日曜美術館「写真家ソール・ライター いつもの毎日でみつけた宝物」

2020年2月9日の日曜美術館は、「写真家ソール・ライター いつもの毎日でみつけた宝物」でした。
ファッション・フォトの世界で成功をおさめながら表舞台から姿を消し、
「日常にひそむ美」を撮り続けたソール・ライターの写真は、
たまたま出会った風景を写したようでありながら優れた技術や細やかな計算を感じさせます。
(2021年2月28日にアンコール放送)

番組情報

放送日時 2月 9日(日) 午前9時~9時45分
再放送  2月16日(日) 午後8時~8時45分
放送局 NHK(Eテレ)
司会 小野正嗣(作家) 柴田祐規子(NHKアナウンサー)

2020年2月9日の日曜美術館

「写真家ソール・ライター いつもの毎日でみつけた宝物」

ニューヨークの街角で、誰に見せるでもなく“日常にひそむ美”を撮り続けた写真家ソール・ライター(1923-2013)。今、若い世代を中心に共感を集める実像に迫る。

「私は無視されることに人生を費やした。それでいつも幸せだった」。元々ソール・ライターは、1950年代からファッション写真の最前線で活躍した写真家。しかし80年代、突如スタジオを閉鎖、表舞台から姿を消す。再び名が知られたのは、四半世紀が過ぎた80代。人知れず撮りためてきた路上スナップが出版され世界中で人気となった。残された言葉、関係者の証言を手掛かりに、なぜその写真が時代を超えて心を打つのか探る。

日曜美術館ホームページより

出演
 かくたみほ (写真家)
 柴田元幸 (翻訳家/東京大学名誉教授)
 マーギット・アーブ (ソール・ライター財団ディレクター)

ゲスト
 須藤蓮 (俳優)
 飯沢耕太郎 (写真評論家)

ソール・ライターの作る風景

写真家のソール・ライター(1923-2013)は
一度ファッション写真で成功をおさめた人です。
ところが58歳にして突然業界から姿を消し、
ドイツのシュタイデル社から発行されたカラー写真集『Early Color』が評判になって
世界デビュー(かつ再デビュー)をはたしたのは
なんと2006年、83歳の時でした。
この間の生活は苦しかったそうですが
(友人の援助がなければ電気代も払えないほど)、
本人は商業写真に嫌気がさして
世間に注目されたくないと本気で思っていたみたいです。

世間から見れば「行方不明」だった時期に撮りためた作品は、
ごく普通の街角の風景を独特の視点と色彩感覚で切り取ったもの。
たまたま近所で見かけたものを写真に収めただけのように見えますが、
大抵の人は見逃してしまうような「絵」が成立した瞬間を見つけて写す手腕は
もともと画家志望で毎日1枚の絵を描き続けたライターの
審美眼の確かさや技術の高さを物語っているかのようです。

解説によると、ライターの写真にはいくつか特徴があります。

  • ガラス ガラスや鏡の写り込みを利用して奥行きのある画面を演出する
  • ポイントカラー 鮮やかな色を取り入れて注目を集めるポイントを作る
  • 1/3構図 3つに分割した画面のすみに被写体を集める

もちろんソール・ライターの作品すべてがこれに当てはまるわけではありませんが、
このポイントを押さえることで「ソールライター風」に近づくようです。

また、ライター好みのモチーフとして「傘」「雨粒」「水滴」「雪」が挙げられています。
景色全体がなんとなくトーンダウンしてみえる雨の日、
積もった雪で白・グレーが大きな割合を占める背景、
窓ガラスについた水滴、一点だけ鮮やかな傘の色…
と想像してみると、これらは上に挙げた
「ガラス」「ポイントカラー」「1/3構図」に映える被写体のように思えますね。

ただそこにある風景を撮ったように見えるライターの作品ですが
じつは撮影者の細かい計算や気くばりで成り立っているのかもしれません。
あくまでもさり気なく日常の中の非日常を差し出してくるソール・ライターは
これからも世界中のファンを魅了し続けることでしょう。
(なにしろ、撮りためた作品の「発掘」はいまだ終わっていないそうですから)

「永遠のソール・ライター」展(美術館「えき」KYOTO)

日本初の回顧展「ニューヨークが生んだ伝説 写真家ソール・ライター展」は
東京都渋谷区のBunkamuraで2017年の4月29日から6月25日まで開催されました。

同じくBunkamuraで2020年の1月9日から開催されたこの展覧会は、
新型コロナウイルス感染拡大防止のため会期の途中で一度中止され、
同年7月22日から9月28日までアンコール開催されました。

本来は会期終了後、JR京都伊勢丹内にある「美術館『えき』KYOTO」に巡回し、
2020年の4月11日から5月10日まで公開される予定だったのですが、
作品輸送等の都合から京都での展覧会は2021年2月に延期されることになりました。

モノクロ・カラーの代表的な作品、未発表作品、アトリエに残されていた作品資料など、
日本初公開の作品が多数公開されます。

開催概要

美術館「えき」KYOTO(京都駅ビル内 JR京都伊勢丹7階隣接)

2021年2月13日(土)〜3月28日(日)
10時~19時30分 ※入場は閉館の30分前まで

一般 1,000円
大学・高校生 800円
中学・小学生 600円
※「障害者手帳」の提示で本人と同伴者1名まで当日料金より各200円割引

公式ホームページ

「永遠のソール・ライター」展開催記念
映画『写真家ソール・ライター 急がない人生で見つけた13のこと』

番組内でも紹介された、晩年のソール・ライターに取材したドキュメント映画。
日本でも2015年に公開されています。
この展覧会に合わせて、東京ではBunkamuraル・シネマ(2020年2月7日~2月13日)、
京都では京都シネマ(2021年3月5日~11日)で上映となりました。

映画公式サイト(2015) http://saulleiter-movie.com/