国立西洋美術館が常設展と「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」解説動画を無料公開 モネの《睡蓮》などおなじみの名品も

臨時休館中の国立西洋美術館では外出自粛中でも楽しめるプログラムとして、
YouTubeで常設展のギャラリー・トークを公開しています。
開催延期中の「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」の動画と合わせて視聴すれば
ちょっとした西洋美術通になれるかもしれません。

常設展の作品解説動画(国立西洋美術館の公式チャンネル)

2016年に撮影され「Google Arts & Culture」で公開してきた動画です。
モネの《睡蓮》をはじめ、常設展を見に行ったことがあれば「あ、あれ!」と
嬉しくなる、おなじみの作品が揃っています。
常設展を思い出しながら、または次回のための予習として楽しめます。
全編英語字幕つきなので、美術に関する英単語の勉強にも(?)

解説動画(全19本)

ヨハン・ハインリヒ・フュースリ《グイド・カヴァルカンティの亡霊に出会うテオドーレ》
2016/10/24(3分38秒)
解説 新藤淳(主任研究員)
イギリスで活躍したスイス人の画家で、文筆家でもあったフュースリ(1741-1825)の作品。
ボッカチオの『デカメロン』の中で語られる「ナスタージョ・デリ・オネスティの物語」
を翻案した17世紀の詩を下敷きにしています。
作中に描かれた人物のポーズは既存の彫刻を参考にしたもので、
その組み合わせによって独特の世界観を作りあげているようです。

クロード・モネ《睡蓮》
2020/04/06(5分23秒)
解説 馬渕明子(国立西洋美術館長)
モネ(1840-1926)が1916年に描いた睡蓮。
睡蓮の咲く水面には池のほとりに植えられた枝垂れ柳の姿が映り、
よく見ると水中の水草も描きこまれた複雑な構成になっています。
実際の池には他にもアヤメ、シャクヤク、竹など日本の植物が植えられていたそうです。
表面にはモネの筆跡がそのまま残っており、よく見ると筆の毛が混じっている所も。

オーギュスト・ロダン《地獄の門》
2020/04/06(3分53秒)
解説 馬渕明子(国立西洋美術館長)
ロダン(1840-1917)40歳の時パリの装飾美術館のために政府から依頼されたものですが、
実際に使用されることはありませんでした。
ロダンの死後、アトリエに遺された石膏の原型から鋳造されたそうです。
門の中から乗り出してくるような人物彫刻には《考える人》《フギット・アモール》など
ダンテの作品としてよく知られているモチーフが見られます。

ファン・バン・デル・アメン《果物籠と猟鳥のある静物》
2020/04/08(3分7秒)
解説 川瀬佑介(主任研究員)
静物画は16世紀末から17世紀初頭にかけてヨーロッパで同時多発的に成立しました。
スペインで活躍したファン・バン・デル・アメン(1596-1631)は
トレドの静物画を確立したサンチェス・コターンの教えを受けたと言われます。
より華やかで装飾的な静物画を描いて人気を博し
1619年には静物画として初めてスペイン国王からの注文を受けることになりました。

クロード・ロラン《踊るサテュロスとニンフのいる風景》
2020/04/08(3分7秒)
解説 川瀬佑介(主任研究員)
17世紀に成立した風景画の歴史の中でもロラン(1600頃-1682)の描く
理想化された風景はその後200年にわたって風景画の規範とされました。
特に18世紀から19世紀初頭のイギリスでは非常に高い人気を博し、
人々が「ロランの絵のような景色」を求めたために
風景に色がついて絵のように見える「クロード・グラス」が発明されたそうです。

ジャン=バティスト・カミーユ・コロー《ナポリの浜の思い出》
2020/04/08(2分12秒)
解説 陳岡めぐみ(主任研究員)
抒情的な風景画で知られるコロー(1796-1875)は1850年代の後半頃から
記憶のフィルターを通して理想化された「思い出の風景」を描くようになります。
最晩年の作であるこちらもかつて旅したナポリの思い出を描いたもの。
こちらに歩いてくる人物は画面の前景と遠景のナポリ湾を結ぶ存在であると同時に
過去の思い出と現在をつないでいるのだそうです。

アンドレア・デル・サルト《聖母子》
2020/04/08(3分10秒)
解説 渡辺晋輔(主任研究員)
フィレンツェの画家アンドレア・デル・サルト(1486-1530)が1510年代半ばに描いた作品。
ボリュームと動きのある肉体表現が安定感を持って画面内に収まっているのは、
聖母の頭部を頂点とした三角形の構図が作られているから。
考え抜いた構図を小さな素描に起こした後で、板に描き写したと思われるそうです。
同じ素描から描き起こしたと思われる絵がカナダ国立美術館に所蔵されています。

ポール・シニャック《サン=トロペの港》
2020/04/08(4分12秒)
解説 村上博哉(国立西洋美術館副館長)
新印象派のリーダーであるシニャック(1863-1935)が30代の終わりごろに描いたもので
シニャックの風景画の中では最も大きいものだそうです。
色をモザイク状に配置した点描法の画面は青とオレンジ(互いを強め合う補色の関係)
を中心にさまざまな色で形作られています。
遠距離と近距離の両方から観察することで全く違った面が見える一枚です。

ポール・セザンヌ《ポントワーズの橋と堰 》1(制作背景)
2020/04/08(2分21秒)
解説 村上博哉(国立西洋美術館副館長)
セザンヌ(1839-1906)40代はじめごろの作品。画業の中間点にあたるそうです。
モネやルノワールと同世代ですが印象表現を学ぶのは少し遅く、1970年代に入ってから。
移ろう自然を追い求めた印象派の鮮やかな色彩表現を学ぶと同時に
それを超えた表現として揺るぎない構造を捕らえることに重点を置くようになります。

ポール・セザンヌ《ポントワーズの橋と堰 》2(鑑賞)
2020/04/08(2分42秒)
解説 村上博哉(国立西洋美術館副館長)
この作品はセザンヌが印象派から独自の絵画へ向かおうとしていた時期のものです。
河を横切る橋と堰が水平の、両岸に立つ木が垂直の構図をつくり
植物に使われる規則的な斜めのタッチがより全体の構成感を高めています。
印象派の技法を思わせる緩やかなタッチで描かれた空が「抜け感」をつくり
画面が息苦しくならない効果を出しています。

ポール・セリュジュ《森の中の四人のブルターニュの少女》
2020/04/08(2分41秒)
解説 袴田紘代(主任研究員)
ナビ派の中心人物であるセリュジュ(1864-1927 セリュジエとも)は
1888年にフランス北西部のブルターニュに滞在中のゴーガンを訪ねて教えを受けました。
この絵にも見られる、実際とは違っても感じ取ったままの色を画面に置くやり方、
また「クロワゾニズム」(クロワゾネ=七宝)という、
単純な形を太い輪郭で囲った中に平坦な色彩を置く様式にはゴーガンの影響があります。

エドワールト・コリール《ヴァニタス―書物と髑髏のある静物》
2020/04/08(3分12秒)
解説 中田明日佳(主任研究員)
「ヴァニタス」を得意としたオランダの画家コリール(1643頃-1710)の作品です。
ヴァニタスとは「この世の虚しさ・儚さ」を示す寓意的な静物画で
特に16世紀から17世紀のヨーロッパ北部で描かれました。
時計、消えたランプ、楽器、骨といったモチーフはヴァニタスによく用いられ
過ぎゆく時、物事の終わり、死の勝利などを暗示しています。

ティツィアーノ・ヴェッチェリオと工房《洗礼者聖ヨハネの首を持つサロメ》
2020/04/08(4分7秒)
解説 渡辺晋輔(主任研究員)
踊りの褒美に洗礼者ヨハネの首を望んだユダヤの王女サロメを描いたものです。
ティツィアーノ(1490頃-1576)は同時代の人から
「近寄ってみると何が描いてあるのか分からないが、
遠く離れてみると見事に浮かび上がって見える」と評価された画家で、
この絵も大まかな筆使いで描かれているように見えて
絵の中の人物と目が合うような生々しさがあります。

パパル・リング
2020/04/08(3分8秒)
解説 飯塚 隆(主任研究員)
水晶の指輪、というより指輪の形をしたオブジェと言いたいような巨大なリングです。
所有者はルネサンス期のローマ教皇パウルス2世(位:1464-1471)で、
金メッキをしたブロンズの台には四福音史家(マタイ、ヨハネ、ルカ、マルコ)の象徴と
フランス王家の紋章、パウルス2世の紋章が浮き彫りにされています。
用途は儀式用、教皇の象徴などの説があり、
いずれにせよ教皇の力を示す物であるようです。

フェデ・リング
2020/04/08(3分42秒)
解説 飯塚 隆(主任研究員)
右手と右手が握り合っている「フェデ・リング」のデザインは
古代ローマの結婚の儀式に由来し、12世紀から18世紀のヨーロッパで流行したそうです。
「フェデ(Fede)」はイタリア語で「信頼」のこと。
フェデ・リングが結婚指輪として使われたため、
「フェデ」という言葉自体が「結婚指輪」の意味になったそうです。

ピーテル・ブリューゲル(子)《鳥罠のある冬景色》
2020/04/08(2分18秒)
解説 中田明日佳(主任研究員)
制作者はピーテル・ブリューゲル(子)(1564か1565-1636)ですが、
同名の父親が1565年に描いた作品をコピーしたものです。
フランドルの冬景色の中ソリやスケートといった冬の遊びを楽しむ人たちの姿を描く一方
氷の割れた穴が空いていたり、小鳥たちの近くにタイトル通り鳥罠が仕掛けてあったりと
日常に潜む危険や人生の儚さなどを示唆する仕掛けがほどこしてあります。

エドゥアール・マネ《ブラン氏の肖像》
2020/04/08(3分22秒)
解説 中田明日佳(主任研究員)
19世紀の都市風俗を得意としたマネ(1832-1883)の晩年の作品。
細かく素早いタッチや明るい色調が印象派を思わせる作品であり
印象派の画家たちとの交流からその表現を取り入れていたことが見て取れます。
この絵はマネと同じく都会の風俗を描いた印象派の画家ドガが所有していたそうです。

ギュスターヴ・モロー《牢獄のサロメ》
2020/04/08(3分41秒)
解説 陳岡めぐみ(主任研究員)
象徴主義の先駆者といわれ、ルオーやマティスの師でもあるモロー(1826-1898)の作品。
画面の中央に物思いにふける女性の姿があり、右手から柔らかな光が差し込んでいます。
瞑想的な場面のようですがこれは《洗礼者聖ヨハネの首を持つサロメ》と同じ主題の作品で、
左手後方では今まさに首を切られようとする聖ヨハネの姿があります。
凄惨な場面をサロメが中の静謐な絵に仕上げた所にモローの美意識が感じられます。

ペーテル・パウル・ルーベンス《眠る二人の子ども》
2020/04/08(3分39秒)
解説 新藤淳(主任研究員)
ルーベンス(1577-1640)が兄の子どもたちを描いたオイル・スケッチです。
仕事としてではなくプライベートで描いた小品ですが、
ヤン・ブリューゲルと合作した《花環の生母》(アルテ・ピナコテーク所蔵)や
《聖母と天使》(ルーブル美術館所蔵)など後の作品に登場する天使の顔には
ここに描かれた子どもたちの面影があるそうです。


ロンドン・ナショナル・ギャラリー展の解説動画(美術展ナビAEJ)

「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」(開催延期中)の解説動画は
美術展ナビAEJから公開されています。

展覧会を担当した主任研究員の川瀬佑介さんが
7章の構成に沿って見どころを紹介してくれる動画のほかに、
全61作品が登場する特別ムービーと、7枚の《ひまわり》を紹介する映像があります。
こちらもすべて10分以内で気軽に視聴できます。

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展示解説「監修者が語る!ロンドン展の見どころ&おススメ作品」

#0 コンセプト紹介
2020/03/19(1分6秒)

第1章 イタリア・ルネサンス絵画の収集
#1 ルネサンスの超絶技巧! クリヴェッリ≪聖エミディウスを伴う受胎告知≫
2020/03/19(7分13秒)

第2章 オランダ絵画の黄金時代
#2 巨匠のドヤ顔!! レンブラント≪32歳の自画像≫
2020/03/19(5分29秒)

第3章 ヴァン・ダイクとイギリス肖像画
#3 親しみある肖像画 ライト・オブ・ダービー≪トマス・コルトマン夫妻≫
2020/03/19(5分42秒)

第4章 グランド・ツアー
#4 旅行先で描いてみた カナレット≪イートン・カレッジ≫
2020/03/19(5分35秒)

第5章 スペイン絵画の発見
#5 ムリーリョ≪幼い洗礼者聖ヨハネと子羊≫
2020/03/19(7分23秒)

第6章 風景画とピクチャレスク
#6 描き込みに注目! ゲインズバラ≪水飲み場≫
2020/03/19(5分58秒)

第7章 イギリスにおけるフランス近代美術需要
#7 緊張気味?初々しい少女の姿 ルノワール≪劇場にて(初めてのお出かけ)≫
ピエール・オーギュスト・ルノワール《劇場にて(初めてのお出かけ)》(1876-77)
2020/03/19(5分55秒)

特別映像

ロンドン・ナショナル・ギャラリー展  全61点作品紹介 ムービー
2020/03/19(1分6秒)

ロンドン・ナショナル・ギャラリー展特別映像「ゴッホ 黄色いひまわり」
2020/03/19(6分)

美術展ナビAEJ(Art Exhibition Japan)では2017年以来、
展覧会の宣伝、作品紹介、作者インタビューなど、美術館の情報動画を公開しています。