「ハマスホイとデンマーク絵画」 東京都美術館で11年ぶりの回顧展

ハマスホイとデンマーク絵画

ヴィルヘルム・ハマスホイ(1864-1916)の回顧展が、2020年1月21日から東京都美術館で開催されます。
ハマスホイの作品は日本未公開の作品を含め40点。
さらに19世紀から20世紀にかけてのデンマーク画壇が生み出した作品の数々が展示される、
日本初の本格的なデンマーク絵画の展覧会となるそうです。

19世紀前半、市民階級の台頭によって「市民の芸術」が求められたこと。
1840年代にはナショナリズムが高まり、デンマーク固有の風景や暮らしを描いた作品が推奨されたこと。
1880年代以降に画家が自宅の風景を描いた室内画が流行し、温かみのある家庭的な室内画が喜ばれる一方、
1990年頃には、無人の室内など人間の物語が薄められた室内画が描かれるようになったこと。
また1891年に若手の画家たちに自由な作品発表の場を提供する「独立展」が設立されたこと。

このようなデンマーク絵画の流れを紹介したうえでハマスホイが登場するようなのですが、
デンマーク絵画史の中にハマスホイを位置付ける展示は初の試みだそうです。

図録の表紙にも採用されている「背を向けた若い女性のいる室内」(1903-04,ラナス美術館蔵)は、2008年にも来日しました。
モノトーンに近い色彩と、写実的でありながらどこか曖昧な空間表現はハマスホイ作品の特徴です。
ハマスホイは1898年から1909年のあいだ暮らした
コペンハーゲンのストランゲーゼ30番地にあるアパートの室内を描いたシリーズで 国内外から高い評価を受け、
その後も独特の室内画を描き続けました。
同じ室内を画題にする作風に17世紀オランダ風俗画の影響が見られることから
ハマスホイは「北欧のフェルメール」とも呼ばれていますが、
鮮やかな色彩で人間ドラマを描いたフェルメールと
白・黒・灰色を中心にして静謐な空間を演出したハマスホイは対照的な気もします。

ハマスホイ? ハンマースホイ?

ハマスホイの回顧展は2008年の9月にも日本の国立西洋美術館で開催されていますが、
当時の展覧会タイトルは「ヴィルヘルム・ハンマースホイ 静かなる詩情」でした。
外国人名の表記ゆれはよくあることとはいえ、
「ハンマースホイ」だと思っていたところに「ハマスホイ」と言われて
別人かしらと思った方は多いのではないでしょうか
(わたしだけではないと信じたいものです)。
Wikipediaの記事は今のところ「ヴィルヘルム・ハンマースホイ」となっていますが
(記事内ではまた別の表記として「ハメルショイ」も紹介されています)、
今後は元の音により近い「ハマスホイ」が主流になっていくのかもしれません。
ためしに国立国会図書館のオンライン検索で
「ハンマースホイ」と「ハマスホイ」を検索してみたところ、結果はこうなりました。

ハンマースホイ 7件
 2008年の図録 2件
 2008年の雑誌 3件
 2009年の雑誌 1件
 2014年の雑誌 1件

ハマスホイ 6件
 2007年の雑誌 1件
 2008年の雑誌 4件
 2019年の雑誌 1件

検索結果は書籍のタイトルと雑誌記事のタイトルだけなのでなんとも言えませんが
(北欧絵画の専門書があったとしても、本文でどちらが使われているかは分からないのです)、
2008年以前にも「ハマスホイ」の表記を使っている雑誌があることは確認できました。

展覧会情報 ハマスホイとデンマーク絵画 東京都美術館

東京都台東区上野公園8-36

2020年1月21日(火)~3月26日(木)
2月29日(土)から当面の間、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため臨時休室

9時30分~17時30分(入室は閉室の30分前まで)
金曜日 2月19日(水) 3月18日(水)は20時まで開室(入室は閉室の30分前まで)

月曜休室 2月25日(火)休室
※ただし、2月24日(月・休)、3月23日(月)は開室

一般 1,600円 大学生・専門学校生 1,300円 高校生 800円 65歳以上 1,000円
※前売券・20名以上の団体券は各200円割引

公式ホームページ https://artexhibition.jp/denmark2020/

東京展終了後は、山口県立美術館で2020年4月7日(火)~6月7日(日)