静嘉堂文庫美術館(静嘉堂@丸の内)2022年10月に移転・リニューアルオープン ― 曜変天目ほか国宝7点、開館記念展で再集結!

静嘉堂文庫美術館の開館30周年に当たる2022年10月1日、
千代田区丸の内にある明治生命館の1階に
展示ギャラリーが移転・再オープンします。
移転後最初の展覧会となる
「静嘉堂創設130年周年・新美術館開館記念 響きあう名宝―曜変・琳派のかがやき」
では、国宝《曜変天目》をはじめとする所蔵の国宝7点をはじめ、
静嘉堂文庫を代表する名宝が集結します。

静嘉堂文庫の国宝7点

静嘉堂文庫のコレクションは、
三菱の2代目社長である岩﨑彌之助(1851~1908)が1887年頃から始めた
東洋の古典籍・古美術品の収集がもとになっています。
彌之助の息子で4代目社長である、岩﨑小彌太(1879~1945)がこれを引き継ぎ、
現在は古典籍およそ20万冊(漢籍12万冊・和書8万冊)、
東洋古美術品およそ6,500点が収蔵されています。
(うち国宝7点、重要文化財84点)
ここでは、静嘉堂文庫が所蔵する国宝を紹介します。


《曜変天目(稲葉天目)》12~13世紀(南宋時代)

数々の展覧会の目玉となった、
おそらく静嘉堂文庫の所蔵品でもっとも有名な一品です。
窯変(窯の中で釉薬が化学変化してできた模様)に、
「曜」(輝きを意味する)の字をあてて「曜変天目」と呼びます。

黒い地色の中に青・黄・白などの斑紋が浮かぶこの天目茶碗は、
徳川幕府の三代将軍家光から乳母の春日局に下賜され、
その後稲葉家(淀藩主)に伝わったことから「稲葉天目」とも。

岩﨑小彌太は1934年にこの茶碗を手に入れましたが、
「天下の名器、私に用うべからず」と言って、一度も使用しなかったそうです。

俵屋宗達《源氏物語関屋澪標図屏風》1631(江戸時代)

琳派の祖として知られる俵屋宗達が描いた、6曲1双の屏風。
それぞれ源氏物語から題材をとって、
住吉に詣でる源氏の一向に遭遇した明石君が秘かに浜を去る「澪標」(第十四帖)と
石山寺へ参詣する源氏が逢坂の関で空蝉の一行に会う「関屋」(第十六帖)の
場面を描いています。

1631年に京都の醍醐寺へ奉納され、
1896年頃、岩﨑彌之助による寄進の返礼として贈られました。

伝馬遠《風雨山水図》13世紀(南宋時代)

水墨で雄大な山水を描き、所々に濃淡の彩色をほどこした
南宋の画院(宮廷の絵画制作機関)の様式で描かれた「南宋院体画」の優品。
南宋中期の宮廷画家・馬遠の作品と言われています。

《倭漢朗詠抄太田切》11世紀(平安時代)

平安時代の歌人で公卿の藤原公任(966-1041)が
朗詠のための漢詩・漢文・和歌を集めた詩文集を書き写したものの一部で、
藍や薄黄色の唐紙に金銀で草花や鳥、動物などを描いた料紙の上に、
端正な文字が並びます。

掛川藩主太田家に伝来したことから「太田切」と呼ばれ、
明治時代に上下がそれぞれ別の人の所有になっていたものを
岩﨑彌之助が入手したそうです。


趙孟頫『与中峰明本尺牘』14世紀(元時代)

もと南宋の皇族であり、フビライ・ハンに抜擢されて元の高官となった
文人の趙孟頫(1254-1322)が、禅僧の中峰明本(1263-1323)に送った6通の書簡。
親族を亡くした悲しみや中峰師に対する敬愛の念など、
私的な心情もしたためられています。

1921年に、当時の静嘉堂文庫長だった諸橋轍次(1883-1987)が
北京で購入したものと言われています。

手掻包永《太刀 銘包永》13世紀(鎌倉時代)

大和国を代表する刀工の一派、手掻派(てがいは)の祖にあたる
初代包永(かねなが)の作。
もとは赤星鉄馬(1882-1951)のコレクションで、
1935年頃、ほか数点の名刀とともに岩﨑小彌太に譲られました。

赤星鉄馬は、実業家で美術品のコレクターでもあった赤星弥之助の息子であり、
1917年に父親のコレクションを売却した「赤星家売立」を行っていますが、
自分の趣味の刀剣類は手元に残していたそうです。

 因陀羅筆 楚石梵琦題詩《禅機図断簡智常禅師図》14世紀(元時代)

禅に関するエピソードを表す絵画(禅機図)。
中唐の詩人で役人でもあった張籍が、高僧・智常禅師を訪ねて教えを受ける場面です。

題詩を書いた楚石梵琦(1296-1370)は
元朝最後の皇帝トゴンテムル(順帝)の説法の師でもあった人で、
元を代表する禅僧のひとりです。
図を描いた因陀羅については伝わっていませんが、
この人が描いた水墨画は日本に幾つも伝来しており、
その多くに楚石梵琦など禅僧の賛が添えられています。

もとは巻子本だったと考えられており、
同じ巻子から切り取られたと思われる《禅機図断簡》が他に4点あります。
根津美術館、東京国立博物館、アーティゾン美術館、畠山記念館が所蔵し、
すべて国宝に指定されています。


静嘉堂文庫美術館の移転― 2022年、静嘉堂@丸の内オープン

静嘉堂文庫美術館の移転まで

静嘉堂文庫美術館(東京都世田谷区岡本)は、
静嘉堂文庫展示館(1977年6月~1988年3月)にかわる
美術品専門の展示施設として1992年にオープンし、
「中国陶磁展」(1992)から「旅立ちの美術」展(2021)まで
計114回の展覧会が開催されました。

世田谷最後の展覧会となった「旅立ちの美術」展は
会期の途中に緊急事態宣言の発令にともなう長期休館(4月25日~6月1日)があったものの
当初の予定期間(4月10日~6月6日)から1週間延長して6月13日まで開催され、
静嘉堂文庫所蔵の国宝7点が全て公開される、美術館の締めに相応しい展覧会となりました。

静嘉堂@丸の内は、明治生命館1階北側でリニューアルオープン

静嘉堂文庫の新たな展示ギャラリーは、
美術館の開館30周年・三菱の創業150周年にあたる2022年10月1日に
東京丸の内の明治生命館(1階)に移転し、
「静嘉堂@丸の内」としてリニューアルオープンします。
ギャラリーは4つの展示室で構成され、総面積は世田谷の1.5倍。
(美術品の保存管理・研究などの業務は元の場所で継続されます)

明治生命館は日本の近代洋風建築を代表する建物のひとつで、
昭和初期に作られたオフィスビルの傑作です。
1997年には昭和の建築物では初の重要文化財指定をうけました。
明治安田生命保険の本社屋であり、隣接する明治安田生命ビル(2004年に竣工)
とともに活用されている現役のオフィスビルでもあります。

東京美術学校(現東京芸術大学)教授だった岡田信一郎(1883-1932)の意匠設計で
1930年に着工。信一郎は2年後に急逝しますが、
当初から設計に加わっていた弟の捷五郎(1894-1976)が引き継ぎ、
1934年3月に竣工しました。
構造設計は耐震壁による耐震構造設計を考案し「耐震構造の父」と呼ばれ
東京タワーの設計者としても知られる内藤多忠(1886-1970)です。

建築として優れていることはもちろんですが、
第2次世界大戦の後、アメリカ極東空軍司令部(FEAF)として
GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)に接収され(1956年返還)、
1946年に米・英・中・ソの4カ国代表による
第1回対日理事会(ACJ)の会場となった歴史的建造物でもあります。

岩﨑彌之助と丸の内美術館の構想

現在の丸の内は、1890年に岩﨑彌之助が政府の要請で買い取った土地
(元は陸軍の施設)に建設されたオフィス街がもとになっています。
このころ、三菱には美術館などの文化施設を造る計画があり、
当時三菱のオフィスビルを手がけていた
建築家のジョサイア・コンドル(1852-1920)が作成した
美術館の図面が残っています(1892、三菱地所株式会社蔵)。

この丸の内美術館は実現しませんでしたが、
図書室やレクチャールームなども備えており、
美術品を飾るだけの場所ではない、近代的な美術館になるはずだったようです。

丸の内美術館の構想と静嘉堂文庫の展示ギャラリー移転に直接の関係はないのですが、
100年以上の時をかけて美術館の計画が実現したと考えると
渋い歴史ドラマを見ているような気分になります。


静嘉堂創設130周年・新美術館開館記念
響きあう名宝―曜変・琳派のかがやき
(静嘉堂@丸の内)

2021年には世田谷静嘉堂文庫美術館の最後を飾った「旅立ちの美術」展、
つづいて静嘉堂文庫・東洋文庫所蔵の国宝12点・重要文化財31点が勢ぞろいした
「三菱の至宝展」(三菱一号館美術館)と、国宝尽くしの豪華な展覧会が続きました。

2022年10月の静嘉堂@丸の内のオープンには、
これらの展覧会を彩った静嘉堂文庫の国宝が再集結します。
国宝以外にも茶道具・琳派・刀剣・中国書画・工芸など、
静嘉堂を代表する名宝が展示されます。
「旅立ちの美術展」「三菱の至宝展」を見逃してしまった人も、
見逃していないけれど三菱の名宝をもっと見たい!という人も、
どうぞお楽しみに。

東京都千代田区丸の内2-1-1(明治生命館1階)

2022年10月1日(土)~12月18日(日)
※前後期で展示替えあり

公式ホームページ

2022年10月の静嘉堂文庫美術館移転、および開館記念展覧会予定について(pdf)

明治生命館の一般公開

対日理事会の会場(2階会議室)や1階店頭営業室など、
一部の施設は見学することができます。
(美術館移転工事に伴い、当面の間休館を継続)

東京都千代田区丸の内2-1-1

毎週土・日曜日の11時から17時まで
※12月31日~1月3日およびビル設備定期点検日は休館

公式サイト

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