ニコニコ美術館 江戸東京博物館から京都市京セラ美術館まで…無観客展示を動画で解説

2020年2月下旬、新型コロナウィルスの感染拡大防止のため
多くの美術館や博物館が臨時休館・延期などの措置をとることになった中、
株式会社ドワンゴが「ニコニコ美術館」で
休館中の美術館・博物館から展示を中継する企画を立ち上げました。

【臨時休館される美術館・博物館さまへ】中止になった展覧会をネットで開催しませんか?費用はドワンゴが負担します【ニコニコ美術館】
2020年2月28日 (金) 12:00

という呼びかけをおこなったところ、なんと40件近い問い合わせがあったそうです。

ニコニコ動画とニコニコ美術館 プレミアム会員/パトロンなら期間終了後も視聴できる!

ドワンゴが運営する日本最大級の動画共有サービス「ニコニコ動画」。
ユーザーによる動画投稿のほかに運営のオリジナル動画も公開しており、
そのひとつが「ニコニコ美術館」(通称ニコ美)です。
この番組はニコニコ生放送(通称ニコ生。ライブ動画配信)で放送されているもので、
日本全国の美術館や博物館の展示会場を学芸員やその分野の専門家と歩きながら
紹介・解説する様子をライブ配信します。

タイムシフト機能(ニコニコ生放送の番組を放送終了後に視聴できる)の利用は
通常だとプレミアム会員(有料会員)のみですが、
期間中は一般会員(無料会員)も利用できます。
(以前の「ニコニコ美術館」も視聴できるようです)
ニコニコ美術館の解説常連である橋本麻里さんいわく
「パチンコのフィーバータイムみたいなもの」だとか。

プレミアム会員になると期間終了後も視聴できますので、
無料会員の方はこれを機会にプレミアムを検討してみてはいかがでしょうか。
ニコニコ動画プレミアム会員は月額550円
ニコニコ美術館のパトロン(チャンネル会員)は月額1,000円です。

ニコニコ美術館はこちらから



第1弾 江戸東京博物館「江戸ものづくり列伝-ニッポンの美は職人の技と心に宿る-」

2020年3月10日 19時~(1時間38分5秒)

出演
橋本麻里 (ライター・エディター、公益財団法人永青文庫副館長)
杉山哲司 (江戸東京博物館学芸員)

こちらの展覧会の目玉のひとつであるバルディコレクションの所蔵元が
いま大変なことになっているイタリア(ベニス東洋美術館)ということで、
会期が終わった後で返却する時の心配をしつつ…
まず出て来るのは裃姿の《バルディ伯爵肖像》(1889)でした。
わたしはこれを顔だけコラージュしたものだと理解していたのですが
この裃姿については写真が残っていて実際に着用した姿を描いたものだそうです。
(なお、となりの甲冑姿の絵は間違いなくコラージュだそうです)

「1万点爆買いした中にはスカもある(今回の展覧会に来ているものは名品です)」
「奥さんが夫の爆買いについて日記に愚痴を書いていた」
などの面白エピソードが出たと思えば
「水の都・ヴェネチアで保管されたため漆製品の状態が非常に良好」など
マメ知識が披露される、いろいろな意味で目が離せない時間でした。

ただし動画の性質上、どうしても伝えきれないものがあります。
たとえば、紙の上に漆を塗って額縁のように見せる
柴田是真のトリックアート《漆絵 花瓶梅図》(1881)は本物の木にしか見えず
小林礫斎の超細密工芸はカメラで拡大された画像だと小ささが伝わりにくい。
(たとえば大正~昭和頃の「六瓢提物」は大きい瓢箪が3cm、小さい瓢箪は3mm…)
こういったものは、やはり実物を肉眼でみなければわかりにくいようです。
再開した時は単眼鏡(オペラグラス可)持参で駆け付けなければ…と思わされました。


第2弾 三菱一号館美術館「画家が見たこども展」

2020年3月12日 19時~(1時間50分22秒)

出演
坂本美雨 (ミュージシャン)
高橋明也 (三菱一号館美術館館長)

三菱一号館美術館では19世紀末の前衛芸術家グループ「ナビ派」を重視しており
この展覧会もナビ派の作品が中心になっています。
しかし今回の特別アンケート「ナビ派について」では
ナビ派を「知らなかった」が5割を超える結果となりました。
芸術全般に造詣の深い坂本さんも最初「ナビ派って何ですか」と尋ねていましたが…
ナビ派は子どもと猫を「可愛いもの」として描いた最初の一団だそうで、
猫好きで有名な坂本さんとは通じるものがあったようです。

ボナールの《猫と子どもたち》(1909)に「(猫は)三か月くらいかな」とコメントし、
アルフレド・ミュラーの《猫と小さな少女》(1897)の猫と
坂本家の「サバ美ちゃん」の体つきを比べて痩せすぎを心配するなど、
愛猫家視点の鑑賞ポイントは要チェックです。
コメントに「サバ美ちゃん」が頻出する、
館長の愛猫「アカリちゃん」の写真(待ち受け画像)が出てくるなど
あぶなく「ニコ生」が「ネコ生」になるところでした。

もちろん猫以外にも、可愛かったり不気味だったりふてぶてしかったり…
メインヴィジュアルに採用されたゴッホの《マルセル・ルーランの肖像》(1888)のように
貫禄たっぷりだったりもする子どもたちの絵についても沢山語っています。
ヴュイヤールの《青いベッドにいる祖母と子ども》(1899)など
所蔵元の都合で映像が出せなかった作品もありますので、
美術館の再開をお楽しみに。


第3弾 東洋陶磁美術館「竹工芸名品展:ニューヨークのアビー・コレクション-メトロポリタン美術館所蔵」

2020年3月15日 19時~(2時間52分9秒)

出演
橋本麻里 (ライター・エディター、公益財団法人永青文庫副館長)
出川哲朗 (大阪市立東洋陶磁美術館館長)
宮川智美 (大阪会場担当学芸員)

展覧会の目玉はニューヨーク在住のアビー夫妻が集めた竹工芸コレクション。
所々に陶磁(東洋陶磁美術館所蔵)を取り合わせてありました。
コレクション始まりである現代の竹アートは
ザルや籠を作ってきた伝統技術で用途や実用性を意識しないアート作品を制作するもの。
戦後くらいから作られはじめ、欧米で評価されたそうです。
もちろんなじみ深い伝統的な竹細工も。

この展覧会は日本を巡回する里帰りツアーで
コレクションがメトロポリタン美術館に寄贈されたのを機会に開催されました。
大阪の前には大分・東京で展示され、会場ごとにまったく違う構成になっていたそうです。
美術館の入り口にある吹き抜けの空間には大阪会場限定の
巨大な竹のインスタレーション《GATE》が設置されています。
これは四代田辺竹雲斎(1973-)が大量の竹ひご(約1万本)をその場で編み上げたもので
制作動画はYouTubeで公開されています

後半およそ1時間は常設展の紹介。
展示品の凄いことは言うまでもありませんが、
360度から鑑賞できる回転台(免振機能つき)や
天窓から自然光を取り込んで本来の色合いを見ることができる自然採光展示室など
(残念ながら中継は撮影時間が夜だったので人工照明)
実際に体験してみたい見どころが沢山ありました。



第4弾 東京国立近代美術館「ピーター・ドイグ展」

2020年3月18日(水) 19時~(2時間38分57秒)

出演
桝田倫広  (東京国立近代美術館主任研究員)
蔵屋美香  (東京国立近代美術館企画課長)
五月女哲平  (アーティスト)

開催3日で臨時休館になってしまった、日本初のピーター・ドイグ(1959-)展です。
映画「13日の金曜日」に触発されたカヌーのモチーフや
一見明るい雰囲気でもちょっと不穏を匂わせるようなところがある画風。
解説でもたびたび不穏さや怖さに触れて
「暗い部屋でお布団に入りながら怖いホラー映画を見ているとき」
…なんて例えが出てきたりしました。

それに対して
展覧会の開催にあたって当初外国の美術館から代表作の貸し出しを渋られたとき
ドイグさんのお願いで「魔法のように」作品が揃ったこと、
ポスターなどのメインヴィジュアルに使われている
《ガストホーフ・ツァ・ムルデンタールシュペレ》(2000-02)にまつわる若き日の武勇伝、
作品が大きすぎてご本人も制作場所に困っていることなど
描いた人の人柄が伝わってくるようなお話がいい味を出しています。

ドイグ作品の大きさについては
今回展示された絵画作品32点の面積の総和を
100号絵画(長辺162cm。一般家庭に飾るのは厳しい大きさ)で割ると100点を超える
…というのが印象的でした。
なお会場で最大の《ポート・オブ・スペインの雨(ホワイトオーク)》(2015)は
タテ301cm×ヨコ352cmだそうです。


第5弾 さいたま市大宮盆栽美術館から1日限りの特別展「春の花もの盆栽展」

2020年3月20日(金) 14時~(2時間28分41秒)

出演
橋本麻里 (ライター・エディター、公益財団法人永青文庫副館長)
山田登美男 (大宮盆栽美術館盆栽管理官、清香園四代目園主)
石田留美子 (大宮盆栽美術館学芸員)

本当は普通の企画展が開催されるはずが臨時休館になってしまったので、
ニコニコ美術館限定1日限りの展覧会です。
盆栽は見ごろを展示期間にあわせるために1~2年がかりで調整するのだそうで、
すべての準備が水の泡になる瀬戸際だったようです。
ものが植物なので野外展示も紹介する都合上、お昼からの配信でした。

盆栽美術館(通称「盆美」)の入り口では二色咲きの木瓜(ぼけ)の盆栽がお出迎え。
樹齢は100年になるそうで、100年!? と驚いたのは最初の内だけでした。
次々に登場する樹齢150年、500年、800年、はては1000年の盆栽。
番組が終わるころには「昭和うまれ? 若造だな」と
人間を超越した時間間隔が身につきます…いや、本当に。
盆栽ですから決して大きくはないのです。(大きくても机の上に収まるサイズ)
野山に生えていれば大木になっていたかもしれない木を小さいまま長生きさせるためには
定期的な植え替えと根の手入れ、
さらに肥料・水・天候といった条件を揃えなければならないそうです。
常に誰かが手を入れながら受け継がれてきた時間を考えると
小さな木が途方もない存在に見えてきます。

この回、カメラさんはひとつの盆栽に対して正面からのほかにも
見上げてみたり、根本や花をアップにしてみたり、横に回り込んだりと大活躍でした。
盆栽は正面のやや下から見上げるようにして鑑賞するのが一番良いとのことですが、
画面を通してしか鑑賞できない視聴者には有難いことです。


第6弾 京都国立近代美術館「チェコ・デザイン 100年の旅」

2020年3月29日(日) 14時~(2時間48分16秒)

出演
阿部賢一 (チェコ文学者)
柴田勢津子 (株式会社イデッフ代表、本展 企画協力)
本橋仁 (京都国立近代美術館 特定研究員、建築史家)

岡崎市美術館(愛知県)・富山県美術館・世田谷美術館(東京都)と巡回し
現在は京都で開催中の展覧会です。
本当は立命館大学のヘレナ・チャプコヴァー先生も参加予定だったそうですが、
チェコから帰ってこられなくなってしまったので欠席だそうです。残念。

2005年にチェコで行われたデザイン展を日本のために再構成したものです。
1900年代から1990-現在にいたる100年ちょっとのデザインの変遷に
チェコの歴史を絡めながらたどる1-8章、
さらにチェコの玩具とチェコアニメの独立コーナーを加えた全10章の構成。
ヨーロッパ屈指の工業国であるチェコの物づくりの歴史、見ごたえがありました。

フランス絵画の影響から生まれたチェコ・キュビスムから徐々にドイツの影響が強くなり
国の消滅(保護領化)や戦争といった国の動きにあわせて
デザインもまた変化していく様子がよく分かります。
また日常の中にあるデザインということで、
時代が近づいてくると登場する「生活をテーマにした博物館」的な展示品も見どころ。

インパクトが強かったのは、
提供者の奥さんが実際に使っていた掃除機(ETA402ジュピター型)と
八百屋さんで蜜柑なんかを乗せていそうなプラスチックのカゴでした。
カゴの方はもともと伝統工芸品に金属製のバスケットがあり、
プラスチック素材が一般的になるにつれてプラスチックになった歴史があるそうです。
柴田さんいわく
「プラスチックがいつまで使われるか分からないので、
チェコのある時期のプラスチック製品はきちんと取っておいてほしい」
とのことでした。


第7弾 東洋文庫ミュージアム「大清帝国展」

2020年3月30日(月) 19時~(2時間23分11秒)

出演
橋本麻里 (ライター・エディター、公益財団法人永青文庫副館長)
石橋崇雄 (東洋文庫 研究員)
篠木由喜 (東洋文庫 学芸員)

世界五大東洋学研究図書館のひとつに数えられている東洋文庫です。
(残りの4館はイギリス・フランス・ロシア・アメリカにあります)
文庫(=図書館)なので展示されているのはほぼ本ですが、見ごたえは十分。
企画展のテーマである大清帝国は誰もが「ああ、辮髪の」「チャイナ服の」と
断片的に知ってはいても実は良く知らないことが多い国ではないでしょうか。

  • 清朝を建国した女真人は定住生活をしていた民族で、
    農耕のやり方を知っていたから遊牧民の元よりも長い期間漢人を統治することができた(これは世界史の教科書にも載っているそうですが…)。
  • 王朝の正当性を証明するために『明史』を編纂する際、
    領土がふえるのにあわせてリテイクを繰り返したら完成まで100年かかった。
  • 5つの民族を統治するために言語と文字を重視しており皇帝は全ての言語を話せた。
  • 北京語は清の時代に官吏の使う言語として整備された。
  • そして100年もすると満州語ネイティブがいなくなり、
    漢語を学ぶためだったテキストを満州語の学習に使うようになった。
  • 辮髪は各民族のユニフォームのようなもので、
    多民族への強要は敵味方を区別する踏み絵の役割もあった。
  • 中華民国成立後に辮髪を強要する制度はなくなったが、
    チャイナ服とともにあちこちの中華街などを中心に「漢人の風俗」として残った。

…などなど、初耳・目から鱗の連続です。

清朝は東洋文庫が設立された1924年以来力を入れてきた分野で、
今回の展示も研究員の方々が総力を挙げたものでした。
これまでの放送でも思ったことですが、中断されてしまったことが残念でなりません。



4月以降も継続が決定

3月30日ニコニコ美術館から発表がありました。

(前略)

現在も状況は続いており、
再開の目処がたっていない展示が数多くございます。
これをうけて、引き続きニコニコ美術館では、
休館中の美術館・博物館からの生中継を続けてまいります。

(中略)

一刻も早い状況の収束と開館を願いつつ、わたしたちにできることを実施していきたいと思います。

ニコニコ美術館スタッフ一同。

3月30日までの間に、問い合わせの数は50件を超えたとのことです。
ほぼ3日に1度のペースでの中継はないかもしれませんが、
これからもパソコンで休館中の美術館・博物館を訪れることができるようです。

(わたしはこの機会にニコニコ美術館のパトロンになりました)


【Bonsai Museum Tour with English subtitles】
大宮盆栽美術館を巡りながら英語を学べる再放送

2020年4月19日 14時~(2時間10分47秒)

新規の生中継もむずかしくなってきましたが、
こちらは3月20日(金)に生中継された
「『春の花もの盆栽展』をニコニコ美術館のために1日限定で特別展示」の解説に
英語字幕をつけた再放送です。
英英辞典にも載っているという “Bonsai” をはじめ、

  • Bonsai director (盆栽管理官)
  • pruning (剪定)
  • wiring (針金かけ)
  • tlansplanting (植え替え…repotting とも)
  • root swelling (根張り)
  • added grass (そえ草)

など、普通の英会話ではお目にかからないような単語が出てくるので
視聴者としても “I see” (そうなんですかー)と繰り返すしかありません。
字幕は会話にあわせてどんどん流れていきますので、
単語が気になる場合は一時停止を活用しましょう。
キャプションには「学芸員の解説に英語字幕をつけた再放送」とありますが、
解説と関係ない雑談にもちゃんと字幕がついていますのでご安心を。


【展覧会をつくるお仕事】
ピーター・ドイグ展の再放送を見ながら「企画する学芸員」と「作品の状態を確かめる保存・修復の専門家」と「記録に残す写真家」に質問しよう

2020年4月30日 17時~(5時間21分29秒)

出演(アフタートーク)
桝田 倫広  (東京国立近代美術館 主任研究員)
田口かおり  (保存修復学)
木奥 恵三  (写真家)

「休館中の東京国立近代美術館「ピーター・ドイグ展」から生中継」の再放送の後、
2時間38分ごろから生トークになりました。

5年も前からピーター・ドイグ展を企画していた研究員の桝田さん、
作品の状態を点検し問題があれば対応する
(専属介護係のような…)コンサバターの田口さん、
そして展覧会の会場写真を撮影した(普段は作品写真も撮っているとか)
写真家の木奥さんの3人による対談。
ただし、コロナウイルスの感染拡大防止のため全員リモート参加です。

木奥さん撮影の会場写真で特に印象深かったのが、
《ガストホーフ・ツァ・ムルデンタールシュペレ》の数メートル手前にベンチを置いた写真。
ベンチは普通に会場にあるものなのですが、
絵の力が強すぎて、ベンチを含む半径5メートルが
インスタレーションの一部のようになってしまい、
ベンチをどかしたヴァージョンも撮影されたそうです。
ベンチなしも写真も表示されましたが、
同じ作品、同じ構図でもベンチのあるなしで柄っと表情が変わるのが不思議です。

2017年頃、ドイグ氏とのミーティングで使った展示プランのスケッチや
アメリカでの積み込み現場の写真、作業用の道具など、
現場では普通かもしれない、一般客にはとても珍しい画像も披露されました。


第8弾 すみだ北斎美術館「大江戸歳事記」

2020年5月1日(金) 18時~(2時間33分42秒)

出演
橋本麻里 (ライター・エディター、公益財団法人永青文庫副館長)
竹村誠 (すみだ北斎美術館学芸員)

竹村さんはマスク着用、橋本さんはスタッフの方が持つiPadからリモート参加という
珍しい(時期に合った?)回でした。

まず紹介された常設展はいま一番必要かもしれない、
須佐之男命が厄をもたらす神を退治して「二度と悪さをしません」という証文を書かせる
《須佐之男命厄神退治之図(すさのおのみことやくじんたいじのず)》にはじまって、
北斎の60年以上の画業を勝川春章に弟子入りした「習作の時代」から
「宗理様式の時代」「読本挿絵の時代」「絵手本の時代」「錦絵の時代」を経て
「肉筆画の時代」まで、6つの時代に分けて紹介する展示でした。

なお常設展の展示品は、すべてレプリカなんだそうです。
浮世絵は大変光に弱く、一年間に展示できる期間が限られてしまうため、
代表作や人気作を長く展示するためにこの形をとっているのだとか。
「もともと木版の浮世絵そのものが複製ですからね」とは、橋本さんのコメントです。

50分頃からはじまる企画展のタイトルは「大江戸歳事記」
「さいじき」は、一般的には「歳時記」と表記します。
(大体の国語辞典ではこちらが載っているはずです)
しかし今回は、季節の風物の中でも特にイベント(年中行事)を描いた作品がメインのため
あえて「事」の字をあてているそうです。
放送があった5月の歳事は「端午の節句」「隅田川の川開き」「蛍狩り」。
これ以外にも正月から年の瀬まで、一年を通してその数は65。
現代も続く行事・見かけなくなった行事をすべて見て回る、充実した内容となりました。


第9弾 京都市京セラ美術館『開館記念展 京都の美術 250年の夢』

2020年5月17日(日) 18時~(4時間1分17秒)

出演
橋本麻里 (ライター・エディター、公益財団法人永青文庫副館長)
山田 諭 (京都市京セラ美術館学芸課長)
中谷至宏 (京都市京セラ美術館学芸係長)
後藤結美子 (京都市京セラ美術館学芸員)

2020年3月21日にリニューアルオープン予定だった
京都市京セラ美術館(元 京都市美術館)の開館記念展です。
今回紹介されたのは「第1部 江戸から明治へ:近代への飛躍」。
(開幕延期中~6月14日)
3部構成で、1年かけて京都の美術250年の歴史を展示する予定です。
2020年はオリンピックイヤー(だった)ということで
全国を巡回するような大きな展覧会が企画されていなかったからこその
大がかりな企画でした。

また開館記念展のご祝儀として、普段なら貸してもらえないような名品も
展示することができたため、特別展の会場では基本的にコレクションを使わず
全国から集められた美術品を展示しています。
現在全国で引っ張りだこの若冲はさすがに都合がつかなかったそうですが、
それ以外は美術も工芸も「ベストオブベスト」の作品が揃っているそうです。
たとえば、ニコニコ美術館のアイキャッチにも使われている
与謝蕪村の重要文化財《鳶・鴉図》(18世紀)は北村美術館所蔵(京都)。
橋本さんがお勤めの永青文庫(東京)からも、
上村松園の《月影》(1908)が貸し出されました。

美術館の施設自体が大々的に改修されているとあって、
最初は外側から建物を案内し、24分くらいから特別展(第1部前期)を鑑賞、
3時間7分頃から1時間ほどかけて常設のコレクション展という充実の内容でした。


緊急事態宣言から解除まで、全11回(うち再放送2回)の超ハイペース配信!

通常の「ニコニコ美術館」は月に1回くらい配信されていましたが、
3月10日にはじまった「休館中の〇〇美術館から~」は
生中継は9回、再放送2回と、平均すれば週1~2回のペースでした。

2020年5月25日の新型コロナウイルス感染症緊急事態解除宣言をうけ、
博物館や美術館も徐々に再開しはじめた為、ニコニコ美術館も通常に戻るはずですが、
6月に入ってからも

  • 6月10日
    愛知県陶磁美術館で古今東西の陶磁器と「異才 辻晉堂の陶彫」展を巡ろう
  • 6月11日
    再開した江戸東京博物館 特別展「奇才―江戸絵画の冒険者たち―」から生中継
  • 6月20日
    東大寺の仏教美術と伽藍を巡る生放送~国宝・盧舎那仏像(奈良の大仏)から戒壇堂四天王像まで~

と、ハイペースの配信が続いています。
今後の展開も気になりますね。