日曜美術館「ゴッホ 草木への祈り」

放送日時 2月23日(日) 午前9時~9時45分
再放送  3月 1日(日) 午後8時~8時45分

放送局 NHK(Eテレ)

司会 小野正嗣(作家) 柴田祐規子(NHKアナウンサー)

2020年2月23日の日曜美術館

「ゴッホ 草木への祈り」

炎の画家ゴッホには、原色や激しい筆致とはちがうもう一つの顔があった。それは、花や草木をひたすら描くこと。地面に顔を埋めるように描く一本の草木に込めた祈りとは?

日曜美術館ホームページより

ゲスト
 木下長宏 (美術史家)

出演
 圀府寺司 (大阪大学文学研究科教授)
 岩﨑余帆子 (ポーラ美術館学芸課長)
 いせひでこ (絵本作家・画家)

ゴッホが描こうとした思想

画家を志したばかりの頃、
ヴィンセント・ファン・ゴッホ(1853-1890)の中には
農民の労働の中にこそ尊いものがあるという確信がありました。
農民画家として知られるミレー(1814-1875)に傾倒したこの時期の代表作が
「ジャガイモを食べる人々」(1885)です。
絵を描くこと自体が好きで仕方がないというタイプではなく、

「僕は作品の中に自分の思想を取り入れるように努めるのは画家の義務だと考えている」
「神の言葉を種まく人になりたい」

という言葉を残しているように、牧師としてできなかった仕事を実現するべく
絵を描くことで高貴な倫理を人々に伝えようとしていた、と番組内で指摘されていました。

1886年にフランスのパリに移ったゴッホは、
1888年には南フランスのアルルに行き、この地で
「アルルのはね橋」(1888)や「ひまわり」(1888)など多くの代表作を描きます。
しかし絵が売れることは無く、
そんななか雑誌に掲載されていた日本の植物画(作者不明)
から影響を受けた作品を描き始めたそうです。

その後病気を得てサン=レミの病院に入院していた際
新たに見出したモチーフが糸杉でした。
糸杉を描いた作品として番組内では
「糸杉」(1889)、「星月夜」(1889)、「糸杉と星の見える道」(1890)
の3点が紹介されています。
西洋では墓場に植えられることが多く詩の象徴としてあつかわれる糸杉ですが、
ゲストの木下先生によると
死ではなく祈りを奉げる信仰の対象だったのではないかとのことです。
ゴッホも糸杉について「プロポーションが美しくまるでエジプトのオベリスクのようだ」
と言っていたそうで、
形の美しさを画題として好んでいたのとともに
なにか偉大な存在を象徴させていたことがうかがわれます。

カトリックの押絵によれば、画家とは神の次に世界をつくる存在なのだそうです。
貧しい人々の生活を描くことで労働の尊さを伝えようとしていた初期から、
糸杉の姿に偉大なものを尊敬する畏怖の心を込めた晩年まで、
ゴッホの作品には一貫して宗教的な思想が込められているようです。

わずか10年の創作期間で独自の画風を作りあげたゴッホ。
彼の中には絵を通して伝えたい、表現したいものが常に存在していたのかも知れません。

「ゴッホ展」兵庫県立美術館

兵庫県神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1(HAT神戸内)
2020年1月25日(土)~3月29日(日)
10時~18時(金・土曜日は20時まで)
※入場は閉館の30分前まで
一般 1,700円(1,500円) 大学生 1,300円(1,100円) 70歳以上 850円(750円)
高校生以下 無料
障がいのある方 一般 400円(350円) 大学生 300円(250円)
※障がいのある方1名につき、介護の方1名は無料
※( )内は20名以上の団体料金
月曜休館(2月24日は開館、翌25日休館)

公式ホームページ