パナソニック汐留美術館に国内外のルオー作品約80点が集合「ルオーと日本展」(6月5日から)

世界で唯一、ジョルジュ・ルオーの名前を冠する「ルオー・ギャラリー」をもつ
パナソニック汐留美術館では、
常設展示のほかにも頻繁にルオーに関する企画展を開催しています。
2020年4月11日から「ルオーと日本展」が予定されていましたが、
臨時休館の延長にともない6月5日からの開催となりました。

「ルオーと日本展」新型コロナウイルスによる開館延期のお知らせ

パナソニック汐留美術館は新型コロナウイルス感染拡大防止のため
2020年2月29日から臨時休館が続いています。
4月1日時点では5月9日に「ルオーと日本展」開幕の予定でしたが、
5月7日に「当面のあいだ」開幕を延期するお知らせがありました。
残念ですが、入場者の健康を守るために必要な対応と言えます。

5月29日の発表で「ルオーと日本展」は6月5日(金)から開催されることになりましたが、
期間の延長はなく、6月23日で終了する予定です。

「ルオーと日本展」ではパナソニック汐留美術館が所蔵する作品のほかにも
国内外の「ルオー」と「日本」に関する作品が集められ、
《日本の武士(武者絵)》(1928頃)や《日本の版画に基づく習作》(1922-)など
日本初公開となる作品も展示される予定でした。

4月1日のお知らせによると、
フランスの美術館から借用する予定の作品24点が開幕に間に合わないため
出品予定だった作品はパネルで紹介し、
さらに今回展示予定のなかった
パナソニック汐留美術館の作品を出展して対応するとのことでしたが、
開幕の時期によっては当初の予定通りフランスの作品を見ることができるのでしょうか。


ルオーと日本展 響き合う芸術と魂―交流の百年
(パナソニック汐留美術館)

2020年6月5日(金)~6月月23日(火)

水曜休館

東京都港区東新橋1-5-1 (パナソニック東京汐留ビル4階)

10時~18時
※入場は閉館の30分前まで

一般 1,000円
65歳以上 900円
大学生 700円
中・高校生 500円
小学生以下 無料
※20名以上の団体は100円割引
※障がい者手帳をご提示の方、および付添者1名まで無料

公式ホームページ


ジョルジュ・ルオー(1871-1958)

19世紀から20世紀にかけて活躍したフランスの画家で、
キリストなど宗教的な主題や、道化師・芸人など社会の隅にいる人々の姿を、
黒々とした骨太の輪郭線に鮮やかな色使いで描いた作品で知られています。

ルオーは14歳でステンドグラス職人に弟子入りしており、
これらの画風にはステンドグラスの影響が指摘されています。
もっともこういった「ルオーらしい」作風が確立したのは30代のころで、
10代の終わりごろ画家を志し、エコール・デ・ボザール(国立美術学校)に入学した当初はレンブラント風のアカデミックな絵で才能を評価されていたそうです。

エコール・デ・ボザールの教授だったギュスターヴ・モロー(1826-1898)は、
過去の美術を積極的に学ぶことをすすめると同時に、
学生がそれぞれの個性を開拓するように指導しました。
ルオーの同期にはフォーヴィスムの指導者となるアンリ・マティス(1869-1954)がいます。

フォーヴィスムの特徴とされる鮮やかで平面的な色彩や大胆に単純化された形態は
ルオーとも共通点があり、
これらの理由からルオーもフォーヴィスムの画家に分類されますが、
1918年以降は宗教的な主題を多く描くようになったこと、
また本人が敬虔なキリスト教徒だったことから、
宗教画家と位置付けられることも多いようです。


ルオーと日本、そしてパナソニック汐留美術館

昭和の日本洋画界の重鎮・梅原龍三郎(1888-1986)が1921年に購入した《裸婦》以来、
ルオーの作品は日本で知られるようになり、
その独特の絵柄は日本の画家にも少なからぬ影響を与えました。
特に画商で美術評論家であった福島繁太郎(1895-1960)のコレクションは
ルオーが日本に受け入れられる基盤となり、
多くの画家がルオーの作風を取り入れた作品を制作しています。
福島は個人的にもルオーと親しく交際していたようです。

またルオーの死であったモローはジャポニズムに関心をもった画家のひとりで、
日本美術の研究にも熱心だったそうです。
モローの死後、遺言によってモロー美術館(もとはモローの自宅兼アトリエ)の
初代館長になったルオーも、日本美術に親しむ機会は多かったと思われます。

パナソニック汐留美術館のルオーコレクションは、
1997年に旧松下電工会長(当時)の三好俊夫が購入した20点の作品から始まりました。
その後、2003年に松下電工NAISミュージアムとしてオープンし、
(開館記念展は「ジョルジュ・ルオー 未完の旅路」)
現在は、初期から晩年までの絵画・版画作品あわせて240点を所蔵する
大規模なコレクションとなっています。
2014年にはフランスにあるジョルジュ・ルオー財団と
パートナーシップ契約を締結しました。

展示室内にあるルオー・ギャラリーでは
美術館が所蔵するコレクションを常設で展示しています。