「宮廷画家 ルドゥーテとバラの物語」2020年9月、八王子市夢美術館にて『バラ図譜』全作品展示

18世紀から19世紀のフランスで美しい花の絵を描き、
いまも多くの人に愛されている植物画家ピエール=ジョゼフ・ルドゥーテの
版画集『バラ図譜』が八王子市夢美術館で展示されます。
銅版画による多色刷り印刷に手彩色を加えた緻密な図版で、
ナポレオン1世の皇妃ジョゼフィーヌが収集したバラが蘇ります。

宮廷画家 ルドゥーテとバラの物語
The Official Court Artist Redouté and His Roses

八王子市夢美術館 (東京都八王子市八日町8-1 ビュータワー八王子2F)

2020年9月18日(金)~11月8日(日)

月曜休館(9月21日は開館し、9月23日休館)

10時~19時
※入場は閉館の30分前まで

一般 600円
学生(小学生以上)・65歳以上 300円
未就学児 無料

公式ホームページ


ピエール=ジョゼフ・ルドゥーテ(1759-1840)

ルドゥーテは、フランス革命前後に活躍した植物画家です。
ルイ16世王妃マリー・アントワネットをはじめとする
錚々たる女性たちの後援をうけ、
植物学的な正確さと芸術性を兼ね備えた花の絵を描いたことから
「花のラファエロ」「バラのレンブラント」などと称されました。

現在のベルギー南部にあるサン=テュベールで
職業画家を多く輩出したネーデルラントの騎士の家に生まれ、
フランドルやオランダで絵の修行を積みました。

10代後半からパリに出て、兄の工房を手伝いながら
王の庭園(パリ自然史博物館)で花のスケッチをしていたそうです。
その後、植物学の本の図版を描くようになり、
植物学者レリティエ・ド・ブリュテルの紹介でヴェルサイユの宮廷に紹介され、
マリー・アントワネットの博物蒐集室付画家となりました。

フランス革命後、皇妃ジョセフィーヌの公式画家を経て、
ナポレオンとジョゼフィーヌの離婚後は
新たな皇妃マリー・ルイーズにも絵の教師として仕えています。


『バラ図譜(Les Roses)』(1817-1824)

後援者のひとりだったジョゼフィーヌ(1763-1814)は、
パリ郊外のマルメゾン城で世界中から収集したバラを栽培していました。
ルドゥーテが手がけた植物図譜の中でも最高傑作と言われる『バラ図譜』は
このバラ園の花を描いたもので、169種類のバラが収録されています。

出版されたのは、ジョゼフィーヌの死後である1817年から1824年(全3巻)。
芸術的価値はもちろん、植物学上重要な資料としても評価され、
現在も多くの人に愛されています。

日本でも画集として何度か発行されており、
現在は河出書房新社の
『Les Roses バラ図譜 普及版』(2012)が手に入りやすいようです。


バラの名前

現在は美しい画集として鑑賞されることが多い『バラ図譜』ですが、
「図譜」は本来「特定のものを分類し、正確な図を添えて説明する書物」
つまり「図鑑」です。
なので『バラ図譜』の絵に添えられたタイトルは、
ほとんどすべてが描かれた花の学名になっています。

ふつう「バラ」と呼ばれる植物は、
バラ科バラ属(Rosaceae Rosa)の植物です。
(「バラ科」には梅や桜も含まれる)

バラの名前は科名を省略して、
属名である「ロサ(バラ属 Rosa)」に
種の特徴を表す「種小名」をつけて表記し、
必要に応じてさらに細かい分類である
「亜種」「変種」「品種」などの表記をそえます。

たとえば
「ロサ・ケンティフォリア(バラ・100枚の花弁)」
「ロサ・ダマスケーナ・イタリカ(バラ・ダマスクの・イタリアの)」
など。

近代の園芸種になると更に細かい規則がありますが、
『バラ図譜』に収録されているのはすべて
原種のバラである「ワイルドローズ」か
1867年以前に作られた「オールドローズ」のため、
このあたりを押さえておけば理解できそうです。

作品を見るときに、意識してみると楽しいかもしれません。