東京都の銀座では、日常の中に存在するデザインを紹介する
DESIGN MUSEUM BOX展が開催中です。
番組では会場の小野さんと柴田さん、
そして各地で「デザインの宝物」をたずねる5人のクリエイターの様子を紹介しました。
2021年4月18日の日曜美術館
「見つけた!デザインの宝物」
放送日時 4月18日(日) 午前9時~9時45分
再放送 4月25日(日) 午後8時~8時45分
放送局 NHK(Eテレ)
司会 小野正嗣(作家、早稲田大学教授) 柴田祐規子(NHKアナウンサー)
日本各地には「デザインの眼」で見ると “すごい宝物” が秘蔵されている。気鋭のクリエーター5人が全国5か所の博物館や資料館の所蔵品をリサーチ。デザインとは近現代のものばかりではなく縄文時代にはすでに存在していたこと、“人間が最初に出会うデザイン” は玩具であること、祭祀(さいし)にたずさわる女性の装束にほどこされた “悪霊から身を守るためのデザイン” などデザインの概念を広げる “宝物” と背景にある物語を紹介(日曜美術館ホームページより)
出演
辻川幸一郎 (映像作家)
田川欣哉 (デザインエンジニア)
水口哲也 (エクスペリエンスアーキテクト)
田根剛 (建築家)
森永邦彦 (ファッションデザイナー)
井上重義 (日本玩具博物館館長)
尾﨑織女 (日本玩具博物館学芸員)
松本 恵 (イノベーションロード館長)
三澤 遥 (デザイナー)
柴田文江 (プロダクトデザイナー)
高田和徳 (御所野縄文博物館館長)
町健次郎 (瀬戸内町立図書館・郷土館学芸員)
DESIGN MUSEUM BOX展の会場から
会場内には大きな箱が並び、その中に「デザインの宝物」たちが収められています。
小野さんが「箱の置き方も素敵じゃないですか」と言うように、
箱自体も何かのオブジェのように見えました。
「DESIGN MUSEUM BOX展」Ginza Sony Park
東京都中央区銀座5-3-1
(東京メトロ丸の内線・銀座線・日比谷線「銀座駅」B9番出口直結)
2021年4月10日(土)~5月9日(日)
11時~19時
会期中無休
入場無料
辻川幸一郎×さまざまなコマ
辻川さんが訪れたのは、姫路の日本玩具博物館。
学芸員の尾﨑織女さんによると、
おもちゃという言葉の語源は「持ち遊び」。
これが「もちゃそび」「おもちゃそび」と発展して
「おもちゃ」という言葉が生まれたんだそうです。
コーネリアス「Mellow Yellow Feel」(2017)など、
手遊びをテーマにした映像を発表している辻川さんは、
ここに来たことで「おもちゃ」と「手遊び」が繋がったといいます。
約9万点にも昇るという日本・世界の玩具コレクションの中から
辻川さんが選んだのは、回して遊ぶコマでした。
辻川さんのお父さんは、
丸い本体に軸をつけた「逆立ちゴマ」を売っていたことがあり、
辻川さん自身も何千回も回した経験から、
触るだけで軸の太さや長さなど、ちょっとした違いが判るんだとか。
3歳児の手の平から型どりしたパペットの「てっちゃん」と
さまざまなコマが登場するアニメーション「てっちゃんとコマ」(2021)は、
会場内でも見ることができます。
日本玩具博物館
兵庫県姫路市香寺町中仁野671-3
10時~17時
水曜日・年末年始休館
一般 600円
高校・大学生 400円
子ども(4歳以上) 200円
田川欣哉×柳宗理のデザインプロセス
カトラリーを例に
小野さんに「カレーが食べたくなっちゃった」と言わせたのは、
スプーン、フォーク、ナイフなどカトラリーの群。
工業デザインの巨匠・柳宗理(1915-2011)が1974年に世に出したもので、
すでに50年近く使い続けられているロングセラーです。
「100年後もたぶん売られてると思うんですよ、これ」
「こんなに長い期間使われ続けるものを自分が作れるんだろうか」
と語る田川さんは、このカトラリーたちが
どういったプロセスで作られたのかに注目しました。
たとえばスプーンのデザインが完成するまでには、
まず紙で模型を作り、次に発泡スチロールの立体的な模型を作り、
さらに木の模型を作って実際に使い心地を試し、
ようやく金属の試作品に辿り着きます。
柳のデザインは、何度も試作して試用することで完成するもののようです。
柳自身も、本当のデザインとは
「シンプルで何もない」「これ以上いじくることはできない」ものだと語っています。
(1998年放送のNHK「土曜美の朝」現代の “用の美” を求めて)
使い手にとって必要な機能を過不足なく提供するデザインは、
たしかに100年後も使い続けられることでしょう。
柳宗理記念デザイン研究所(金沢美術工芸大学附置施設)
石川県金沢市尾張町2丁目12番1号
※金沢美術工芸大学(小立野キャンパス)とは別の場所にあります
9時30分~17時
月曜休館 (祝日のときは開館)
入所無料
水口哲也×トランスアコースティックピアノ
匠とテクノロジーの出会い
水口さんは、ヤマハ株式会社の企業ミュージアム
「イノベーションロード」を訪れました。
ここにはシンセサイザーなど、音楽の歴史に残る貴重な資料が揃っています。
今回ピックアップされたのは、その新しい一頁になるかも知れない
「トランスアコースティックピアノ」。
(箱に入らなかったのか、会場では直置きされていました)
一見普通のアップライトピアノ(YAMAHA の文字もあります)ですが、
内側にピアノの構造に加えて「トランスディフューザー」という
デジタルの音信号を振動(音)に変える装置が入っているところが特徴です。
普通のアップライトピアノは、
鍵盤とつながったハンマーが内部の金属弦を叩き、
その振動が響板(背面の板)に伝わり、
響板が振動することで豊かな音を響かせる仕組みです。
(つまり、わたしたちの思う「ピアノの音」は響板で増幅された金属弦の音なのです)
トランスアコースティックピアノの場合、
普通のピアノとして音を出すこともできますが、
トランスディフューザーを通して
デジタル音源(たとえばスマホに入っている曲)を振動に変換し、
それをピアノの響板で増幅する仕組みです。
弾ける人以外に無用の長物だったピアノを、
木製スピーカーとして家族で楽しめるようになる
画期的な試みと言えるでしょう。
もちろん普通のピアノとしても、
またデジタル音源とピアノの音を同時に響かせることもできますので、
人によっては憧れのアーティストと合奏したりする楽しみ方もできるかもしれません。
イノベーションロード
静岡県浜松市中区中沢町10-1(ヤマハ本社内)
9時30分~17時 (見学の受付は16時まで)
日・月・祝日(年末年始・夏季・GWなどの休業日、メンテナンス実施日等)休業
入館無料
完全予約制
※20名以上の団体の予約は、見学希望日の3か月前から2週間前まで受付
田根剛×縄文のムラのデザイン
田根剛さんが訪れた御所野遺跡(縄文時代中期後半の集落跡)は、
5000~4200年前に人々が生活を営んでいた場所。
現在は、建物の後から縄文の人々の暮らしを復元展示する試みが行われています。
実際に作ってみてわかることもあるようで、
たとえば遺構にあわせて再現した土屋根の住居は
まず穴を掘って壁と床を作り、その時にでた土を盛って屋根を作るのですが、
途中で土が足なくなったため、頂上には樹皮をかぶせることになりました。
この部分が空気の通り道になって、換気や煙出しの役に立つそうです。
縄文の人が最初からそのつもりで設計したのか、偶然だったのかは分かりませんが、
作られた後である種の「デザイン」として共有されたことは想像できます。
「必要」であったり「間に合わせ」であったりと、
さまざまな要素が合わさって一つの形を作っていく様子は、
小野さんが「めっちゃ面白い」という巨大な図にも表れていました。
番組内で注目された「火」「土」「魂」、
ほかにも「環」「定住」などの要素が繋がりあい、広がりを見せながら
最終的に「縄文のムラのデザイン」として集約していく様子は、
田根さんの頭の中をのぞいているようです。
人が集まって同じルールや文化を共有しながら生活する共同体というものは、
ある意味でひとつのデザインなのかもしれません。
御所野縄文博物館
岩手県二戸郡一戸町岩舘字御所野2(御所野縄文公園内)
9時~17時 ※入場は閉館の30分前まで
月曜・祝日の翌日は休館
一般 300円
大学生 200円
小学生・中学生・高校生(18歳以下) 入館無料
森永邦彦×ノロの装束 “ハブラギン”
ファッションデザイナーである森永さんの原点は、
使い道がないような小さな端切れをパッチワークでつないだジャケットだったそうです。
(会場内で見ることができます)
パッチワークの作品を発表し続けている森永さんが選んだのは、
奄美の集落で祭祀を司った「祝女(ノロ)」の衣装でした。
特に、パッチワークの「ハブラギン」には強く惹かれるものがあったようです。
見た目も素材もさまざまな布を繋ぎ合わせたハブラギンを見ると、
三角形のパーツの組み合わせが目立ちます。
奄美では三角の形は「ハベラ」と呼ばれ、
蝶や蛾(霊魂の象徴)を意味する言葉でもあるそうです。
「ハベラがとまっているようにもみえるし、先祖代々の色々な方に守ってもらっているような感覚にもなるんでしょうね」
と感じた森永さんは、
ハブラギンに込められた精神性を取り入れて
「人知を超えた存在を宿す服」をデザインしました。
20年来コンビを組んでいるパッチワーク職人の真木大輔さんとも協力して作り上げた
《三角の服》(2021)は、全体の形も三角形をしていました。
(トルソーに着せるとコートらしい形になります)
一部のパーツは太陽の光が当たると色が変わり、不思議な表情を作ります。
瀬戸内町立図書館・郷土館
鹿児島県大島郡瀬戸内町古仁屋1283-17
火~土曜日 午前9時~18時
日曜・祝日 午前9時~17時
月曜休館
宇検村生涯学習センター元気の出る舘
鹿児島県大島郡宇検村大字湯湾2937-83
8時30分~22時 (図書室は17時まで)
祝日、年末年始は休館
公式サイト