ヴィルヘルム・ハマスホイ(1864-1916) 、またはヴィルヘルム・ハンマースホイは、19世紀末から20世紀初めにかけてデンマークで活躍した画家です。
生前高く評価されながら死後は忘れ去られ、20世紀末に再び評価が高まりました。
日本で大きく取り上げられたのが近年のせいか、日本での名前の表記も「ハマスホイ」「ハンマースホイ」などの揺れがあります。
ハマスホイかハンマースホイか…デンマーク人名の揺れ
ヴィルヘルム・ハマスホイ(またはヴィルヘルム・ハンマースホイ)とは
ハマスホイ(またはハンマースホイ)は、デンマークの首都コペンハーゲンの裕福な家庭に生まれました。
幼い頃からデッサンのレッスンを受けていたハマスホイは、1879年に画家になるべくデンマーク王立美術院に入学。
1885年に美術院の展覧会に出品した《若い女性の肖像 画家の妹アナ・ハマスホイ》には既に
- 黒や灰色を多用した仄暗い雰囲気の色使い
- 写実的でありながらどこか曖昧な空間表現
- 鑑賞者と視線を合わせない人物
といった、ハマスホイの個性が表れていて、50代前半で亡くなった画家の早熟さが感じられます。
(残念ながらハマスホイの個性はアカデミックな評価基準に合わなかったようで落選となり「名誉ある落選」と話題になりました)
ハマスホイは自宅の室内を描いた作品を多く残しています。
17世紀オランダの画家から大きな影響を受けていること、さらに同じ部屋を繰り返し描く作風とそこに差し込む光の表現の巧みさから、ハマスホイは「北欧のフェルメール」と呼ばれることもあります。
とくに1898年から1909年まで暮らしたストランゲーゼ30番地のアパートでは多くの作品が生み出され、国内外で高く評価されました。
1909年にアパートの所有者が変わってストランゲーゼ30番地を引き払ったハマスホイは3年ほど同じコペンハーゲンのブレズゲーゼ25番地で暮らし、その後ストランゲーゼ25番地に引っ越しています。
デンマークを代表する画家として名声を得たハマスホイですが、死後はあまり注目されず、20世紀末に再評価が進むまではほとんど忘れられていました。
「ハマスホイ」と「ハンマースホイ」
日本で最初のハマスホイの展覧会は、2008年に国立西洋美術館(東京都台東区)で開催された「ヴィルヘルム・ハンマースホイ 静かなる詩情」。
なんと、アジア初の回顧展でもありました。
次に2020年に東京都美術館(東京都台東区)で開催されたのが、「ハマスホイとデンマーク絵画」
外国人名の表記揺れはよくあることですが、だいぶ印象が違います。
日本語版Wikipediaの記事は「ヴィルヘルム・ハンマースホイ」となっていますが(2024年7月現在)、記事内では表記揺れとして「ハマスホイ」「ハメルショイ」が紹介されています。
Wikipediaの「サウンド」で聞いてみると、一番近いのは「ハマスホイ」のようで、今後は「ハマスホイ」が主流になっていくのかもしれません。
画家ハマスホイと陶磁器ブランドケーラーの関係
デンマークの陶磁器ブランドケーラー(1839年設立)には、「ハンマースホイ」というシリーズがあります。
2015年に登場したこのシリーズは、陶芸家のスヴェン・ハマスホイ(1837-1948)が手がけた作品をオマージュしたもの。
シリーズの特徴である縦方向の溝を刻んだデザインはスヴェンの作品から引き継がれました。
スヴェンはケーラーの工房に50年以上勤務し(1893-1948)、後進の育成にも務めた人物です。
このスヴェン・ハマスホイはヴィルヘルム・ハマスホイの弟に当たり、陶芸のほかに絵画でも活躍していました。
画家としては主に歴史的建造物や樹木を描いています。
日本では上述のように陶磁器のシリーズ名を「ハンマースホイ」と表記することが多いようですが、ここでは兄ヴィルヘルムに合わせて「ハマスホイ」と表記しました。
ヴィルヘルム・ハマスホイ(ハンマースホイ)の日本所蔵作品
《ピアノを弾く妻イーダのいる室内》1910
国立西洋美術館が所蔵する、日本では唯一のヴィルヘルム・ハマスホイの作品です。
詳しいデータや展示については国立西洋美術館のデータベースをご参照ください。
今の所、こちらでの表記は「ハンマースホイ」となっています。
ハマスホイが人物を描く時は後ろ姿が多く、正面向きで描く時も顔は曖昧だったりします。
こちらの作品も、女性の後ろ姿を開いた扉越しに眺める構図になっています。
タイトルにもあるように、モデルは1891年に結婚した妻のイーダです。
ハマスホイはあまり人物を描かない画家でモデルは家族や親しい人に限られ、中でもイーダは作品内に頻繁に登場します。
この作品が描かれたのは、夫妻がブレズゲーゼ25番地に住んでいた頃。
この時期はハマスホイの後期を代表する作品が多く描かれています。
晩年のハマスホイは1914年に母を亡くしたショックもあって制作が進まず、未完で終わった作品も多かったそうです。
国立西洋美術館(常設展)
東京都台東区上野公園7-7
9時30分~17時30分 (金・土曜日は9時30分~20時)
*入室は閉室の30分前まで
月曜休館 (祝日・振替休日は開館し、翌平日に休館)
年末年始休館 (12月28日〜1月1日)
臨時の開館・休館あり
一般 500円
大学生 250円
高校生以下・18歳未満・65歳以上は無料
障害者手帳の提示で本人と付添者1名無料