外出自粛でもアートを楽しむ! ミュシャ財団がぬり絵を無料公開中

ミュシャといえばアール・ヌーヴォーを代表するグラフィックデザイナーであり、
日本人にとってはおそらく最も馴染みのある画家のひとりでしょう。
2019年にもBunkamuraの「みんなのミュシャ」など展覧会が開催されました。
そんなミュシャの作品がぬり絵になってミュシャ財団から無料公開されています。
インターネット上では他にもさまざまな機関が所蔵資料をぬり絵として公開中です

ミュシャの作品6点、アール・ヌーヴォーのポスターや図案などの線画が無料で公開中

ミュシャ財団は1992年に設立された、
ミュシャの芸術的財産・知的財産を管理する団体です。
(設立者はミュシャ本人の孫であるジョン・ミュシャ)
そのミュシャ財団のホームページで
「Colour your own Mucha」(自分だけのミュシャをつくろう)
と題してぬり絵として使える線画が無料公開されています(全6種類)。

これらはミュシャがアール・ヌーヴォーの代表選手として
19世紀末~20世紀初めののパリで活躍していたころの作品で
ポスター、装飾パネル、カレンダー、デザイン見本、絵画(版画)と
当時のミュシャの活動を一通り揃えた内容になっています。

アルフォンス・ミュシャ(1860-1939)はチェコのモラヴィア地方に生まれ、
少年時代から絵の才能を発揮していたそうです。
19歳で画家を目指してウィーンに出て舞台装置の工房で働き、
やがて奨学金を得てミュンヘンへ。
そして1887年にパリに出ることになります。
(この頃は挿絵の仕事で生計を立てていました)
1895年に大女優サラ・ベルナールを描いたポスター《ジスモンダ》で
一躍人気ポスター作家となったエピソードは有名です。
19世紀末はロートレック等によって芸術性の高いポスターが次々と登場し、
ポスターをコレクションするポスター・ブームが生れていました。
ミュシャのポスターも貼るそばから盗まれるほどの人気になったそうです。
サロン・デ・サン第20回展のポスター(1896)
ポスターの需要が高まったことでつくられ始めたのが同じリトグラフによる
装飾パネル(宣伝目的を持たない鑑賞用の印刷物 “Art Poster”とも)です。
2枚組や4枚組のシリーズになることが多く、
ミュシャも《四つの花》(1897)《四つの宝石》(1900)などのシリーズを発表しています。
「ミュシャの絵」というと、このタイプの絵を想像する人が多いのではないでしょうか。

ぬり絵の《月》は4枚組のシリーズ《月と星》(1902)のひとつです。
この時期のミュシャの仕事は商品のパッケージやカレンダーから
宝飾品や建築・インテリアのデザインまで、様々な分野にわたっています。
カレンダーのデザイン(1901)
さらに1902年には『装飾資料集』という72のデザイン見本をまとめた図案集を出版。
ミュシャの(ミュシャ風の)デザインがどれだけ求められていたのかわかります。
図33 様式化された百合のデザイン案
図38 ケシ科の植物の実用的なデザイン案
ミュシャは1904年にアメリカに招かれて歓迎を受けています。
「ニューヨーク・デイリー・ニューズ」紙がミュシャのカラー版で特集を行い
この時にミュシャがアメリカ市民のために制作した版画《友情》が発表されました。
《友情》(1904)
この頃からミュシャは活動の拠点をアメリカとチェコのプラハに移しはじめ、
やがて故国のための芸術活動に突き進んでいくことになります。
スラヴ民族の歴史を描いた20枚の大連作《スラヴ叙事詩》の
制作が始まったのは1911年ですが構想はこのころからあって
1909年には最初のスケッチを試みていたと言われています。

ぬり絵で振りかえるミュシャのパリ時代。
いかにも「ミュシャらしい」作品に色を付けてみることで、
また新しい発見があるかもしれません。
わたしは一見単純そうな図案が複雑な細かい線で構成されていたことに気づき、
早々に挫折してテーブルマットのかわりにしてしまいましたが…
根気のある方はせひ、チャレンジしてみて下さい。
ツイッター上にも既に多くの作品が投稿されています。


ぬり絵(PDF)のダウンロードはミュシャ財団ウェブサイトから

まず、ミュシャ財団のウェブサイトに行きます。
(直接ぬり絵のページに行く場合はこちらから)
ウェブサイトの「GALLERY」から画面左にあるメニューで
「Colour your own Mucha」を選択。
移動先のページで作品の線画がダウンロードできます。(PDF形式)
ファイルサイズは大きいもので300~400kbちょっとくらいです。

画集や過去の図録があれば、並べてみると楽しいと思います。
塗りの見本として使うもよし、ちょっとした違いを探してみるもまたよし。

手元に画集が無い場合も、一部は「GALLERY」内で検索できますのでご安心ください。
検索ページには、左メニューの「Search Works」で移動します。
検索ボックスにタイトルなどを入力して検索(大文字小文字の区別はありません)。

わたしが試した結果ですが、
《Salon des Cent》《The Moon》はカラー版がありました。


美術館・博物館のアートな塗り絵 東京国立博物館、ファン・ゴッホ美術館、関西大学などなど…

他にも、多くの美術館・博物館・研究機関などが塗り絵のデータを無料公開しています。
(東京国立博物館のウェブサイトより)

東京国立博物館ではスクールプログラムのワークシートを公開しており、
毎年恒例「博物館でお花見を」(2020年は開催中止)や
「トーハクキッズデー」などのワークショップで配布された
オリジナルのぬり絵を誰でも自由に使えるようにしています。
(ファン・ゴッホ美術館のウェブサイトより)
オランダはアムステルダムのファン・ゴッホ美術館では、
「Van Gogh Colouring Pages」
初期の作品《ジャガイモを食べる人々》(1885)から
代表作《ひまわり》(1889)まで12点の作品と
ゴッホがアルルに住んでいたころ親しい友人だった
ルーラン家の人々のジオラマを作るセットが公開されています。
(ジオラマの背景は自分で用意します)
(KU-ORCASのウェブサイトより)
関西大学の東アジア文化研究プロジェクト
「関西大学アジア・オープン・リサーチセンター[KU-ORCAS]」では
関西大学図書館が所蔵する江戸時代中後期の大坂(阪)画壇の絵画350件以上を
デジタル化・公開しており
その中から11点を「塗り絵大坂画壇」として公開しています。
(冊子形式でのダウンロードも可能です)
これはニューヨーク医学アカデミー(The New York Academy of Medicine)が主催して
2016年から続いているイベント「#ColorOurCollections」の一環で、
他にも100を超える博物館・図書館・大学などが所蔵資料をぬり絵として公開しています。

外出自粛のいま、遊んで楽しい・見ているだけでも結構楽しいぬり絵はいかがですか?