《雪松図屏風》― 三井記念美術館が所蔵する円山応挙の国宝。次はいつ展示?

東京都の日本橋にある三井記念美術館で、年末年始に登場する国宝《雪松図屛風》。
作者の円山応挙と注文主の三井家の間には、数代にわたって親密な交流がありました。

《雪松図屛風》― 円山応挙唯一の国宝

江戸絵画の革新者として明治以降の絵画にも大きな影響を与えた円山応挙ですが、現在まで伝わっている作品で国宝に指定されているのは三井記念美術館が所蔵する《雪松図屛風》(1952年3月29日指定)だけです。
(重要文化財は沢山あります)

6曲1双(6面からなる屛風が左右1隻ずつ)
紙本淡彩
左右それぞれ155.7×361.2cm

《雪松図屛風》の魅力

松の木に柔らかい新雪が降り積もる様子を、白・黒・金の3色(白は紙の色をそのまま利用しているので実際には2色)だけで表現した絵画。
右隻(向かって右)には画面の外にはみ出すほど大きな松の木が1本だけ、左隻(向かって左)には小ぶりな松の木が2本描かれています。
松の枝に積もった新雪はいかにも柔らかそうで、色が置かれていない白紙の状態なのが不思議なほど。
地面は金泥の濃淡で表され、散らされた金砂子は雪に反射した太陽の光のように見えます。
応挙が得意とした写生画法による、最高傑作のひとつです。

《雪松図屛風》の制作はいつ? 経緯は?

《雪松図屛風》の制作年や経緯を確定する文書などは見つかっていません。
落款(絵が完成した後にほどこされる署名や印)などの分析から、1786年(応挙54歳)の冬ごろと推定されています。
また、応挙の弟子・源琦(1747-97)が師の作品をほぼ忠実に写した《雪松図屛風》が1792年に制作されているので、これ以前に作られたのは確かです。
(源琦の《雪松図屛風》は現在東京の出光美術館が所蔵。旧プライス・コレクション)

制作年とされる1786年は《雪松図屛風》を所有していた北三井家に長男(三井高就 1786−1857。北三井家7代目)が誕生した年でもあって、跡取りの誕生を祝うために制作されたという説もありますが、今のところ証拠は見つかっていないようです。
証拠はないものの、古典的な画題であり長寿の象徴でもある松に金のとり合わせは、高い格式と祝いの席に相応しい華やかさを備えています。
1887年には、明治天皇への献茶の席で使用されたこともあるんだとか。


《雪松図屛風》の作者・円山応挙と三井記念美術館

三井家のこと

《雪松図屛風》は、現在の三井グループの元になった江戸時代の豪商三井家のうち、総領家(家祖・三井高利の長男の家系)である北三井家に伝わったものです。
伊勢松坂の出身の三井家は「越後屋」の屋号で京都・大阪・江戸に店を開き、呉服商・両替商として活躍しました。
三井記念美術館のコレクションは、三井家の人々が収集した美術品がはじまりです。

応挙と三井家

《雪松図屛風》の作者・円山応挙(1733-1769)は、40歳前後から三井家と交流があり、注文を受けて頻繁に作品を収めていました。
特に北三井家の4代目高美、5代目高清、6代目高祐(高就の父)などと親交が深かったようです。
応挙が亡くなった後も弟子たちが三井家に出入りして絵画の注文を請け負いました。
三井記念美術館には《雪松図屛風》のほかにも、応挙や弟子たち(円山派)の作品が数多く所蔵されています。


《雪松図屛風》の展示はいつ?

《雪松図屛風》は年末年始にかけて展示されるのが恒例です。
(三井記念美術館の次回予告で《雪松図屛風》を見かけると年の瀬を感じるのはわたしだけでしょうか?)
ただし2020年の三井記念美術館開館15周年記念展のため8月に展示された例もあって、美術館の顔として特別な時に登場することもあるようです。
三井記念美術館では2005年10月8日の開館以来5年ごとに特別展を開催していますから、開館20周年の節目にあたる2025年も時季外れのお目見えがあるかも…と期待が高まりますね。

三井記念美術館の公式情報をチェック!

2024年は「唐ごのみ ― 国宝 雪松図と中国の書画―」(2024年11月23日~2025年1月19日)で《雪松図屛風》が公開されます。
2025年の予定を見逃さないよう、公式のチェックをお忘れなく!

東京都中央区日本橋室町2-1-1 三井本館7階

月曜休館

10時~17時 ※入場は閉館の30分前まで

一般 館蔵品展 1,200円 特別展 1,500円
大学・高校生  館蔵品展 1,000円 特別展 700円
中学生以下 無料

公式ホームページ