フランソワ・ポンポンの彫刻が見られる美術館といえば?ー 群馬県立館林美術館のシロクマたち

フランソワ・ポンポン(1855-1933)は、動物彫刻で有名なフランスの彫刻家です。
動物の形をシンプルに表現した作品は日本でも愛されていて、国内最大のポンポンコレクションを持っている群馬県立館林美術館では、美術館のシンボルマークにポンポンの《シロクマ》を採用しています。

フランソワ・ポンポンの《シロクマ》


群馬県立館林美術館に行ったことがあるなら、首を長く伸ばしてバランスをとりながら歩くシロクマの彫刻や、そのシルエットを見たことがあると思います。
(写真はキッズコーナーの本棚。シルエットだけでもそれとわかる造形が素晴らしい!)
毛並みなどの細部を省略して形とボリュームを強調するデザインは、作者フランソワ・ポンポンの動物彫刻の特徴。現代の漫画やキャラグッズにも通じる可愛さがあります。
《シロクマ》はポンポンの代表作であり、館林美術館のシンボルとしてSNSのアイコンやポスターにも登場します。

《シロクマ》誕生まで

フランソワ・ポンポン(1855-1933)が《シロクマ》を発表し、動物彫刻家としてブレイクしたのは、なんと67歳の時。
当時は動物の彫刻といえば毛の一筋まで細かく・写実的に表現するのが当たり前で、毛並みを省略したシンプルな彫刻は斬新過ぎたのかもしれません。
ポンポンがこのスタイルを思いついたきっかけは、朝日を浴びてシルエットになっているガチョウを偶然見かけたことなんだとか。
ルーヴル美術館で見た古代エジプトの美術からも影響を受けたようです。

ポンポンは20代で故郷のブルゴーニュからパリに出て、働きながら彫刻家を目指しました。
彫刻家たちのアトリエで下彫り(作家が石膏で作った像を石で形にする工程)の職人として働くようになり、そこから多くを学んだといいます。
1890年から5年間働いたロダンの工房では工房長を務めたこともあり、高い技術を持っていたことは間違いないのですが、彫刻家としてはなかなか芽が出ませんでした。

当初は人物彫刻を制作していたポンポンですが、1906年にはじめて展覧会に発表した動物彫刻から、動物彫刻家の道を歩み始めます。
ここからブレイクまでは、更に何年もかかってしまうのですが…
それでも徐々に評価されるようになり、1922年のサロン・ドートンヌに発表した石膏の《シロクマ》で、ポンポンは一気に注目を集めました。
《シロクマ》は、動物彫刻家フランソワ・ポンポンの出世作であり、代表作でもあるのです。


群馬県立館林美術館の《シロクマ》たち

館林美術館所蔵の《シロクマ》

館林美術館には4種類の《シロクマ》が所蔵されています。
磁器、大理石、ブロンズ、銀合金の素材違いで、どれも机の上に乗るくらいの大きさ(20~25cm)。
特に大理石製の《シロクマ》は世界に13体しかない貴重なものです。
(日本にはもう1体大理石の《シロクマ》があって、前田行徳会が所蔵しています)

同じポンポンの作品なのに何故大きさや素材が違うのかと言うと、金属などの彫刻は作者が石膏で作った塑像(原型)をもとに複製されるからです。
いろいろな《シロクマ》があるということは、それだけ《シロクマ》を手元におきたい人がいたということで、ポンポンの人気が高かったことがわかります。

1922年に発表された最初の《シロクマ》は、全長が2.5メートルもある巨大な石膏像でした。
フランスのオルセー美術館(ポンポンのコレクションで有名)では、ほぼ同サイズの《シロクマ》がカフェの前に展示されていて、鑑賞しながらお茶がいただけるとか…
パリに行く機会があったら、ぜひ訪れてみたいものです。

フランソワ・ポンポンの彫刻と館林美術館

「自然と人間の関わり」をテーマに掲げる館林美術館は、もともと動物彫刻の新しい境地を拓いたポンポンに注目していました。
2001年の開館より前からコレクションを続け、作品・資料ともに日本国内では最大のコレクションを所蔵。
ポンポンの作品を鑑賞できる常設展示室のほかに、アトリエをイメージした別館「彫刻家のアトリエ」があり、別館にはポンポンが実際に使用していた家具や道具、手紙などの資料のほかにエントランスの《大鹿》(1976?)など死後鋳造の作品の一部も置かれています。

死後鋳造とは、作者の死後に遺された原型から鋳造された作品のことで、現在では生前に鋳造された作品とは区別されています。
ポンポンが亡くなった時代は生前鋳造・死後鋳造の区別は厳しくありませんでしたが、ポンポンは作品の型や未完成品は破棄するように遺言していたため、死後鋳造を望んでいなかったようです。
舘林美術館では死後鋳造の彫刻も購入していましたが、開館前に専門家による鑑定を受けて、死後鋳造は作品として展示しないことにしたそうです。
死後鋳造の彫刻は別館に置かれるほか、研究の史料として使われています。
死後鋳造については、こちらの記事もどうぞ。
国立西洋美術館のロダン《考える人》など…彫刻は本物?


群馬県立館林美術館

群馬県館林市日向町2003
群馬県立舘林美術館へのアクセス(JR倉敷駅より)は、こちらの記事でも紹介しています。
館林美術館に行きたい! 駅からのアクセス

月曜休館 (祝日・振替休日は開館し、翌平日休館)
ただし、4月29日から5月5日までの間及び8月15日を含む週は休館なし
年末年始(12月29日から翌年1月3日まで)休館
展示替え期間は臨時休館

9時30分〜17時 (入館は閉館の30分前まで)

観覧料は展覧会によって異なる

公式ホームページ