三井記念美術館「三井家が伝えた名品・優品」 国宝《雪松図屏風》は8月に展示

日本橋の三菱一号館美術館では、開館15周年記念として
三井家伝来の品々を公開する
「三井家が伝えた名品・優品」展が開催されています。
第1部 東洋の古美術 は7月29日まで、
第2部 日本の古美術は8月1日から31日までです。

開館15周年記念特別展 三井家が伝えた名品・優品(三井記念美術館)

東京都中央区日本橋室町2-1-1 三井本館7階

第1部 2020年7月1日(水)~7月29日(水)
第2部 2020年8月1日(土)~8月31日(月)

月曜休館

11時~16時 ※入場は閉館の30分前まで

一般 1,300円
大学・高校生 800円
中学生以下 無料
70歳以上 1,000円(要証明)
セット券 2,000円(第1部および第2部に各1回入場可能)

※障がい者手帳の提示で本人および介護者1名無料
※リピーター割引
※ぐるっとパス対象施設(入場無料)

公式ホームページhttp://www.mitsui-museum.jp/


新型コロナウイルスの感染防止のための対策

三井記念美術館での対策は以下のようになっています。

  • 開館時間の短縮 11:00~16:00(入館は15:30まで)
  • 金曜日のナイトミュージアム・およびナイト割引の中止
  • 団体の来館申込の受付・団体割引の中止
  • イベント(土曜講座・ワークショップ・鑑賞会など)の中止
  • 音声ガイドの貸出中止
  • 「次回展前売券」の販売中止
  • 展示室内のベンチを撤去
    (視聴覚コーナー内のソファは1台につき1人に制限)
  • 受付でのお荷物預かりは中止(ロッカーは利用できます)
  • トイレ内のジェットタオルの使用中止
  • ブランケットの貸出中止
  • 館内スタッフは、マスク・フェイスシールド等を着用

また、入場者に対しては

  • マスク着用の義務化
  • 検温の実施(37.5度以上の発熱がある場合入館できません)
  • 手指の消毒
  • 連絡先(名前・携帯電話番号等)の確認
    (施設内で新型コロナウイルス感染症の疑いが生じた場合の連絡のみに使用)
  • 混雑時は入場制限を実施

といった協力を呼びかけています。
東京都内の感染者数が拡大し警戒レベルも最大に引き上げられている現在、
美術館からクラスターを出さないよう、利用者も細心の注意を払う必要があります。


5年に一度の特別展 図録は10周年(2015)と共通

三井記念美術館では2005年10月8日の開館以来、5年ごとに特別展を開催しています。
この展覧会では、三井家に代々伝えられ同館のコレクションとなった
国宝・重要文化財、それらに劣らない名品・優品を
東洋美術(第1部)と日本美術(第2部)に分けて展示します。
東洋美術と日本美術の二部構成でおこなわれる展覧会は、初の試みだそうです。

もとは2020年に開催される予定だった東京オリンピックに合わせた特別展であり
第1部にはオリンピック記念切手のコレクションを展示するコーナーも設けられています。

この展覧会の図録は作られていませんが、
ミュージアムショップでは10周年記念展に際して発行した館蔵名品図録の
『三井家伝世の至宝』(2015年11月発行)が販売されていました。

東洋の古美術(第1部)

第1部の展示は、大まかに
「茶道具」「書籍・絵画」「拓本」「切手」「工芸」に分かれています。
中国・朝鮮のものが中心ですが、東南アジアで作られた品物も。

日本では古くから中国の製品を、大陸の文化を吸収する教材として、
またステータスシンボルとして珍重する習慣がありました。
喫茶の習慣ができてからは渡来品の茶道具が喜ばれるようになり、
安土桃山時代に茶の湯が発展すると政治の場でも重要な役割を果たすようになりました。
唐物茶器を蒐集し、配下の武将への恩賞として活用した織田信長は有名です。

三井記念美術館のコレクションでも茶道具は重要で、
「工芸」の展示品も多くは茶道具に分類されるものです。
(一部は香道具・文房具)
また「書籍・絵画」も、
多くは茶掛け(茶室の床の間に飾る掛軸)として使われるものです。

重要文化財 玳皮盞 鸞天目(たいひさん らんてんもく 南宋時代)

円山応挙作の国宝《雪松図屏風》(第2部で展示)とともに
ポスターに採用されているこの茶碗は
鼈甲のような模様を持つ天目茶碗で、内側には霊鳥の鸞が表されています。

天目茶碗はもともと中国の天目山にある禅寺で用いられていたもので、
高台(底の部分についている輪型の部分)が極端に小さい円錐形の形が特徴。
安定のために専用の台(「天目台」)に乗せて使います。

天目茶碗でのお点前(お茶をたてる一連の動き)は、
特に格式の高いものとして身分の高い相手や神仏に対して行います。

日本の古美術(第2部)

第2部は
「茶道具」「絵画」「書跡」「工芸」「剪綵・能面・能装束・刀」。

東洋美術よりも種類が多く、日本で作られた茶道具のほかに
茶道とともに武家社会における政治・社交の場で
重要な役割を果たした能楽の面(おもて)や装束、
日本刀、明治以降の絵画や工芸品など、多彩な展示になるようです。

円山応挙の《雪松図屏風》(18世紀)は第2部で展示されます。

剪綵(せんさい)について

第2部で展示される「剪綵」は、もともと中国の工芸品だったものを
北三井家の8代目当主である三井高福(1808-1885)が工夫を加えた
「高福剪綵」と呼ばれるものです。

  • 原画を薄い紙に写し、和紙で裏打ちする
  • 線画の部分を残して切(剪)り抜く
  • 残った線に金泥を塗る
  • 空白の部分に裏側から裂地を貼り付ける
  • 屏風や衝立に貼って完成

という手順で作る、一種の切り絵のようなもの。
(実際にはもう少し細かな工程があります)
金色の輪郭線が少し盛り上がっているために、
七宝細工やステンドグラスのような雰囲気があります。

三井記念美術館では展示室の入り口に剪綵の作品が飾られていることが多く、
剪綵の技術や作品が大切に伝えられてきたことがわかります。

この技術は一度衰退していますが、
同家11代である三井高公(1895-1992)の夫人である
三井鋹子(1901~76)が中心となって復興させ、
以後三井家の奥方によって継承されたそうです。

第2部では能楽の「熊野」の一場面をとりあげた《熊野図剪綵》が
能面・能装束とともに展示されます。