「ボストン美術館展 芸術×力」(東京都美術館)2022年7月23日開催!

東京都美術館 (台東区上野公園)で
2020年4月16日から開催するはずだった「ボストン美術館展」。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で作品輸送の目途がたたず、
通信販売で図録を購入するしかなかったのですが、
2年間の延期を経て2022年7月に開催が決定しました。

「ボストン美術館展 芸術×力」2022

エジプト、ヨーロッパ、インド、中国、日本など
東西の権力者たちがその力を示すために収集した芸術のコレクションから
およそ60点の作品が集まります。


東京都美術館(東京都台東区上野公園8-35)
※巡回はありません

2022年7月23日(土)~10月2日(日)

公式サイト



図録『ボストン美術館展 芸術×力』ART&POWER:FROM PHARAOHS TO DAIMYOS


2020年に「日テレ屋web」「e+」「ほぼ日カルチャんWEBショップ」
などのWEBショップで販売していた図録です。
(2022年の展覧会では新版の図録も)

2020年版の値段は税込2,500円(送料別)
サイズは通常よりもやや小さめのB5版(全236頁)。
表紙は表が伊勢長島藩(現在の三重県桑名市長島町)の5代目藩主
増山雪斎(ましやま せっさい)の《孔雀図》(1801)、
裏表紙がフランドルの画家・アンソニー・ヴァン・ダイクの
《メアリー王女、チャールズ1世の娘》(1637頃)です。

この展覧会のために修復された《孔雀図》は、
アーネスト・フェノロサ(1853-1908)のコレクションとして海を渡り、
フェノロサの死後、資産家のチャールズ・ゴダード・ウェルド(1857-1911)が
買い取ってボストン美術館に遺贈したもの。
実現していれば初の里帰りだったのですが…

なお、展覧会の目玉のひとつである《平治物語絵巻 三条殿夜討巻》も
同じ「フェノロサ=ウェルド・コレクション」のメンバーです。

構成

この展覧会では古代ローマのファラオにはじまって
ヨーロッパの王侯貴族、インドの皇帝、日本の大名、アメリカの大富豪など、
その時々の権力者が手にした美術品を

  1. 姿を見せる、力を示す
  2. 聖なる世界
  3. 宮廷のくらし
  4. 貢ぐ、与える
  5. たしなむ、はぐくむ

の5章に分けて紹介します
作品のトップに登場するのは、エジプト新王国時代の《ラメセス2世像上半身部分》。
(ボストン美術館はエジプト美術が充実していることでも有名なんだそうです)
ほかにも時代を代表する権力・財力をもつ人々が
その「力」を発揮して作り(作らせ)、集めた品々ばかり。
美術として優れていることはもちろんですが、
「力」という視点から見るとやけに生々しいものに見えてきます。

論考とコラム

専門家による権力と美に関する論考は、
「「権力」というレンズを通して見るヨーロッパ美術」と
「アジアにおける支配、権力、美術表現」の2本立てです。

また注目すべき美術品に関するコラムは

  • 「宗教美術×力」
    平安時代の仏師・定朝(じょうちょう)が生み出した「定朝様」の流行と、それにともなう地方への権力の浸透
  • 「開かれた「宮廷のくらし」」
    アメリカの女性大富豪マージョリー・メリウェザー・ポスト(1854-1914)が収集したジュエリー・コレクションに見る、価値あるものを公開する意味
  • 「芸術と力」
    増山雪斎の《孔雀図》に込められた「一家の吉祥と繁栄、永続を祝う」心

についての3本。見開き1ページの短いものですが、
美術品とその陰にかくれた人間の思いについて考えさせられました。

SPECIAL CONTENTS

また「SPECIAL CONTENTS」として

ここでは、日本にあったら国宝指定は確実だったと言われる、

  • 《吉備大臣入唐絵巻》
    (きびだいじんにっとうえまき 12世紀末)
  • 《平治物語絵巻 三条殿夜討巻》
    (へいじものがたりえまき さんじょうどのようちのまき 13世紀後半)

の二大絵巻と、

  • 吉村周圭《寛政内裏遷幸図屏風》(1790-1795)
    (天明の大火で避難した仮御所から新御所に遷幸する光格天皇の大行列を描いたもの)
  • 《水差しと水盤》(1567-1568)
    (エリザベス1世時代の銀製品。歴代のイングランド君主の肖像と旧約聖書の物語を刻まれている)

の4点を取り上げ、細かい見どころに注目した解説があります。

実物を前にしてもなかなか見つけられない部分や立体の裏側を
拡大して解説してもらえるのは嬉しいところです。

どこをとっても興味深い『ボストン美術館展 芸術×力』、
わたしとしては2,500円(+送料)を超える価値があると思います。

2022年版図録はさらに豪華に!

2022年7月23日からはじまった展覧会では、
新規で印刷された新しい図録も販売されています。


より美しい印刷で、さらにアートナビゲーターのナカムラクニオさんによる
別冊付録「ボストン美術館 修復探訪記」がついて、値段は2800円。
既に2020年版を持っていても、つい欲しくなってしまいます。


自宅で楽しむボストン美術館展
公式ホームページのスペシャル企画(動画・音声の配信も)

ボストン美術館展の公式ホームページでは、
展覧会を自宅で楽しむためのコンテンツも揃っています。
是非、メニューの「スペシャル」から行ってみて下さい。

ナカムラクニオ「ボストン美術館展を楽しむ7つの秘密」

アートディレクターでライターのナカムラクニオさんが
ボストン美術館と展示される作品について
歴史的背景や関係ある人たちにも触れながら解説してくれます。
お洒落なイラストも必見。

ボストンクイズと手作りの(!)展示模型

作品や会場の展示模型の画像とともに、
展覧会や作品に関するクイズ(全40問)が出題されます。
展示模型は何と、担当学芸員の方が手作りしたんだとか。

2020.05.18

作品輸送の目処が立たず、開催を断念した「ボストン美術館展 芸術×力」。楽しみにしてくださっていた方々に少しでもこの展覧会をお伝えしたく、担当学芸員が見どころとなる作品や会場イメージをご紹介します。(なお、会場イメージは在宅勤務中の担当がおうちにある材料で製作したものです。)
さらに、担当学芸員がボストン美術館や展覧会にまつわるクイズを出題。ぜひ挑戦してください。お楽しみいただければ幸いです。

本内容は、東京都美術館の公式Twitter(@tobikan_jp)で2020年4月23日より毎日配信している内容をまとめたものです(5月18日現在、毎日配信中)。
#まぼろしの美術館 #ボストン美術館展 #おうちでミュージアム #ボストンクイズ

「#まぼろしの美術館」のタグがなんとも悲しい。
解答の多くは図録の中で見つけられるので、手元に置いてチャレンジしてみては?

手作りの展示模型はYouTubeからも見ることができます
まぼろしの展覧会「ボストン美術館展 芸術×力」手作り展示模型

「ボストン美術館展」の音声ガイドは有料配信中

オンライン動画配信サービス「Hulu」(有料。会員登録が必要)では
声優の鈴村健一さんと櫻井孝宏さんによる音声ガイドを
豊富な映像とともに配信するサービスもはじまっています。

音声ガイドはアコースティガイド・ジャパンの公式アプリ
「聴く美術」(有料)からも視聴できますので、
展覧会に行ったつもりで楽しんでみるのはいかがでしょう?