本物の《ひまわり》が見られるSOMPO美術館…それだけじゃない! 開館記念展は「珠玉のコレクション」「秘蔵の東郷青児」の2部構成

「東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館」あらため
「SOMPO美術館」のリニューアルオープンは、
新型コロナウイルス感染拡大防止のために
2020年5月28日から7月10日に延期となりました。
SOMPO美術館が誇るコレクションの名品を取りそろえた開館記念展は、
美術館の象徴であるゴッホの《ひまわり》をはじめとする欧米の絵画、
日本画壇からは東山魁夷・平山郁夫などが登場する「珠玉のコレクション」です。
安田火災の時代からつながりのある東郷青児の作品・資料、
さらに関連する作家の作品もあわせて紹介する「秘蔵の東郷青児」は中止となりました。

開館記念展
珠玉のコレクション-いのちの輝き・つくる喜び(SOMPO美術館)

「Ⅱ 秘蔵の東郷青児-多才な画家の創作活動に迫る」は中止

東京都新宿区西新宿1-26-1

7月10日(金)~9月4日(金)

月曜休館 (祝日・振替休日の場合は開館)

10時~18時
※入場は閉館の30分前まで

一般 1,000円(800円)
大学生 700(600円)
高校生以下 無料
※( )内は20名以上の団体および前売り料金
※障がい者手帳・療育手帳・精神障がい者保健福祉手帳の提示で本人と介助者1名無料
※被爆者健康手帳の提示で本人のみ無料

チケットは日時指定予約制を導入

  • webチケット
    イープラス・電子チケット「スマチケ」
    ローソンチケット TEL:0570-000-407(オペレーター対応)
    チケットぴあ TEL:00570-02-9999
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    コンビニエンスストア(ファミリーマート・ローソン・ミニストップ・セブン-イレブン)
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公式ホームページ


長すぎる社名と、名前が長すぎる美術館のリニューアル

リニューアルオープンするSOMPO美術館、リニューアル以前の名前は
「東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館」といいました。
ご存知の方は多いでしょうが、そらで言えない方もまた多いと思います。
(わたしは「新宿にある東郷青児の~」呼んでいました)

この美術館にとって、名称変更は初めてのことではありません。
経営母体である保険会社が倒産や合併によって名称変更をするたびに
(金融関係にはよくあることです)美術館の名前も変化してきました。
1976年「東郷青児美術館」として発足し、
1987年「安田火災東郷青児美術館」に、
2002年「損保ジャパン東郷青児美術館」となって、
2014年「東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館」になりました。

「損害保険ジャパン日本興亜株式会社」という
長すぎる社名(と一部で話題になった)を短くするために、
2020年4月、会社の商号を「損害保険ジャパン株式会社」(略称「損保ジャパン」)
に変更し、それにともなって美術館運営団体は「公益財団法人SOMPO美術財団」、
美術館は「SOMPO美術館」に名称変更されたというわけです。


開館記念展ではSOMPO美術館のコレクションを公開。
《ひまわり》も新しいケースでお披露目

SOMPO美術館のコレクションといえば、
ゴッホの《ひまわり》(花瓶に入った《ひまわり》7作品のうち5番目)が有名です。
安田火災(当時)が創立100周年事業の一環として1987年に購入し、
以来「アジア唯一の《ひまわり》」として美術館を象徴する存在になっています。
現在の価格で約53億円(保険料・手数料込みで58億円)という金額でも
(賛成反対が入り乱れつつ)話題になりました。
その後、贋作説疑惑が持ち上がったりもしましたが、
アムステルダムのファン・ゴッホ美術館の学芸員・修復技官による調査により
間違いなく本物であると証明されています。

《ひまわり》は新しい美術館でも低反射・無色の透明度が高いガラスのケースで
より美しい姿を見せてくれますが、
この美術館の名品はそれだけではありません。
フランスの印象派およびポスト印象派の作品や、近代の日本画壇の作品、
アメリカの素朴派画家グランマ・モーゼスの作品など、さまざまな作品が所蔵されており、
今回の開館記念展ではその中でも特に人気の高い優品が大集合するようです。

フランス近代絵画と日本画壇の名品が揃う「珠玉のコレクション」(7月10日から)

今回の展覧会には
印象派の巨匠ピエール=オーギュスト・ルノワール(1841-1919)、
ポスト印象派を代表するひとりであるポール・ゴーギャン(1848-1903)、
印象派から出発して独自の画風を追求した
「近代絵画の父」ポール・セザンヌ(1839-1906)、
エコール・ド・パリの画家モーリス・ユトリロ(1883-1955)など
そうそうたる顔ぶれが揃っています。

見どころは、まず日本での人気の高いルノワールの作品のうち
《浴女》(1892-93頃)と《帽子の娘》(1910)が
洗浄作業をおこなったことでより本来に近く美しい姿になったこと。
ルノワールが画業の後半で描いた豊満な女性像は、
表面に塗られていた古いニスを取り除かれ
明るい色彩やタッチが確認できるようになりました。

大正・昭和の京都画壇で活躍した山口華陽の《葉桜》(1921)は、
およそ10年ぶりに公開されます。
枝垂れ桜の木を画面いっぱいに描いた四曲半双の屏風絵で、
(「四曲半双」は4枚に折りたためる屏風1つ。対になるものがない)
青々とした葉を茂らせた姿を描いているところが
桜の絵としては珍しいかもしれません。
経年による傷みや汚れが目立っていたため、
このたび表面を洗浄して屏風の木枠も新調する全面的な修復を施しての公開です。
修復の過程もあわせて紹介されるそうなので、
以前と比べてどれだけ綺麗になったのか自分の目で確認することができますね。

東郷青児との交流を振りかえる「秘蔵の東郷青児」 (開催中止)

以前の名前に「東郷青児記念」の名前が入っているように、
SOMPO美術館と東郷青児(1897-1978)の間には強いつながりがありました。
東郷は、安田火災美術財団(当時)の美術館設立に当たって
自身の作品を約200点、国内外の作家による作品を約250点寄贈しています。
このコレクションをもとにして、美術館は一般公開されるようになりました。
東郷が亡くなった1978年、遺族によって約150点の東郷作品が寄贈されています。
現在のSOMPO美術館では、油彩・素描・版画・彫刻・タピストリーなど
初期から晩年までの作品約240点のほかに、東郷に関する資料なども収蔵されています。

またSOMPO美術館の新しいロゴマークも、
東郷の《超現実派の散歩》(1929)をモチーフにしたものです。

こちらの見どころはまず、東郷青児独特の女性像たちの大規模展示。
柔らかい色調と曲線で構成された「青児美人」の代表作品が一堂に会するのは、
生誕120年を記念した2017年の「生誕120年 東郷青児展」以来だそうです。

また東郷は、東京都自由が丘の「モンブラン」など洋菓子の包装紙でも知られるように
雑貨のデザイン・保険案内のパンフレット・本の装丁や表紙・挿絵など
幅広い分野で活動を行っており、
この展覧会では本や雑誌など印刷物の仕事も紹介されます。

そして、縦2mを超える油絵の大作《リオ・デ・ジャネイロ》は、
貴重な下絵や、同寸の下絵を転写したキャンバスを並べて、
変更や修正が加えられて完成するまでの制作過程を含めた展示がおこなわれる予定です。

(残念ながら「秘蔵の東郷青児」は開催中止になりました)


リニューアルオープンにあたって

SOMPO美術館では当面のあいだ、
スタッフの検温・消毒・マスク及び手袋の着用、定期的な換気と消毒、
エレベーターの人数制限、コインロッカー・授乳室などの利用停止などの対策を実施します。
また入場者に対しては

  • マスク着用
  • 手指の消毒
  • 入館時の検温(37.5度以上の発熱がある場合入場を禁止)
  • ソーシャルディスタンシング
  • 支払時の交通系ICカード・クレジットカードの利用

などの協力を求めるようです。

2020年5月28日(木)からオープンの予定だったSOMPO美術館は
5月11日に「当面の間」開幕を延期すると発表し、休館が続いていました。

立地の良さなどの理由もあって、再開後も
美術館・利用者双方の心配りが必要になるでしょうが、
新たな美術館と珠玉のコレクションに会いに行くのが楽しみです。