日曜美術館「Walk on the Wild Side! 〜北海道・謎の美術館 “シゲチャンランド”〜」(2020.10.18)

北海道の網走郡津別町にあるシゲチャンランドを、工藤ワビ良平さんが訪ねました。
イラストレーターを経て40代で自然の素材を生かす造形作家に転身した
シゲチャンこと大西重成さんの制作活動を振り返りながら
今年20年を迎える極楽美術館・シゲチャンランドと
津別町の町おこしにも参加するシゲチャンの現在に密着します。

2020年10月18日の日曜美術館
「Walk on the Wild Side! 〜北海道・謎の美術館 “ シゲチャンランド”〜」

放送日時 10月18日(日) 午前9時~9時45分
再放送  10月25日(日) 午後8時~8時45分
放送局 NHK(Eテレ)
語り 柴田祐規子(NHKアナウンサー)

造形作家の大西重成さん(通称シゲチャン)が北海道に私設美術館=シゲチャンランドを開いて20周年。東京で人気イラストレーターだったが、50歳で故郷に帰り牧場跡地に14棟からなる独自のアート空間を作り上げた。作品の素材は「拾いもの」。流木や獣の骨、自動車の部品や空き缶などからポップで呪術的なオブジェを生み出す。飄々(ひょうひょう)と独自の道を切り開き、過疎の町に活力を与えるアートを見つめる。(日曜美術館ホームページより)

出演
大西重成 (造形作家)
大西ココ (大西重成夫人)
大西 洋 (長男、イラストレーター)
工藤ワビ良平 (アートディレクター)
ほか


工藤ワビ良平さん シゲチャンランドを訪ねる

シゲチャンランドを訪れた人たちは、こんな事を言っています。

大西さんの心の中を歩き回っているような不思議な時間が流れた。
吹雪の中、斧を手に丸太を担ぐ大西さんの顔がふと浮かぶ。
次を作らねば、
そんなときいつもそう思う。
(大竹伸朗)

シゲチャンランドを訪ねた。
チョー面白かった。
シゲチャンはいるべき場所にいて本当にやりたいことをやっている。
そういうふうに自分も生きたい。
(奈良美智)

シゲチャンのファンでなくてもなんだか気になってしまいますね。

番組ではシゲチャンの大ファンである工藤ワビ良平さんが登場しました。
中学生のころ、イラストレーター・大西重成の作品を見て
「ウワァー、かっこイイ」と心を動かされたワビさん。
「20年目のシゲチャンに会いたい」と、シゲチャンランドを訪ねました。

展示館には、それぞれに「耳」「手」など体の名前がついています。
まず、もとは牛舎だったメインホール「鼻(nose house)」で、
「あの子がここを支配してる」と感じた恐竜のような《アカドン》をはじめ
力強い木の根の体に対してつぶらな石ころの目が可愛い《イルカ獣》
シゲチャン自身の歯を使った《紅丸》などの
無国籍なオブジェたちに出会ったワビさん。

ポップでカラフルな若いころの作品が並ぶ「頭(head house)」では、
「一番はじめに大西さんを認識した世界」と語り、
高校時代それを押さえておかないと女の子にもてなかったという
カラフルなハンバーガーショップの冊子『モスモス』(1991-1996)
のことを回想しました。


シゲチャンこと大西重成(1946-)について

津別町に生まれたシゲチャンは、
高校を卒業してすぐ横浜の郵便局に勤めますが、3か月で挫折したそうです。
高度経済成長期の中でポップアートに興味を持ち、髪と髭を伸ばして23歳で渡米。
NYスクール・オブ・ビジュアルアーツに入学しました。
帰国後は広告デザインの仕事についたシゲチャンは時代の寵児として
坂本龍一の『サマー・ナーヴス』(1979)
ハービー・ハンコック(Herbie Hancock)の『Feets, Don’t Fail Me Now』(1979)
などのレコードジャケットを手がけました。
ちょうどバブルの絶頂期で、「時代と添い寝する」ことが面白かった時代だそうです。

そしてバブルがはじけた40代のころ、シゲチャンの作風も変化しました。
自然の素材の豊かな表情を生かした立体オブジェを作るようになります。
(1992年に多摩川で石を拾う映像がありました)
長男の洋さん(当時高校生)によると、この頃のシゲチャンは
「拾いものをしてる人」だったそうです。

次の転機は、その拾いものが運んできました。
スリランカで拾った椰子の実と木の枝を合体させた
《ナノナノ族》(もとサイロの「mouth house」にいます)が生まれた時
「そっち行くしかない」と諦めがつき、
50歳で故郷の津別町に戻ることになります。

後にシゲチャンランドとなる牧場跡地(8,000坪)は、
元の居住者がすべて置いたままにして出て行ったために
シゲチャンと奥さんのココさんで片付けるところから始まったそうです。
牛の糞尿の片づけ・石や瓦礫の撤去・建物のペンキ塗りまですべてが自力。
(雪の中でペンキ塗りをした時は奥さんも「いささか」キレたそうです)
「狩猟採集アートの王国」は、4年がかりで完成しました。
2001年の開館当初は7つだったシゲチャンランドの展示館は現在14あります。


シゲチャンの現在と津別町

作品の素材になる流木を持ち帰るとき「連れて帰る」と表現するシゲチャン。
流木の方でもシゲチャンに「つれてけよ」「行け」と語りかけてくるんだそうです。

そんなシゲチャンがシゲチャンランドの20周年を記念して挑んだ大作は、
拾い集めた鹿の角(20頭分!)と流木を組み合わせた壇の中心に
ブドウの蔓・車のホイールカバー・赤いシーツの生地・殺虫剤の缶の底などで
飾った鹿の頭蓋骨が鎮座し、その両脇を流木アートの脇侍が固めるという、
異形の神を祀る祭壇のような不思議で神々しい作品でした。

思わず手を合わせたワビさんも
「20周年にふさわしい、今までのものが全部混沌と入り組んでいて」
「一言で言うと『かっこイイ』しか出ないですね」と
作品の雰囲気に圧倒されたようです。

津別町に行くと、シゲチャンランドのほかにも
シゲチャンの作品と触れ合う機会があります。
地元の名物(銘菓?)クマヤキの型・ポスター・ふるさと納税カタログの表紙など、
シゲチャンのデザインが色々なところに使われているからです。
廃業した電気店をゲストハウスに改装する時も、
看板デザインや部屋に飾るアート(実際に使われていた農具を使用)を手がけました。
シゲチャンの作品は、津別町の新しい名物になっているようです。

この時リノベーション真っ最中だった「泊まれる美術館」こと
ゲストハウスnanmo-nanmoは今年3月13日にオープンしました。
津別町のウェブサイトに案内があります

作品の制作(流木を背負って連れてくることを含む)に
美術館の管理から町おこし、と忙しそうですが、
元々奥さんに「趣味ない人」と言われてしまうほど
作品を作ることが趣味であり仕事であり生活でもあるシゲチャンは
「もうパラダイス、極楽です」と話しています。


シゲチャンランド

北海道網走郡津別町字相生(あいおい)256

開館期間5月1日~10月31日
毎週水・木・金曜休館(祝日の場合は開館)

10時~17時

小学生以上 700円(幼稚園児以下は無料)

公式ホームページ