太田記念美術館 浮世絵を愛した実業家・五代目太田清蔵の大コレクション(美術館案内)

太田記念美術館について

東京と原宿にある太田記念美術館は、浮世絵専門の美術館です。
実業家・五代目太田清蔵(1893~1977)のコレクションを基礎に、1980年に開館しました。
太田清蔵は学生時代に絵画に熱中し画家を目指したこともあるほどでしたが、
父親の反対で断念。
その後、1922年から23年にかけて欧米を旅行した際
博物館に展示されていた浮世絵の名品を見たことでその美術的価値を認め、
浮世絵の蒐集を始めたそうです。
最終的に蒐集された浮世絵は12,000点におよび、
さらに太田の死後も美術館は収蔵品を増やし続けています。
常設展示はなく、月ごとにテーマを決めて年12回の特別展を開催しています。

利用情報

太田記念美術館(東京都渋谷区神宮前1-10-10)

10時30分~17時30分 ※入場は閉館の30分前まで

入館料は展示により異なる(1,000円前後)
※10名以上の団体は100円引き(事前申し込みが必要)

大学・高校生割引あり
中学生以下無料
※中学生以上の学生は学生証の提示が必要

障害者手帳提示で本人と付添い1名100円引き
車椅子で来館の場合1階の展示室は無料(ただし他の階に入場できません)

毎週月曜日休館(祝日の場合は開館、翌日休館)
展示替え期間・年始年末休館

公式ホームページ http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/

「太田記念美術館はラフォーレ原宿の裏」とおぼえてください

若者の街・原宿のどこに浮世絵の専門美術館があるのか?
知らなければ疑問に思うかもしれません。

電車の駅からの道順は
JR原宿駅からは
原宿駅表参道口を出て表参道を青山方向へ
東京メトロ明治神宮前駅からは
5番出口を出て表参道を原宿駅方向へ進んでいくと、
原宿駅から見れば左手、明治神宮前駅からは右手に案内板があります。

明治神宮前駅の側から見るとこんな感じです

原宿は人ごみが凄そうだし、案内を見つけられるか不安…という場合。
実はこの美術館、ラフォーレ原宿のすぐ裏にあります。
(ホームページのアクセスマップなどで確認してみて下さい)
ラフォーレの2.5階にある裏口を出ると真正面にある由緒ありげな建物がそれです。

美術館前から見える風景

意外な取り合わせですが、そもそも浮世絵は時代時代の庶民の生活を描く風俗画。
当時のファッションリーダーを描く美人画や、
人気俳優をモデルにした役者絵などもありましたっけ。
最新トレンドの発信地であるラフォーレ原宿と江戸のトレンドを伝える浮世絵。
案外、相性がいいのかも知れません。

展示室には脱ぎやすい靴で

展示室入り口は、受付のすぐ右手です。
第1展示室に入ると、石灯篭や竹垣を備えた石庭があります。
ここには腰掛も置いてあり、休息スペースとして利用できます。

肝心の浮世絵は、展示室の壁に沿って展示されています。
すぐ左にある畳敷きのスペースには、靴を脱いで上がりましょう。
こちらでは床の間の絵を見るときのように膝をついて鑑賞できますから
元の所有者が見ていたのと近い距離で見ることができるのです。

太田記念美術館に行くときは脱ぎ履きが楽な靴が良いですね。
(夏場に素足でサンダルを履いているような場合は、靴下を持っていくと良いでしょう)

2階展示室には階段で

第2展示室には、石庭の横にある階段から上がります。
回廊状になっており、壁に沿って回りながら鑑賞するようになっています。
あまり広くないので、混雑しているときは他の方の邪魔にならないよう注意が必要かもしれません。

館内にエレベーターやスロープはありません(車椅子の方は制限あり)

2020年現在、太田記念美術館にはエレベーターやスロープは設置されておらず
2階および地下1階の視聴覚室に行くときは階段を使って移動するしかありません。
車椅子で入館すると、1階展示室以外は入れてもらえないそうです。
(そのかわり1階展示室の鑑賞は無料ですが…)

肉筆浮世絵のこと

一般的に「浮世絵」というと、絵師・彫師・摺師の合作で作られる木版画をさすようです。
同じ絵を大量に生産することができるのが強みで、庶民にも広く愛される一方、
飽きたらすぐ捨てられてしまうという消耗品でもありました。
日本が鎖国していた頃、オランダ経由で輸出された漆器や陶磁器の包装紙として使われたのが海外で評判となり、美術品として評価されるようになったという話もあるくらいですし、
今で言うなら週刊誌くらいの感覚でしょうか。

これに対して、「肉筆浮世絵」というジャンルがあります。
こちらは絵師が制作する一点もので、大量生産はしません。
高価な絵の具を贅沢に使った色彩の美しさや、
版画では伝わりにくい絵師の筆づかい・細やかな表現が見られるのも特徴です。
もともと高価な美術品として大切にされたことから、木版の浮世絵が国外に流出した際も、比較的日本国内に逗まるものが多かったそうです。

2020年1月の特別展 肉筆浮世絵名品展 は2月9日まで  表具にも注目

太田記念美術館では1万点以上の木版浮世絵の他に500点以上の肉筆浮世絵を所蔵しており、
2020年1月の特別展では肉筆浮世絵の名品を集めた
「開館40周年記念 太田記念美術館所蔵 肉筆浮世絵名品展 ―歌麿・北斎・応為」
を開催しています(2月9日まで!)。
絵そのものの美しさも勿論ですが、
表具(掛け軸や巻物に仕立てるときに保護を兼ねた装飾として貼られた布や紙)も
見ごたえのあるものでした。
図録やウェブにはなかなか収録されない部分ですが、
掛け軸などは表具部分も含めた総合芸術と言われることもあるほど。
花見の絵には図案化した花の刺繍がある布を合わせたり、
美しい女性の絵に粋な縞模様を合わせたりと、
元の所有者のセンスが垣間見える部分でもあります。
肉筆浮世絵を見る機会があったら(浮世絵に限らず日本画を見るときには!)、
ぜひ表具にも注目してみてください。

年間パスポートの申し込み期間は年度末のみ!

太田記念美術館では年間パスポートを取り扱っています。
年会費7,000円で、

  • 展覧会期中、何度でも無料で入館可能
  • ミュージアムグッズの一部商品を割引価格で購入可能(地下店舗は対象外)
  • 一部の有料講座等を割引料金で受講可能
  • 展示・催事などの案内を送付
  • 太田記念美術館の展覧会で使える招待券(1年間有効)を5枚贈呈
  • 千葉市美術館に割引料金で入館可能(他の割引との併用不可)

といった特典があり、展覧会すべてに足を運ぶなら大分お得な内容になっています。

ただし注意点がありまして、太田記念美術館の年間パスポートは
有効期間が4月1日から翌3月31日までとなっています。
また申込期間も3月の初めから3週間程度と短く、
この時期を逃すと次の年まで待たなければならなくなりません。
年間パスポートを希望する方は、
2月から3月にかけてまめにホームページをチェックするとよいでしょう。

申込方法
会員規約を確認した後、美術館の受付で申込書に年会費を添えて申し込むか、
必要事項を記入した申込書・年会費を現金書留にて郵送。
会員規約と申込書はホームページから取得できます。
(申込受付が終了すると表示されなくなります)

まとめ

立地も含めて非常に個性の強いところです。
展示品が素晴らしく、展示室にも一見の価値あり。
浮世絵に興味のある方なら、一度は行ってみるべき美術館ではないでしょうか。