渋谷駅前の他にも? ハチ公像のある所 ー 大館・津・東京大学、そして…?

主人の帰りを待ち続けた秋田犬・ハチ公の像といえば渋谷駅前の像が有名ですが、実はハチ公の像が立っている場所は他にもあります。ハチの生まれ故郷である秋田県、飼い主の上野博士ゆかりの土地、さらには外国まで。ハチの物語がどれほど人の心を動かしたか考えさせられます。
渋谷駅前のハチ公像とその作者については、こちらの記事もどうぞ。
ハチ公像の彫刻家・安藤照と安藤士
ハチが通っていた渋谷駅前のハチ公像は、2005年7月現在はスクランブル交差点からすぐのハチ公広場(東京メトロ渋谷駅A8出口すぐ)に置かれています。

秋田県大館市の忠犬ハチ公像ほか

秋田犬の街として知られる秋田県大館市は、ハチが生まれた土地でもあります。
ハチの生誕100年(2023)に作られた特設サイトでは、ハチ公の物語や関連イベントを紹介しています。

大館駅前の《忠犬ハチ公像》

大館市では、1935年に渋谷の初代《忠犬ハチ公像》と同じ原型から作った銅像を大館駅前に設置しました。
渋谷のハチ公像と同様に街のシンボルとして親しまれていたのですが、戦時中の金属回収令によって1945年に撤収され、溶かされてしまいます。
渋谷の初代ハチ公像も金属回収令で溶かされているので、同じ像を復元することはできなくなりました。

ハチの没後50年にあたる1984年に大館市観光協会が声をあげて「忠犬ハチ公銅像再建の会」を結成。
秋田県出身の彫刻家・松田芳雄によって新しい大館の《忠犬ハチ公像》が作られました。
1987年11月14日の除幕式には、国立科学博物館から貸し出されたハチの剥製も列席(?)しています。

現在は大館駅前の「秋田犬の里」(秋田県大館市御成町1-13-1)正面階段前にあるこの像は、渋谷のハチ公像よりも若い頃の姿で、両耳も立っています。
(晩年のハチは他の犬に噛まれたせいで片耳が折れ曲がっていました)

大館市のハチ公像は他にもたくさん!

大館の《忠犬ハチ公像》からほど近いJR大館駅前には、仔犬時代のハチと兄弟たち、そして父犬・大子内山号と母犬・胡麻号を表した《秋田犬群像》(1964)があります。

さらに秋田犬保存会の本部がある秋田犬会館(秋田県大館市三ノ丸13-1)前には、晩年のハチをかたどった《望郷のハチ公像》(松田芳雄、2004)が。
《望郷のハチ公像》の台座は大館の初代ハチ公像が乗っていた物です。

大館市にはこの他にもハチや秋田犬の像やモニュメントがたくさん設置されていますから、それらを訪ねて市内を回るのも楽しそうです。
大館市役所のホームページでも、市内の像やモニュメントを紹介しています
大館市のハチ公めぐりのご参考にどうぞ。


三重県津市の《上野英三郎博士とハチ公》

三重県津市は、ハチの飼い主で日本の水田の整備に力を尽くした農業工学の父・上野英三郎(農学博士。1872-1925)の故郷です。
この地に教授とハチの像を建てようと、2009年に「上野英三郎博士とハチ公の銅像を建てる会」が立ち上げられました。
2012年10月20日に除幕式がおこなわれ、近鉄久居駅東口を出てすぐの、緑の風公園入り口に置かれています。

三重県の彫刻家・稲垣克次が制作したこの像は、上野博士とハチが見つめあう親密な姿を表現したもの。
ハチ公像と言えば「渋谷駅前で待ち続ける姿」が定番だったため、上野教授と対になった像は全国初なんだとか。
作者の稲垣氏は、2019年の日展にも赤ちゃんのハチと上野博士を表現した《出逢いそして絆》を出展しています(遺作)。

2017年6月には《上野英三郎博士とハチ公》像の上野博士のかぶっていた帽子が行方不明になり、盗難届が出される事態になりました。
この帽子は強化プラスチック(FRP)製で、銅像が作られた時には無かったものです。
銅像の頭に誰かが本物の帽子を乗せた微笑ましいイタズラをきっかけに、稲垣氏に追加してもらったものでした。
実際は外れてしまった帽子(ハチの像にかぶせられていました)を関係者が保管していたそうで、事件は1か月たらずで解決。
現在の上野博士像は帽子をかぶった姿に戻っています。


東京都文京区の《上野英三郎博士とハチ公》

上野博士は1895年に東京帝国大学農科大学(現在の東京大学農学部)を卒業して大学院に進み、1900年から大学で講義を持ち多くの学生を育てました。
上野博士と縁のある東京大学に博士とハチの像を建てようという計画は、同大学の一ノ瀬正樹教授(文学部)の発案からはじまりました。
2012年には「ハチ公と上野英三郎博士の像を東大に作る会」が発足し、ハチ没後80年の命日にあたる2015年3月18日に除幕式がおこなわれます。

博士にとびつくハチと笑顔で受け止める上野博士の楽しげな像は、彫刻家の植田努制作。
東京大学農学部正門(東京メトロ南北線東大前駅1番出口を出て左)を入ってすぐ左に置かれています。
反対側、農学部正門を入って右には東京大学農学部資料館があり、こちらには上野博士の胸像とハチの死後解剖された臓器とその記録、上野博士とハチ公像に関する記録などを見ることができます。


ハチ公像は他にも

ハチの物語は現代でも人々に愛され、意外なところにもハチ公像が置かれています。

福島県飯舘村のハチ公オブジェ

福島県飯舘村には渋谷のハチ公像をモデルに鉄製のワイヤーなどで作られたオブジェがあります。
2013年に贈られたこのオブジェは、大切な人を待ち続けたハチにあやかって「人々が帰ってくるように」という願いをこめられたもの。
2011年の東京電力福島第一原子力発電所の事故で、約6年にわたり全村避難を余儀なくされた飯舘村のシンボルになることを願われていました。
当初は福祉施設「いいたてホーム」にあり、2022年からは道の駅「までい館」(福島県相馬郡飯舘村深谷字深谷前12-1)に置かれています。

アメリカのハチ公像

ハリウッド映画「HACHI 約束の犬」(リチャード・ギア主演、2009)のロケ地にも、ハチ公の像が置かれています。
場所はアメリカ東部のロードアイランド州ウーンソケット市の旧駅舎前。
映画に感動した地元の高校生の発案で学校が市に寄贈し、2012年5月19日に除幕式がおこなわれました。
犬を良きパートナーとして愛し、人と犬の絆に感動する気持ちは国を問わないようです。

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