岩合光昭写真展「PANTANAL」― 猫だけじゃない!野生動物の世界

写真家の岩合光昭さんのファンや写真に詳しい人にとっては、
岩合さんが野生動物の専門家だということは当たり前かもしれません。
しかしながら、まったく詳しくないわたしから見ると
岩合さんは「世界各国で猫の写真を撮る人」というイメージがありました。

東京都写真美術館で開催中の(7月10日まで)
「パンタナール 清流がつむぐ動物たちの大湿原」は、
野生動物を撮る写真家としての仕事を知る良いきっかけになりました。
(でも猫の写真との共通点もあるような気がするんですよね…)

岩合光昭の仕事 ― 猫と野生動物

猫写真のベテラン

岩合光昭さんと言えば、
世界中のいろいろな場所で暮らす猫たちの姿が見られる
「岩合光昭の世界ネコ歩き」(NHK BSプレミアム、BS4Kなど)が有名。
2012年8月に特別番組として放送され、翌2013年からはシリーズになって
定期的に放送されています。
わたしのように、この番組で岩合さんの名前を知った人も多いと思います。

岩合さんが猫を撮りはじめたのは高校生のころだといいますから、
1960年代の後半くらいでしょうか。
スマホが普及して誰もが気軽に猫を撮影できるようになるよりもずっと前です。
以来、半世紀以上も猫の写真を撮り続け、
いまや大型書店に行っても猫の写真集を集めたコーナーに
岩合さんのスペースが設けられていたりしますから、
質・量ともに日本のトップ、猫写真と言えば岩合光昭! というイメージがありますね。
2022年にも岩合さんの猫写真の展覧会は各地で開かれています。

「こねこ」(角川武蔵野ミュージアム 6月18日~9月4日)
「世界ネコ歩き2」(佐野美術館 4月23日~6月26日、角川武蔵野ミュージアム 9月7日~11月27日)
「ねこのとけい」(高浜町文化会館 7月16日~9月18日)
「ねこの京都」(プライムツリー赤池 7月30日~8月31日)


野生動物写真の専門家

日本が空前の猫ブームだと言われるようになった2010年代よりも前から
猫の写真を撮っていた岩合さんが動物写真を志したのは、
日本の動物写真家の草分け的存在である父・岩合徳光さん(1915-2007)の助手として
ガラパゴス諸島を訪れた19歳の時だったそうです。

27歳から3年がかりで、およそ40か国の海に住む動物たちを取材した
初の野生動物写真集「海からの手紙」(1981)は、
『アサヒグラフ』に連載中に第5回木村伊兵衛写真賞を受賞(1980)。

1982年8月からおよそ1年半かけてタンザニアのセレンゲティ国立公園で撮影した
写真集『セレンゲティ ― アフリカの動物王国』(1984)が
『ナショナル ジオグラフィック』誌に認められ、
1986年5月号(Vol.169)の表紙を飾りました。
この時使われたライオンの親子の画像は、
写真集『おきて ― アフリカ・セレンゲティに見る地球のやくそく』(1986)の
表紙にもなっています。

『ナショナル ジオグラフィック』は1994年12月号(Vol.186)の表紙にも、
岩合さん撮影の雪玉で遊ぶニホンザルの子供を使っています。
(こちらは写真集『スノーモンキー』1996の表紙)
日本版が刊行される前、2度も表紙に採用されたのは日本人唯一の快挙だったそうです。


岩合光昭写真展 PANTANAL パンタナール 清流がつむぐ動物たちの大湿原
(東京都写真美術館 B1)

パンタナール湿原という場所

パンタナールは南アメリカ大陸の中央にある熱帯湿地で、
ユネスコの世界遺産にも登録されています。
面積は195,000平方キロメートルと、
日本の本州(228,000平方キロメートル)から中国地方をひいたくらいの大きさ。
ほとんどの部分はブラジルに属し、一部がボリビアとパラグアイにまたがっています。

名前の由来はポルトガル語のpantano(沼地)。
その名の通り、雨季の洪水では80パーセントが水びたしになる土地には、
300種の哺乳類、1,000種の鳥類、480種の爬虫類、400種の魚類など
多くの野生動物が暮らしています。

2010年代頃からスポーツフィッシングの観光客が訪れるようになり、
水辺で暮らすワニやカピバラを狙うジャガーが脚光を浴びたことで
ジャガー・ウォッチングの名所としても知られるようになりました。

岩合さんは1985年に友達からパンタナールという土地を教えられ、
2010年代になってから実際に訪れたそうです。
パンタナールで撮影した写真を収録した写真集
『PANTANAL(パンタナール)』(クレヴィス,2020)は、
東京都写真美術館のミュージアムショップ(NADiff BAITEN)でも購入できます。
(もちろん全国の書店でも)
多くの写真は会場と図録の両方で見ることができるのですが、
どちらか一方でしか見られない写真もあるため、
併せて楽しむのがおすすめです。

また岩合さんのオフィシャルサイトでは、
写真とあわせて撮影中のエピソードも多数公開されています。
「野生動物撮影記」の「パンタナール撮影記」からどうぞ。

大きな猫のようにのびのびとふるまうジャガー、
温泉でのんびりしているイメージを覆す野生的なカピバラ、
どこか神秘的な雰囲気があるワニ(パラグアイ・カイマン)など
圧倒的に鮮やかで濃い色彩に満ちた場所で生きる
動物たちの世界に浸ってみませんか?


写真展 PANTANALの概要

2022年6月4日(土)~7月10日(日)

月曜休館(祝休日の場合は開館し、翌平日休館)

東京都写真美術館(TOPミュージアム)
東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内

10時~18時 (毎週木・金曜日は20時まで)
※入館は閉館時間の30分前まで

一般 800円
大学生・専門学校生 640円
中高生 400円
65歳以上400円
※小学生以下、都内在住・在学の中学生は無料
※障害者手帳の提示で本人および介護者(2名まで)は無料
オンラインによる日時指定予約を推奨
(当日チケットあり)

公式ホームページ

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