恵比寿の東京都写真美術館「日本初期写真史 関東編 幕末明治を撮る」の解説動画をYouTubeで公開中

東京都写真美術館は新型コロナウイルス感染拡大防止のため開催中だった
「日本初期写真史 関東編 幕末明治を撮る」を休止しました。
この展覧会は現在一部の映像をYouTubeで公開しています(チャンネル名 TOPMUSEUM)。
同じく休止中の「写真とファッション 90年代以降の関係性を探る」もPR動画が公開中。
同館はこれまでもPR動画や写真家のインタビューなどを公開してきましたが
一度に8本の動画が公開されるのは初めてです。

動画の視聴はこちらから
TOPMUSEUM

「日本初期写真史 関東編」(2020年3月9日)

3月3日(火)~5月24日(日)
幕末から明治の日本(特に関東)における写真文化を紹介する展覧会です。
担当学芸員の三井圭司さんによる解説があります。

001(58秒) 展覧会の概要

展覧会の概要をざっと説明しています。
第1章
写真の発明から日本への流入・普及を技術にも焦点を当てながら公開する。
木箱にレンズをつけたような形をしたダゲレオタイプのカメラも展示されています。
第2章
早撮写真の技術で商業的に成功しのちに政治にも進出した江崎礼二や
土門拳の師匠に当る宮内幸太郎の名前が見えました。
第3章
幕末から明治の広い範囲にわたり
パノラマ写真・着彩写真などの関東を被写体にした写真を紹介するようです。

002(2分34秒) 撮影された日本人と日本 栄力丸漂流時の写真など

第1章です。
写真技術が日本に紹介されるより前に
日本人を被写体にした写真や日本で撮られた写真を紹介しています。
「日本人を撮影した最初の写真」は黒船来航(1853)以前の1851~52年に
ハーベイ・ロバート・マークスが撮影したもの。
江戸へ向かう途中で難破した栄力丸という船の乗組員が
アメリカのオークランド号に救助された時撮影されました。
展示されている写真は2019年10月の台風による水害にあった
川崎市民ミュージアムの収蔵品で、
奇跡的に難を逃れ完全な状態で残った貴重な資料なのだそうです。
「日本の地で撮影された最初の写真」は
黒船来航の際、ペリーとともに日本を訪れた
写真師エリファレット・ブラウン・ジュニアが撮影したものですが、
日本に残された写真以外は失われてしまったそうでこれもまた貴重な記録です。
この写真をもとにした絵画を収録した書籍
『ペリー提督日本遠征記』(フランシス・ホークス著 1856)と共に展示されていました。

003(2分19秒) 日本の写真 日本最古の写真家を決めた《横井小楠像》

写真の技術が日本に入ってきたころです。
日本最古の写真館はどこにあったのか、
また日本最古の写真家はどんな人物かを紹介しています。
こちらの解説によるとアメリカ人のオーリン・フリーマンという人物が
横浜居留地に開いた輸入雑貨商でポートレイト(肖像写真)の撮影を行ったのが
日本における最初の写真館だったそうです。
このフリーマンに写真技術を教わった鵜飼玉川という人物が日本最古の写真家で、
この人が撮影した《横井小楠像》(1861)は
撮影場所である福井松平藩江戸藩邸の『御用日記』に記録が残っており
この日付が決め手となって玉川が最古の写真家と認定されたとのことです。

004(2分6秒) 第2回遣欧使節団の姿 ナポレオン3世が見た甲冑の写真

1864年の2月から8月にかけてフランスに派遣された第2回遣欧使節団が持ち帰った写真が紹介されます。
フランスの肖像写真家ナダールが使節団を撮影し
(ナダールは第1回の文久遣欧使節団の写真も撮っています)
副使の河津祐邦は甲冑姿の写真も残っており
ナポレオン3世との謁見のときもの恰好で
(交渉自体は不首尾に終わったものの)大変喜ばれたというエピソードがあるとか。
パリの絵入り新聞「ル・モンド・イリュストレ」第370号には
甲冑を着た河津の写真ともうひとつの写真を1枚にまとめた絵が掲載されました。
(河津はもう片方の写真にも入っているので同じ絵の中に2人います)
当時の写真技術は高価だったため、
情報を伝える手段としては版画の方が一般的だったようです。



005(3分31秒) 関東各地の写真のはじまりと「横浜写真」の資料も

ここから第2章。
動画内で三井さんも言っているように、テキストのパネルがとても多いです。
こちらでは最初に写真が入ってきた横浜居留地のある神奈川をはじめ
東京印刷局がおかれた東京、埼玉、茨城、栃木、千葉といった各地域の
初期の写真館や著名な写真家について紹介しています。
またオリジナルの写真とともに
手彩色のカラー写真(通称「横浜写真」)に関する資料
たとえば使用された顔料(日本画に使う絵の具)や鶏卵紙(当時の印画紙)など
当時使われていた技術に関する資料が展示されているそうです。

006(4分23秒) ライムント・フォン・シュティルフリートによる盗撮写真

第3章で最初に紹介されるのは
オーストリア人のライムント・フォン・シュティルフリートが撮影した
《天皇陛下と御一行》(1871)。
この写真、無許可の盗撮でした。
当時明治天皇の姿はまだ外国に公開されておらず
諸国の関心が高まっていたところに目をつけたシュティルフリートが
天皇が行幸した横須賀製鉄所のドライドックに隠れて一行の姿を撮影。
撮影場所などをぼかすためにコラージュをほどこしたそうです。
この写真はその後原版が買い上げとなって広く公開されることは無かったため、
実物はほとんど残っていないとのことでした。

007(3分) 江戸―東京のパノラマ

解説動画の最後は、
パノラマ写真を中心に江戸―東京の風景写真を集めた展示室です。
当時江戸市中を見渡すことができた港区の愛宕山山頂から撮影した
フェリーチェ・ベアトの《愛宕山から見た江戸のパノラマ》(1863)、
建設途中だった駿河台ニコライ堂の足場から360度の方向を撮影した写真(1889)、
現在の丸ビルあたりから建設中の東京駅を撮影した
宮内幸太郎の《中央停車場建築》(1911)といった、
東京という町の変化が見て実感できるような写真が紹介されました。

001から007までを順に視聴すると展覧会の大まかな構成と内容が掴めます。
歴史的な価値はともかく見どころがどこなのか分かり難い(ような気がする)
近代の写真の魅力が伝わってくる解説動画でした。

「写真とファッション」(2020年3月9日)

「日本初期写真史 関東編」と同時に公開されました。
こちらは59秒の動画で、音声は入っていません。

無音の中で流れていく会場内の様子やファッションに関する写真・映像は
それ自体がお洒落な雰囲気です。

この展覧会では1990年代以降の写真とファッションの関係を
写真、映像およびファッション誌などの資料で展示するものだそうです。



東京都写真美術館

写真と映像に関する総合的な美術館です。

東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内

10時~18時(木・金曜は20時まで)
※入場は閉館の30分前まで

入場料は展覧会・上映によって異なる

毎週月曜日休館(祝日・振替休日の場合は開館し、翌平日に休館)

公式ホームページ