ぶらぶら美術・博物館「画家が見たこども展」三菱一号館美術館で、ナビ派が描いた子どもたちを鑑賞(2020.07.21)

久しぶりのリアル美術館は、6月9日から再開した三菱一号館美術館。
各々マスクをつけ、検温を受けてのスタートです。
2006年に初代館長に就任し、この展覧会を最後に勇退される高橋明也館長は、
《グラン・ブーケ》にちなんだ花柄のマスク姿で案内してくれました。

2020年7月21日のぶらぶら美術館 三菱一号館美術館「画家が見たこども展」
~かわいいだけじゃない!不思議な世界 ゴッホ、ボナール、ヴァロットンら100点集結!~

放送日時 7月21日(火) 午後8時~9時

放送局 日本テレビ(BS日テレ)

出演者
山田五郎 (評論家)
小木博明 (お笑いコンビ・おぎやはぎ ボケ)
矢作 兼 (お笑いコンビ・おぎやはぎ ツッコミ)
高橋マリ子 (モデル・女優)

高橋明也 (三菱一号館美術館館長)

今回は、開館10周年を迎えた、丸の内の三菱一号館美術館で開催中の「画家が見たこども展」へ。19世紀末パリの前衛芸術家グループ「ナビ派」の画家たちを中心に、「子ども」が描かれた絵が約100点集結した展覧会です。今年ご勇退される高橋明也館長の最後の企画展でもあります。
ナビ派に影響を与えたゴッホの、ちょっとクセのある赤ちゃんの絵や、「日本かぶれのナビ」と呼ばれたボナールが「北斎漫画」風に描いたユニークな子ども。パリで活躍したスイス人画家・ヴァロットンが、社会風刺の作品に登場させた、ちょっと残酷なこどもなど…。当時、ヨーロッパでは「こども」は絵画のテーマとしては重視されていなかった中、「こども」に目を向けた様々な作品が勢揃いしています。セーラー服やエプロンドレスなど、当時のフランスで流行していた子どものファッションも見どころのひとつ。そして、ボナールが最晩年に描いた「雄牛と子ども」。妻を亡くし、第二次世界大戦を生き抜いたボナールがたどり着いた境地とは…。かわいいだけじゃない「子ども」の世界へ、ぜひご一緒に。(ぶらぶら美術館ホームページより)



ナビ派のおさらい ちょっとオタッキー?

19世紀末のパリでうまれた若い画家たちのグループがナビ派です。
中心人物だったポール・セリュジエが
ポール・ゴーガンから教えを受けたのをきっかけに
画学校(アカデミー・ジュリアン)の仲間たちと結成しました。

ゴーガンから学んだのは、画面の上には
リアルな色や構図ではなく内面で感じる色や形を再現すること。
ナビ(ヘブライ語で預言者)の名前通り、
矢作さんいわく「ちょっとスピリチュアル」な芸術理念を持っていたようです。

新しい芸術を目指したナビ派は、
伝統的な西洋絵画の世界では相手にされなかった子どもや動物を多く描いています。
それまでの「子どもの絵」と言えば
幼子のキリストか王侯貴族の子どもの肖像画が定番で、
弱さや愚かしさに通じる子供らしさ・可愛らしさは必要とされず、
威厳や気品といった大人っぽさが求められていたそうです。
ナビ派はそれに対して、ありのままの子どもの姿を絵の主題に取り上げました。


ナビ派以前 過渡期の作品

ナビ派の活動より少し前、印象派がさかんに活動していた時期に描かれた作品として、
モーリス・ブーテ・ド・モンヴェルの
《ブレのベルナールとロジェ》(1883)が取り上げられました。
絵の中に立っている2人の子どもたちは表情もポーズも硬く、
伝統的な子どもの描き方を受け継いでいるようです。

この5年後、セリュジエがゴーガンに指導を受けた年に描かれたのは
フィンセント・ファン・ゴッホ の《マルセル・ルーランの肖像》(1888)。
可愛さよりもどっしりした存在感を感じる赤ん坊は、
ゴッホがアルルで暮らしていたときお世話になったルーラン夫妻の子どもだそうです。

小さな大人として理想化された子どもではなく、
しかし可愛らしいかと言われると微妙なこれらの作品は、
近代の新しい子ども像が完成する前の、過渡期の作品でした。


ナビ派が描くこどもの姿

この辺りから都市で生活する子どもの日常や、
大人をものともしない「子供っぽさ」全開の姿など
ナチュラルな子ども像を描いた作品が増えてきます。

ピエール・ボナール 「奥さんの入浴姿をたくさん描いた人ですね」

ナレーションにも指摘されるほど
奥さんのマルト(マリア・ブールサン)をモデルにした絵を残している人ですが、
ここで紹介されるのはもちろん子供の絵です。

別名を「日本かぶれのナビ」というほど日本絵画から影響を受けたボナール。
《乳母たちの散歩、辻馬車の列》(1897)は、日本風の屏風仕立てにしたものです。
やけに頭の大きい(アフロヘアの?)子どもが圧倒的に目立っていますが、
少し離れたところにいる単純化された女性たちや
連続文様のような辻馬車の列といったデザイン的な要素も見逃せません。
白い余白をたっぷり取った構図といい、ところどころで存在を主張する黒の効果といい、
なんとも洒落た雰囲気の作品でした。

日本美術を意識してみていると、
《学童》(1890)の縦長の画面は掛軸のようにも見えてきます。
女の子が家のドアを引き開けようとしている仕種も
「北斎漫画」のような浮世絵のポーズにヒントを得たのかもしれません。

エドゥアール・ヴュイヤール 「誘拐犯っぽい」大人の正体は?

この頃、コダック社が持ち運びのできる小型カメラを開発しており、
画家たちもスナップ写真を作品に活用したそうです。

《赤いスカーフの子ども》(1891頃)の構図はまさに写真を思わせるものです。
男性に手を引かれる女の子の姿を描いているのですが、
中心になる女の子以外の部分を大胆にトリミングしているために
男性は肩から下の左半身を残してカットされてしまいました。

女の子に視線が集まる効果を高める一方で、
顔の見えないこの男性は誰なのか? という疑問も出てきます。
お洒落をした女の子に対してカジュアルな服装が不釣り合いなので、父親とは思えない。
番組内では「誘拐犯っぽい」という意見と
「使用人かもしれない」という意見がありました。

モーリス・ドニ ナビ派が生んだ「可愛い」の概念

生涯で9人の子どもに恵まれたドニは、
子どもたちをモデルにした絵を多く残しています。
長女のノエルをモデルにした 《赤いエプロンドレスを着た子ども》(1897)は
パステルトーンの点描で構成された文句なしに可愛い一枚です。
少女の顔も丸い目とチョコンとした鼻といった単純化されたパーツで構成され、
まるでぬいぐるみ人形のようでした。

マットな色調は厚紙に油絵の具で描かれているためで、
紙に油が吸われて独特の風合いになるのですが、
そのかわり絵の具の強度が弱くなって剥がれ落ちやすくなるそうです。
作品保護のため、展示室ではケース内に平置きされていました。

敬虔なカトリック信者だったドニは、聖書から取った題材をよく描き、
1890年代の末にナビ派が解散したあとはより宗教的な主題を好むようになりました。
今回紹介された《《開いた窓辺の母親》のための習作》(1899頃)と
《青いズボンの子ども》(1897)、《ノエルと母親》(1896頃)の3点は
妻(1人目の奥さんであるマルタ)と子どもの姿を描いたものであると同時に
ドニが追求した現代の聖母子像でもあります。
《青いズボンの子ども》の中には画中画として
ボッティチェリの《聖母子と幼い洗礼者ヨハネ》(1470年頃)が描かれ、
古典と現代の聖母子像が競演しています。


可愛い? 怖い? 異色のナビたち

山田さんによると、
スイス人の画家はちょっと不思議で怖い絵を描く傾向があるそうです。
ナビ派の中でも微妙な怖さが際立つこちらの2人もスイスの人ですが、
国籍と関係があるのでしょうか?

フェリックス・ヴァロットン 「どういう状況なんだろうこれ」

ナビ派のグループに後から参加したヴァロットンは、
現代木版画家としても重要な人物です。
ディティールを省略したような白と黒の絵は
「画家が見たこども展」のグッズにも多く採用されており、
デザインとして優れていることは間違いありませんが、
不穏な空気が漂っているものが多いことでも有名です。

たとえば木版作品の《可愛い天使たち》(1894)は、
たくさんの子どもが集まっている微笑ましい光景と見せかけて、
騒ぎの中心にいるのはお巡りさんに連行される怪しい男。
取り囲む「天使たち」はまったく怖がっておらず、面白がっているように見えます。
「どういう状況なんだろう」と首をかしげている内に、
画面の中の異常さがだんだん見えてくる(ような気がする)。
あまりにもヴァロットンらしい作品といえるでしょう。

これに対して《エトルタの四人の海水浴客》(1899)は、
ヴァロットンにしては珍しい油絵で、
さらに珍しいことに不安をあおるような所がない絵です。
海水浴をする親子連れの様子を描いているのですが、
「これから誰か溺れるんじゃないか…?」と思わせるようなところは無いと思います。
この時期のヴァロットンは木版画の仕事を減らして写実主義の研究をしていたそうで、
この作品もその一環だったのかもしれません。

アルフレド・ミュラー 可愛いのはアヒルだけ?

山田さんも初めて知ったというミュラーは、
イタリアで生まれ、フィレンツェで絵画を学び、フランスで活躍したスイス人です。
「画家が見たこども展」で展示されている絵はどれも、
彼岸の世界を描いたような不思議で恐ろしい雰囲気がありました。

タイトルだけなら楽しげな《ピクニック》 (1903)も例外ではなく…
森の中でピクニックを楽しんでいる4人の女の子を描いているこの絵、
ほとんど無表情な女の子たちが空の食器が並ぶ(準備中なのかもしれませんけど)
ピクニックシートに座っている姿は御伽話というよりホラーの世界を思わせます。
「実は存在しない」「死んでいる」「うち2人は人形」などの説も飛び出すほど
現実味のない子どもたちの姿。
「可愛いのはアフラック(右端にいるアヒル)だけ」と言われても
納得してしまうような薄暗さが漂っています。

再びボナール「もう、あの世に逝っちゃってる」

1925年に南仏のル・カネにアトリエを構えたボナールは、
第二次世界大戦(1939-1945)のあいだもここで創作活動をつづけました。
1942年に愛妻マルトを看取り1947年の1月に没したボナールの、
本当に最晩年の作品が《牡牛と子ども》(1946)と《サーカスの馬》(1946)です。

《サーカスの馬》には子どもが登場しないのですが、
《牡牛と子ども》を紹介した人に強く推されて展示作品入りしたそうです。
どちらも明るい色合いの作品。
ただし明るさよりも半分融けたような不思議な形をした動物や
「幽気を感じる」「天国いっちゃってる感じ」といわれる
(高橋さんは「神々しい」とも言っていました)
奇妙な雰囲気が印象に残りました。


Store1894では出演者がガチャに挑戦!

ぬりえにもなる線画と2枚一組のポストカード(153円)、
子ども用と大人用がそれぞれ3サイズで展開しているTシャツ
(こども2,600円、おとな3,200円)の紹介の後、グッズのガチャに挑戦しました。

山田さんはヴァロットンの絵がプリントされたサコッシュ(500円)。
思ったより小さかった、とのことですが
「タバコ買いに行くときのエコバッグ」として利用するようです。

おぎやはぎのお2人は、絵の中の子どもを抜き出したピンバッジ(300円)。
まず矢作さんが《ブレのベルナールとロジェ》の弟(ロジェ?)を引き当て、
続いてチャレンジした小木さんが兄を当てたかと思いきや
2つ目の弟を引くという、まさかの弟かぶりでした。

高橋さんはこれもまたヴァロットン柄のタオルハンカチ(500円)。
大きく描かれた犬はどの作品か分かりづらいのですが、
《突風》(1894)を一部拡大したものです。


「画家が見たこども展」三菱一号館美術館

東京都千代田区丸の内2-6-2

2020年2月15日(土)~9月22日(火・祝)

月曜休館
※7月27日、8月31日は開館

10時~18時
※入場は閉館の30分前まで

一般 1,700円 高校・大学生 1,000円 小中学生 無料
※障がい者手帳をお持ちの方は半額(850円)、付添の方1名まで無料

日時指定予約制(WebketでQRコードを発行

各種未使用のチケット(期限付き鑑賞券を含む)・MSS会員カードを持っている場合、
中学生以下は、Webketで日時指定を行い「ご来場枠」を予約

公式ホームページ