マリー・ローランサン美術館 ― 長野から東京移転、そして閉館…現在は?

フランスの画家であるマリー・ローランサン(1883-1956)の
最初の個人美術館は、日本に作られました。
現在は閉館してしまいましたが、コレクションの貸し出しはおこなわれており、
展覧会などで見かける機会があります。

20世紀前半のフランスで活躍した画家マリー・ローランサンは
淡く繊細な色で描かれたロマンチックな女性像が日本でも人気を博し、
1970~80年代には展覧会も頻繁に開催されていました。
長野県にローランサンの美術館を作ったのも、
ローランサンを高く評価した日本人のひとりです。

マリー・ローランサン美術館(長野 蓼科~東京 千代田)

一般財団法人マリー・ローランサン美術館は、
理事長の高野将弘(1922-2020)が収集した約500点のコレクションから始まりました。
そしてローランサンの生誕100年にあたる1983年に、
蓼科高原(長野県茅野市)のアートランドホテル蓼科(現・リゾートホテル蓼科)
に併設してマリー・ローランサン美術館が開館。
日本だけではなく、世界でも初のマリー・ローランサン専門の美術館です。

高野は株式会社グリーンキャブ(東京のタクシー会社。1952創業)の創始者でもあり、
一時期はグリーンキャブのタクシーに乗ると美術館の割引券を貰えました。
ほかには美術館が併設されているホテルの宿泊客が入場料のサービスを受けられたようです。

その後、2011年にホテルが売却され、美術館は閉館しました。
6年後の2017年7月にホテルニューオータニ(東京都千代田区)の中に
新しいマリー・ローランサン美術館が開館しましたが、
開館から1年半弱の2019年1月に閉館しています。


マリー・ローランサン美術館の現在

マリー・ローランサン美術館は、
ローランサンが絵画を学び始めた1900年代初頭から晩年の大作まで
様々な時期のローランサンの作品を所蔵しています。
現在は美術館が閉館しているため、
コレクションは展覧会などに数点が貸し出されているのを見ることがありますが、
まとまって一般に公開される機会はないようです。

500点あまりのコレクションの中には、アカデミックな風景画や、
フォーヴィスム・キュビスムに影響された時期の人物画など、
一般的なローランサンのイメージからするとちょっと意外な作品もあり、
画家マリー・ローランサンの業績を総合的に見ることができました。

コレクションの全てではありませんが、
マリー・ローランサン美術館が発行した画集『マリー・ローランサン作品集』
(マリー・ローランサン美術館、2011)では
油彩画95点のほかに水彩画・素描・版画・挿絵本、
さらにローランサンが絵付けをした陶器の大皿
(ローランサンは絵の勉強でセーヴル製陶所の絵付け講習に通ったことがありました)
油彩画をもとにしたタピスリーの見本織が年代順に紹介されています。

作品のほかにも、写真、年表、関連人物や用語の解説、
ローランサンの詩(『夜の手帖 マリー・ローランサン詩文集』から抜粋)
などが収録され、ローランサンの様々な側面に光を当てる内容になっています。
現在はAmazonなどで中古本が手に入るようです。

手前はマリー・ローランサン美術館で販売していたカードミラーです。
この《女道化師》(1940)のほかにも種類がありました。


2023年のマリー・ローランサン展

マリー・ローランサンの生誕140年にあたる2023年は大規模な回顧展が計画されており、
40周年を迎えるマリー・ローランサン美術館からも作品の出展があるようです。

マリーローランサン美術館公式ホームページ
(インスタグラムが更新されています)

マリー・ローランサンとモード(東京展)

ともに1883年に生まれ、1920年代のパリでブレイクした2人の女性
マリー・ローランサンとココ・シャネルを軸に、
二つの世界大戦の間で様々な才能が交錯した時代の芸術を俯瞰します。

Bunkamura ザ・ミュージアム(東京都渋谷区道玄坂2-24-1)

2023年2月14日(火)~4月9日(日)

3月7日(火)休館

10時~18時 (入場は閉館の30分前まで)
※毎週金・土曜日は21時まで

一般 1,900円
大学・高校生 1,000円
中学・小学生 700円
※前売り券は200円引き
※障がい者手帳の提示で本人及び付き添い者1名半額(当日窓口のみ)

公式ホームページ

東京展の後、京都・名古屋に巡回予定
京都市京セラ美術館(2023年4月16日~6月11日)
名古屋市美術館(2023年6月24日~9月3日)


マリー・ローランサン ― 時代を写す目(アーティゾン美術館)

同時代の画家たちの作品と比較しつつ、
複数のテーマからローランサンの画業を紹介します。

東京都中央区京橋1-7-2

2023年12月9日(土)~2024年3月3日(日)

月曜休館(2024年1月8日、2月12日は開館)
2023年12月28日~2024年1月3日、1月9日、2月13日は休館

10時~18時(入場は閉館の30分前まで)
※2月23日を除く金曜日は20時まで

一般(ウェブ) 1,800円
一般(当日) 2,000円
大学生・専門学校生・高校生 無料・要予約
中学生以下 無料・予約不要
障がい者手帳の提示で本人及び付き添い者1名無料

公式ホームページ