日曜美術館「丸木位里・俊『沖縄戦の図』 戦争を描いてここまで来た・佐喜眞美術館」(2021.6.20)

《原爆の図》(全15部)の共作で知られる丸木夫妻が
晩年に描いた《沖縄戦の図》(全14部)は、
お二人の希望で沖縄の佐喜眞美術館に収められています。
小野さんはこの美術館を訪れて《沖縄戦の図》を鑑賞し、
夫妻を知る人々にも話を聞きました。

2021年6月20日の日曜美術館
「丸木位里・俊『沖縄戦の図』 戦争を描いてここまで来た・佐喜眞美術館」

放送日時 6月20日(日) 午前9時~9時45分
再放送  6月27日(日) 午後8時~8時45分
放送局 NHK(Eテレ)
語り  柴田祐規子(NHKアナウンサー)

「原爆の図」の丸木位里・俊が最後に描いた地上戦。14点の壮大な連作「沖縄戦の図」はいかに書かれたのか。壮絶な沖縄戦で生き残った人々との共同制作。その貴重な映像記録が残されていた。読谷三部作が訴え続ける平和の重み。米軍上陸の初日に読谷村で起こった沖縄戦最大の惨劇 “集団自決”。島民たちが逃げ込んだ “チビチリガマ” の悲劇と全員が生き残った “シムクガマ”。明暗を分けたのはなんだったのか。丸木夫妻の発見とは(日曜美術館ホームページより)

出演
小野正嗣
知花昌一
丸木ひさ子
本橋成一 (写真家・映画監督)
佐喜眞道夫 (佐喜眞美術館館長)
眞喜志好一 (建築家)
上間かな恵 (佐喜眞美術館学芸員)

丸木夫妻と《沖縄戦の図》

丸木位里(1901-1995)さんと丸木俊(赤松俊子、1912-2000)さんは、
1982年に首里に家を借り、
埼玉のアトリエと沖縄を往復しながら《沖縄戦の図》の連作を制作しました。

水墨画の位里さんと油彩画の俊さんの共同作業で生まれる作品は、
俊さんが長く細い筆を使って描いた線の上から
位里さんが太い筆に含ませた墨で「汚していく」方法で描かれたものです。
1984年の日曜美術館では《沖縄戦の図》制作の様子が放送され、
そこでは庭に広げた大きな紙の上に立って作業する2人の姿がありました。

丸木夫妻は現場となった場所を訪れるほか、沖縄戦に関する本を160冊以上読み、
専門家のレクチャーを受け、また生き残った人たちの体験談を聞いたそうです。

「自分たちは(その時)立ちあってなかった」という2人は
沖縄戦の遺族の人たちの話を重視し、
当時を再現するポーズをとってもらいながら制作を勧めました。
《沖縄戦の図》にはモデルとなった遺族の顔が描き込まれています。


読谷三部作《チビチリガマ》《シムクガマ》《残波大獅子》

位里さんと俊さんの共作による《沖縄戦の図》は14点の連作で、
夫妻の希望により、沖縄にある佐喜眞美術館に収められています。

  • 沖縄の図[八連作](1983)
    久米島の虐殺(1)/久米島の虐殺(2)/亀甲墓/自然壕(ガマ)/喜屋武岬/集団自決/暁の実弾射撃/ひめゆりの塔
  • 沖縄戦の図(1984)
  • 沖縄戦―きゃん岬(1986)
  • 沖縄戦―ガマ(1986)
  • 沖縄戦[読谷三部作](1987)
    チビチリガマ/シムクガマ/残波大獅子

常設展示されている《沖縄戦の図》は、タテ4m×ヨコ8.5mの特に大きな作品です。
遠目に見るとグジャグジャした黒い線の塊に
暗い青や赤の雲がかかった抽象画のように見えますが、
よくよく目を凝らすと沖縄で命を落とした人々の姿を
詳細に描いていることが分かります。

「どう考えても沖縄っちゅうのがこの戦争では一番、大変なことが起こっておりました」
と語った位里さんは、沖縄で起きた地上戦を
地元の人の視点から、目に見える形で残そうとしました。

番組内では14点のうち、特に「読谷三部作」に注目しています。

三部作のうち《チビチリガマ》と《シムクガマ》は
2つのガマ(自然洞窟)で起きたことを題材にしています。
読谷村では、1945年の3月下旬頃から爆撃が激しくなり、
4月1日にはアメリカ軍が上陸して、住民はガマに避難しました。

チビチリガマでは「米兵に見つかれば虐殺される」と信じた人々が
4月2日に集団自決を決行し、80人を超える人が死亡しました。
《チビチリガマ》には、こときれて倒れ伏す人や、
せめて楽に死ねるようにと家族に毒を注射する看護師の女性、
竹槍を持って抵抗しようとする人など
ガマの中にいた人々の姿が描かれています。

一方シムクガマでは、もとハワイ移民だった住民が他の住民を説得し、
1000人あまりの人々がそろって脱出することができました。
《シムクガマ》に描かれているのは人の姿のないガランとした洞窟で、
左上にチビチリガマとシムクガマについて短いメッセージが書かれています。
丸木夫妻は2つのガマを対比させ、そこに日本社会を重ねているようです。

三部作の締めくくりにあたる《残波大獅子》は、
前の2作から時代を経た現在の沖縄が舞台です。
音楽を奏で、踊り、語り合う人たちの中には生き延びた人たちやその家族がいて、
もしかすると亡くなった人々もいるのかもしれません。


「鎮魂の集大成《沖縄戦の図》」佐喜真美術館

普天間基地のすぐ隣。
美術館の入り口から道を挟んだすぐ先に、基地の内と外を区切るフェンスが見えます。
この土地も米軍に接収されていたために普天間基地の内側にあったのですが、
丸木夫妻から美術館の建設を相談された佐喜眞道夫さんが米軍と交渉して
1992年に返還され、1994年に美術館が開館しました。
もとは佐喜眞さんの家の土地で、
敷地内には佐喜眞家のお墓(沖縄の伝統的な亀甲墓)もあります。

沖縄県宜野湾市上原358

2021年6月17日(木)~2022年1月17日(月)

9時30分~17時

火曜休館・旧盆および年始年末休館

一般 800円(720円)
大学生・シルバー(70歳以上) 700円(630円)
中学・高校生 600円(540円)
小学生以下 300円(200円)
※( )内は20名以上の団体料金

公式サイト