度を高めるやり方を選ぶのが
結局は一番お得になると思います。