初音ミクが纏う尾形光琳の着物 《冬木小袖》(東京国立博物館所蔵)修理プロジェクト

東京国立博物館所蔵の《小袖 白綾地秋草模様》(通称《冬木小袖》)の
修復資金を集める「《冬木小袖》修理プロジェクト」の一環として、
クリプトン・フューチャー・メディア(株)とコラボした、
ボーカロイド「初音ミク」のグッズが
ミュージアムショップや通販サイトで販売されています。

琳派の名前の元にもなった絵師・尾形光琳の描絵小袖
(イラストでは振袖にアレンジされています)を着た、
このプロジェクト限定のミクを是非チェックしてください。

初音ミク×東京国立博物館×文化財活用センター
《冬木小袖》修理プロジェクト


白地に桔梗屋キクなどの秋草を描いた上品な振袖を纏う、緑の髪の美少女。
クリプトン・フューチャー・メディアが2007年から展開しているボーカロイドにして、
日本が誇るバーチャルアイドル初音ミクです。

着ている着物は、実は18世紀に作られ
現在は東京国立博物館(トーハク)が所蔵する
重要文化財《小袖 白綾地秋草模様》(通称《冬木小袖》)を振袖にアレンジしたもの。
秋草の絵を描いたのは「琳派」を代表する絵師の尾形光琳です。

実際の小袖ではなく振袖になっているのは、
イラストを描いた森倉円(もりくらえん)さんの
16歳のミクに合うように、という配慮なんだとか。

もとの小袖は商家(冬木家)の奥方のために作られたもので、
当時はすでに若い女性の衣装は振袖が定番になっていたそうですから、
確かにそのままだと16歳の女の子には似つかわしくないかもしれません。
(一枚の絵としても、振袖の方が華やかだと思いますし)
帯が光琳風の流水と燕子花の模様になっているのもにくい心遣いです。

このイラストは《冬木小袖》を修理し未来に伝える
「《冬木小袖》プロジェクト」(2020年1月開始)のために制作されたもので、
2020年6月から東京国立博物館のミュージアムショップや
「〈冬木小袖〉ミク オフィシャルECサイト」で関連グッズが販売されています。

ポストカード(220円)・クリアファイル(550円)のお手頃なものから、
複製原画(50,000円)・アクリルパネル(53,000円)・掛け軸(55,000円)まで、
幅広い価格帯の商品を展開し、売上の一部が同プロジェクトに寄付される仕組みです。
(商品のラインナップと詳細はオフィシャルサイトをご確認ください)

完売次第終了となる商品もあるのでご注意を。
(複製原画・アクリルパネル・ビッグアクリルスタンドは、オフィシャルサイトに限り完全受注生産です)


《冬木小袖》こと、重要文化財《小袖 白綾地秋草模様》(尾形光琳筆、18世紀前半)について

京都生まれの尾形光琳(1658-1716)が江戸にやってきたのは1704年のことでした。
経済的に困窮し、パトロンを頼っての江戸下向で、
武家や豪商と交流して援助を受けていたそうです。
深川の材木問屋だった冬木家には江戸に着いたばかりの頃滞在しており、
《冬木小袖》はこの家の夫人のために描かれました。

明治時代に東京国立博物館(当時は東京帝室博物館)が
《冬木小袖》とその伝来を示す巻物を購入し、現在まで伝わっています。

光琳直筆の描絵小袖(かきえこそで)で
今も完全な形で残っているものは、他にありません。
《冬木小袖》も300年の時間経過で絹地の傷みや変色が進み、
これから100年200年と保管するための修理が必要になります。

《冬木小袖》は2021年1月に修理工房へ移されました。
2022年の末頃まで傷んだ表地の修理、裏打ちなどが行われ、
2023年以降に東京国立博物館総合文化展で公開される予定です。

小袖の歴史と《冬木小袖》

「小袖」とは現在の着物の原型に当たるもので、
はじまりは平安時代にさかのぼります。
当時の貴族が袖の大きい礼服(大袖)の下に
庶民が着ていた筒袖の着物を着るようになったことから
袖の空きが小さい着物が「小袖」と呼ばれ、
下着として使われるようになりました。

平安時代から室町時代まで、小袖はあくまでも下着の扱いでしたが、
戦国時代になると活動的な衣服が必要になり、
動きやすい小袖が表着に採用されます。
武家の女性の正装としてとりいれられたことで、
織りや刺繍などで飾られた豪華な小袖も登場しました。

美しい色や柄をとりいれた小袖は長らく
地位の高い公家や武家の人間が着るものでしたが、
桃山から江戸時代にかけて商業が発達すると、
格式に従って色・柄を規定される上流階級よりも
裕福な町人たちが華やかな着物を楽しむようになります。

この風潮を問題視した幕府は天和年間(1681-84)に禁令を出し、
派手で贅沢な衣服を禁止しました。
金紗・刺繡・総絞りなどを使った着物は
着るのはもちろん作るのも禁止される中、
町人は制限された条件でいかに美しく装うかを競うようになります。

禁令に触れない新しい技術として
着物の生地に絵を描いて模様を表す技法が生まれ
(代表的な例が友禅染です)
富裕な商家では、有名な絵師に小袖の模様を描いてもらうことが流行しました。
《冬木小袖》も、そうして生まれた小袖のひとつ。
美術品としても服飾史の資料としても、貴重な存在なのです。


その他の「《冬木小袖》修理プロジェクト」

《冬木小袖》修理プロジェクトは2020年1月に開始され、
2022年6月まで続く予定でしたが、
予定よりも1年早い2021年6月に、目標金額(15,000,000円)を達成しました。

募金活動は2021年末まで続き、
余剰分は東京国立博物館が所蔵する文化財の修理費として活用されるそうです。

グッズ購入で参加

初音ミクとコラボした「《冬木小袖》ミク」のグッズ以外にも、
《冬木小袖》修理プロジェクトのグッズは充実しています。
(東京国立博物館のミュージアムショップで購入可能)

マスキングテープ(396円)、一筆箋(418円)、蒔絵シール(525円)の定番商品や、
四六判・新書・文庫(各2,200円・1,870円・1,650円)と3サイズ展開しているブックカバーなど、
すべて《冬木小袖》のデザインを取り入れたオリジナルグッズです。

寄付で参加

《冬木小袖》修理プロジェクトへの寄付は一口1,000円から、
独立行政法人国立文化財機構文化財活用​センターの寄附申し込みページ
または郵便局・ゆうちょ銀行(窓口・ATM)から振り込みで参加できます。
詳細は国立文化財活用センターの「寄付の方法」のページからご確認ください。
(ゆうちょ銀行の振込用紙ダウンロードもこちらから)

オンライン、または郵便局・ゆうちょ銀行の振込で10,000円以上の寄付をすると
特典としてオリジナルデザインの返礼品と
東京国立博物館総合文化展観覧券(最低2枚)などのプレゼントがもらえます。
(返礼品は数に限りがあり、2021年7月現在では複数が品切れとなっています)

東京国立博物館内の募金箱から参加(オリジナル折り紙あり)


東京国立博物館内、本館1階11室脇の「階段室」は
《冬木小袖》修理プロジェクトのスペースになっており、
当時の着付けを再現したレプリカの小袖(模様はインクジェットプリント)と
募金箱があります。
千円以下の寄付をしたい、振り込みの手続きが面倒…という時は、
こちらを利用すると良いでしょう。

募金箱の横にはプロジェクトのチラシ(日本語版と英語版の2種類)と
折り紙作家のやまぐち真さんがデザインしたオリジナルの折り紙が置かれ、
付属の折り図に従って折ると冬木小袖風の「着物」が完成します。
折り紙に挑戦する時は募金箱に100円を入れてください。
(もちろん、もっとたくさん入れても問題ありません)