日曜美術館「異端児、駆け抜ける!岸田劉生」

番組情報

放送日時 2月2日(日) 午前9時~9時45分
再放送  2月9日(日) 午後8時~8時45分)
放送局 NHK(Eテレ)
司会 小野正嗣(作家) 柴田祐規子(NHKアナウンサー)

2020年2月2日の日曜美術館

「異端児、駆け抜ける!岸田劉生」

フランスの印象派に憧れた大正時代の画壇で、ひとりデューラー風の肖像画を描き続けた異端児がいた。岸田劉生。現代画家の会田誠さんが<意識高い系>画家・劉生を語る。

日曜美術館ホームページより

ゲスト
 会田誠 (現代美術家)
 田中晴子 (東京ステーションギャラリー 学芸室長)

出演
 山内崇嗣 (アーティスト)
 土師広 (修復家)
 都築千重子 (東京国立近代美術館 主任研究員)
 塩谷亮 (画家)

麗子像だけじゃなかった「何かがヘン」な画家・岸田劉生

わたしにとって岸田劉生とは「麗子像」というコケシのような女の子を描いた人でした。
おかっぱ頭に切れ長の目をした女の子の姿は美術の教科書でもおなじみで、
たぶん大抵の人は同じような認識ではないかと思います。

もちろん岸田劉生の作品は「麗子像」だけではありません。
明治半ばの1891年に東京銀座で生まれた劉生は、
青年時代に黒田清輝の画塾に入門。
また雑誌『白樺』でゴッホの絵に出会い衝撃を受けました。
一時は後期印象派風の作品を発表しましたが、
のちに西洋古典主義(特にデューラー)の影響を受け
細密な描写と写実表現によって独自の画風を確立します。
この頃から自画像や身近な人をモデルにした肖像画を描いていましたが、
多くの風景画も残しています。
また1917年に結核療養のため(のちに誤診と判明)神奈川県鵠沼に移転した際は
長時間の外出を禁じられて静物画に取り組みました。
娘の麗子さんをモデルにした絵を描き始めたのは、1918年以降のことです。

ところで劉生の作品は「何かがヘン」なものが多いです。
たとえば重要文化財の「道路と土手と塀(切通之写生)」(1915)は
写実と虚構を混ぜ込んで此方に迫ってくるような迫力のある坂道を表現しています。
(解説の山内崇嗣さんはデフォルメされた麗子像らしき柄のTシャツをお召しでした)

また2019年に修復された静物画「壺の上に林檎が載って在る」(1916)。
修復後、壺のハイライトは、他の部分と異なるタッチで描かれていることがわかりました。

そして麗子像の中でもとくに有名な、重要文化財「麗子微笑」(1921)。
3年前に描かれた写実的な「麗子肖像(麗子五歳之像)」(1918)と比べると、
素人が見てもはっきりとわかるほど奇妙な形をしています。
塩谷亮さんは同じ年頃のモデルを使いこの作品を描きなおしてみることで
画家があえてモデルに忠実ではない表現を突き詰めていったことを指摘しています。

画壇がフランス印象派に追従していた時期にあえて別の画風を追求し、
特定の技法に縛られることなく「何のために描くのか」「いかに描くのか」を
考え続けた岸田劉生のことを、ゲストの会田誠さんは「意識が高い」と言います。
高い理想を持ち、その実践のために努力を惜しまなかった画家が
38歳で亡くなることなく描き続けていたらどのような作品を作ったのか。
麗子像などの作品を通じて「西洋と東洋の統合」から「東洋の美」に目覚め
1922年ごろからは独学で日本画の制作も手がけていた劉生のことですから、
おそらく誰も想像しなかった境地を見せてくれたことでしょう。

名古屋市美術館「没後90年記念 岸田劉生展」

重要文化財「麗子微笑」の展示期間は2月16日までです。

2020年1月8日(水)~3月1日(日)

名古屋市中区栄二丁目17番25号(芸術と科学の杜・白川公園内)

午前9時30分~午後5時、金曜日は午後8時まで ※入場は閉館の30分前まで

1,400円(1,200円) 高大生 900円(700円)
※()内は20名以上の割引料金
中学生以下 無料

障害のある方、難病患者の方 手帳の提示により本人と付添者2名まで当日料金の半額
名古屋市交通局発行の「ドニチエコきっぷ」「一日乗車券」で来館された方 100円割引
「名古屋市美術館常設展定期観覧券」の提示で団体料金が適用
※いずれも他の割引との併用不可

毎週月曜日休館(1月13日、2月24日は開館し、翌火曜日休館)

公式サイト http://www.art-museum.city.nagoya.jp/kishida-riusei

東京ステーションギャラリー(2019年8月31日~10月20日)
山口県立美術館(2019/11/2~12/22)
での展示は終了しています